2026年3月19日
労務・人事ニュース
令和8年1月栃木県有効求人倍率1.13倍が示す求人減少3.4%
令和8年1月栃木県有効求人倍率1.13倍と正社員倍率0.99倍
令和8年3月3日、栃木労働局は令和8年1月分の県内雇用情勢を公表した。発表によると、有効求人倍率は季節調整値で1.13倍となり、前月を0.01ポイント下回った。求人が求職を上回る状況は維持しているものの、雇用情勢については持ち直しの動きに足踏みがみられるとの判断が示されている。物価上昇など外部環境が企業活動や雇用に及ぼす影響にも引き続き注意が必要とされ、慎重な見方が続いている。
有効求人数は原数値で37,428人となり、前年同月比3.4%減と31か月連続で前年を下回った。有効求職者数は30,441人で前年同月比1.1%増である。求人が減少する一方で求職者が増加している構図が、倍率低下の背景にある。新規求人数は14,357人で前年同月比2.3%減となり、連続して前年割れが続いている。新規求職者数は6,825人で前年同月比0.8%減であったが、求人の減少幅が上回っている点が特徴的である。新規求人倍率は季節調整値で2.08倍と前月より0.11ポイント上昇したものの、これは新規求職者数の動きとの関係で生じたものであり、求人総数の力強い回復を示すものではない。
正社員求人倍率は季節調整値で0.99倍となり、前月を0.02ポイント下回った。正社員分野では求人と求職がほぼ拮抗している状況であり、企業側にとっては従来よりも採用難がやや緩和する可能性がある一方で、求職者に選ばれる企業でなければ充足は難しい局面といえる。常用の有効求人倍率は1.15倍で、パートを含む全体の1.13倍をやや上回る水準で推移している。
産業別に新規求人の動きを見ると、分野ごとの温度差が鮮明である。建設業は1,214人で前年同月比9.2%減と減少が続いている。卸売業・小売業は1,135人で9.0%減、宿泊業・飲食サービス業は720人で17.1%減、生活関連サービス業・娯楽業は579人で31.6%減と、個人消費関連分野では減少幅が大きい。一方で、製造業は1,859人で3.2%増と増加に転じた。内訳では生産用機械器具製造業が94人で2.1%増、電気機械器具製造業が89人で39.1%増、情報通信機械器具製造業が28人で211.1%増と、一部の技術系分野で顕著な伸びが見られる。運輸業・郵便業も656人で18.6%増と堅調であり、物流需要の底堅さがうかがえる。医療・福祉は4,527人で2.0%増と引き続き高水準を維持し、県内求人全体の中でも大きな割合を占めている。
規模別では29人以下の事業所からの新規求人が3,758人で前年同月比5.0%減、30人以上99人以下が3,273人で12.3%増となっている。300人以上の大規模事業所では増減が分かれるが、500人以上999人以下は30.7%減と減少幅が大きい。県内雇用は中小規模事業所の動向に強く左右されており、とりわけ従業員30人未満の企業の採用姿勢が全体に与える影響は小さくない。
雇用保険の動向では、受給資格決定件数は1,572件で前年同月比3.4%増、受給者実人員は6,477人で6.5%増となっている。受給者の増加は、転職活動の活発化や離職の一定の増加を示唆する。労働移動が進む局面では、企業は他社からの転職者を受け入れる姿勢を明確にし、自社での活躍イメージを具体的に提示することが求められる。
有効求人倍率1.13倍という水準は、依然として求人超過の状態を示すが、正社員倍率が0.99倍に低下している事実は重要である。中小企業の採用担当者は、この数値を単なる人手不足の指標として捉えるのではなく、自社にとっての機会として分析すべきである。求人が前年同月比で減少している今、競合他社も採用活動を見直している可能性がある。採用広報の質を高め、職務内容、賃金水準、キャリアパス、研修制度を具体的な数字で示すことで、求職者からの信頼を得やすくなる。
特に製造業や運輸業のように一部で求人が増加している分野では、技能や経験を持つ人材の確保競争が続く。例えば情報通信機械器具製造業で211.1%増という伸びが示すように、専門性の高い職種では採用難が一層強まる可能性がある。中小企業は即戦力に固執するのではなく、未経験者を育成する仕組みを整備し、教育投資を前提とした採用戦略を検討する必要がある。
一方で、生活関連サービス業や宿泊業で30%前後の減少がみられる状況では、応募者の選択肢が相対的に広がる可能性がある。こうした分野の企業は、雇用の安定性や将来性を明確に伝え、短期的な人員補充にとどまらない長期雇用の姿勢を示すことが重要となる。
統計は客観的な事実を示すものであり、企業はその数字を根拠として採用方針を組み立てるべきである。令和8年1月の栃木県有効求人倍率1.13倍という結果は、採用環境が転換点に差しかかっている可能性を示している。求人数37,428人、有効求職者数30,441人という具体的な規模感を踏まえ、自社の採用目標や採用時期を再検討することが、持続的な人材確保につながる。地域経済を支える中小企業にとって、統計を読み解く力と透明性の高い情報発信は、これからの採用活動における大きな武器となる。
⇒ 詳しくは栃木労働局のWEBサイトへ


