2026年3月20日
労務・人事ニュース
令和8年1月静岡県有効求人倍率1.06倍が示す採用環境
令和8年1月静岡県東部1.12倍中部1.30倍西部1.05倍
静岡労働局が令和8年3月3日に公表した令和8年1月分の「静岡県内の最近の雇用情勢」によると、県内の有効求人倍率は季節調整値で1.06倍となり、前月を0.03ポイント下回った。これで60か月連続して1倍台を維持しているものの、全国の同月の有効求人倍率1.18倍を0.12ポイント下回る水準である。県内の雇用情勢については、改善の動きに一段と弱さがみられると総括されており、物価上昇等が雇用に与える影響に引き続き注意が必要であるとされている 。
有効求人数は58,503人で前月比2.8%減少し、2か月ぶりの減少となった。一方、有効求職者数は55,206人で前月比0.3%増加し、5か月ぶりの増加である。その結果、有効求人倍率は低下した。求人数の減少と求職者数の増加が同時に進行している点は、企業の採用姿勢がやや慎重化している可能性を示唆する。
新規求人倍率は1.89倍で、前月を0.04ポイント下回り、全国の2.11倍を0.22ポイント下回った。新規求人数は22,401人で前年同月比3.1%減少し、うち一般求人は13,992人で4.1%減少、パート求人は8,409人で1.3%減少している。新規求職者数は11,433人で前年同月比1.0%減少したが、求人の減少幅のほうが大きく、需給バランスはやや緩和方向に動いている。
産業別の新規求人を見ると、医療・福祉は5,717人で前年同月比2.0%増加し、宿泊業・飲食サービス業も1,468人で18.5%増加している。一方、製造業は3,119人で1.4%減少、建設業は2,092人で6.4%減少、運輸業・郵便業は1,341人で11.2%減少、卸売業・小売業は2,632人で5.8%減少となっている。静岡県は製造業の集積地であるが、その製造業で求人が減少していることは、県内景気の先行きを占ううえで重要な変化である。
職業別有効求人倍率では、保安の職業や建設・採掘、介護関連の職業が高く、事務や運搬・清掃・包装等は低い傾向が続いている。正社員の有効求人倍率は1.07倍で、全国の1.04倍を0.03ポイント上回っているが、正社員有効求人数は31,762人と前年同月を7か月連続で下回っている。正社員求人割合は52.7%であり、企業は依然として正社員を一定程度求めているが、求人数自体は縮小傾向にある。
地域別に見ると、東部は1.12倍、中部は1.30倍、西部は1.05倍である。中部地域は前年同月と比較して上回っている一方、西部は0.07ポイント低下している。浜松地域を含む西部は製造業の影響を受けやすく、地域差を踏まえた採用戦略が必要である。
雇用保険の動向では、資格喪失者数は15,832人で前年同月比6.1%減少し、事業主都合離職者数は838人で46.8%減少している。一方、受給資格決定件数は3,199人で0.8%増加、受給者実人員は12,833人で6.7%増加している。大量離職の顕在化はみられないが、受給者数の増加は労働移動の活発化を示す可能性がある。
こうしたデータから、中小企業の採用担当者が読み取るべきポイントは明確である。有効求人倍率1.06倍は1倍を上回っているが、全国より低く、かつ低下傾向にある。つまり、完全な売り手市場ではないが、依然として人材確保は容易ではない状況である。求人を出せば応募が集まる時代ではなく、企業側が選ばれる立場にあることに変わりはない。
E-E-A-Tを重視する視点からは、採用活動においても経験、専門性、権威性、信頼性を示すことが重要である。具体的には、自社の事業実績や地域での役割、従業員のキャリア形成事例、研修制度の具体的内容などを明確に提示することで、求職者に安心感を与えることができる。数値や実例に基づく情報発信は、求人票や採用ページの信頼性を高める。
また、産業別動向を踏まえると、製造業や建設業では求人が減少しているとはいえ、倍率は依然として1倍を上回っている。単純な人員補充ではなく、生産性向上を前提とした選択的採用へと舵を切る企業が増える可能性がある。中小企業は、自社の強みを明確にし、必要な人材像を具体化したうえで、ターゲットを絞った採用活動を行うべきである。
一方、医療・福祉や宿泊・飲食では求人が増加している。人材確保競争は激化しており、待遇面の見直しや柔軟な働き方の導入が不可欠である。特に静岡県は地域差が大きいため、勤務地域の生活環境や通勤利便性なども含めた情報提供が差別化につながる。
有効求人倍率1.06倍という数字は、求人数58,503人と求職者数55,206人の均衡の上に成り立っている。このわずかな差の中で、どの企業が選ばれるかが問われる。統計は市場全体の傾向を示すが、最終的に採用を成功させるのは個々の企業の発信力と信頼構築力である。公的データに基づき現状を正確に把握し、自社の採用戦略を磨き上げることが、静岡県内の中小企業に求められている。
⇒ 詳しくは静岡労働局のWEBサイトへ


