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2026年3月26日

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2026年3月4日公表、非正規雇用約80%の小売業で基本時給・査定給・職務給の3層賃金制度が拡大

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非正規雇用の賃金制度の変化―小売業の事例から―(JILPT)

2026年3月4日、小売業における非正規雇用の賃金制度の変化を分析した研究結果が公表された。この研究は、小売業を対象とした事例調査を通じて、近年の非正規雇用の賃金制度や処遇の変化を把握し、その実態と課題を明らかにすることを目的として実施されたものである。特に、最低賃金の大幅な上昇を背景として非正規雇用の賃金が底上げされている状況を踏まえ、正規雇用と非正規雇用の賃金格差がどのように変化しているかが検証された。

近年、日本では最低賃金の引き上げが続いており、非正規雇用の賃金水準にも大きな影響を与えている。これにより、従来と比べて正規雇用と非正規雇用の賃金差が縮小していると指摘されている。一方で、この約10年間に実施された非正規雇用に関する法制度の変化が、企業の人事制度や処遇制度、さらにキャリア形成の仕組みにどのような影響を及ぼしているかについては、現場レベルでの実態把握が求められてきた。

今回の研究では、小売業の事例研究を通じて制度の変化を分析した。調査は2024年11月から2025年2月にかけて実施され、総合小売業、ホーム関連商品を扱う小売業、コンビニエンスストア業態の3社を対象としている。調査では労働組合への聞き取りなどを通じて、非正規雇用の賃金制度や処遇の変化がどのように組織内で制度化されているかを確認した。

総合小売業の事例では、非正規雇用の比率が約85%に達する企業において、雇用区分の制度改革が進められていた。従来の制度では、正社員とパートタイマーの区分が明確に分かれていたが、新たな制度では両者の中間に位置付けられる雇用区分が導入された。この新しい区分は、時間給の社員と月給の社員の制度をつなぐ役割を持ち、雇用区分の違いに関わらず同じ職務や役割であれば処遇を均衡させる仕組みとして設計されている。

この制度では、時間給の社員と月給の社員の間に複数の区分が設けられ、店舗のリーダーやマネジャー、課長などの役職を担うことができる仕組みが整えられている。昇格の方法も正社員と同様の基準に基づいており、時間当たりの報酬が均衡するよう制度設計が行われている。これにより、同一労働同一賃金の考え方が制度上明確に反映される形となった。

しかし一方で、最低賃金の上昇は非正規雇用の賃金体系にも影響を与えている。パートタイマーの賃金は採用時の基本時給に加えてスキルや資格に応じた加給によって構成されているが、最低賃金の引き上げにより基本時給が上昇した結果、中間層や正社員との賃金バランスを維持することが制度運用上の新たな課題となっている。

また、有期雇用から無期雇用への転換については制度として自動的に実施されているものの、非正規雇用の労働者の中でキャリアの拡大や正社員への登用を志向する人は必ずしも多くないことが明らかになった。そのため、企業側にとっては従業員の意欲をどのように高めるかが重要な課題として認識されている。

ホーム関連商品を扱う小売業の事例では、非正規雇用者の割合が約80%を占めている状況の中で、均等・均衡処遇を進める制度改革が行われていた。賃金体系は基本時給、査定給、職務給の3層構造となっており、職務給の導入によって業務の難易度と賃金の関係が明確化されている。また、賞与や退職金制度が非正規雇用者にも適用されるようになり、法制度の変化に対応した処遇改善が確認された。

ただし、この事例では契約社員の労働条件が個別契約で決定される傾向が強く、団体交渉による統一的な交渉が難しいという課題も指摘された。さらに、多くの短時間勤務のパートタイマーは生活時間の調整を優先する傾向があり、キャリアアップを求める意識が必ずしも高くないことも明らかになった。そのため、企業側は内部登用よりも事業拡大に応じて外部から人材を採用するケースが増える傾向が見られた。

コンビニエンスストア業態の事例では、同じ系列の店舗であっても直営店舗とフランチャイズ店舗の間で賃金水準が異なることが確認された。特に直営店舗では、フランチャイズ店舗との経営バランスへの配慮から賃金設定が慎重に行われていることが明らかとなった。このような状況は非正規雇用者の組織化を難しくする要因の一つとなっている。

また、地域限定社員は特定の業務需要に対応するための雇用区分として活用されているが、正社員への登用ルートは制度化されていないことも確認された。フランチャイズ方式を採用する業態では店舗ごとに労働条件が異なる傾向があり、賃金水準や処遇ルールにばらつきが生じやすいことが課題として指摘されている。

今回の研究結果を総合すると、最低賃金の上昇や法制度の変化を背景として非正規雇用の賃金改善は着実に進んでいることが確認された。一方で、正社員への転換やキャリアの上昇といった縦方向の移動は依然として限定的であり、制度改革が必ずしもキャリア形成の拡大につながっていない実態が明らかとなった。

さらに、企業の組織形態や雇用制度の違いが処遇の統一を難しくする要因となっていることも示された。特にフランチャイズ方式や個別契約の広がりは、労働条件の統一や組織的な対応を進める上での課題となっている。非正規雇用の処遇改善を進めるためには、賃金制度だけでなく、キャリア形成や組織運営のあり方を含めた検討が求められている。

⇒ 詳しくは独立行政法人労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ

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