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2025年9月15日

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福岡県 令和6年度の労働相談件数44,134件、企業が直面する職場課題の実態

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紛争の内容は「いじめ・嫌がらせ」が 12 年連続で最多 ~ 令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況 ~(福岡労働局)


この記事の概要

福岡労働局は、令和6年度における個別労働紛争解決制度の施行状況を公表しました。その中で「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が12年連続で最多となっており、職場におけるハラスメント問題が依然として深刻であることが明らかになりました。相談件数や助言・指導、あっせん申請のすべてが前年度から増加しており、企業側の対応体制強化が求められています。


福岡労働局が公表した令和6年度の個別労働紛争解決制度に関する施行状況によれば、職場でのトラブルに関する相談件数は年々増加の一途をたどっており、とくに「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が12年連続で最多となる深刻な状況が浮き彫りになっています。この制度は、労働者と事業主の間で発生する労働条件や労働環境に関する個別の問題を早期に解決するためのもので、「総合労働相談」「助言・指導」「あっせん」の三つの手段によって構成されています。

今回発表された統計によると、総合労働相談の件数は44,134件にのぼり、前年度と比較して2.5%の増加が見られました。この中でも、個別労働関係紛争に関する相談件数は10,171件で、前年から18.0%という大幅な増加となっており、労働現場におけるトラブルの発生頻度が高まっていることを示しています。さらに、企業に対して労働局長が助言や指導を行う「助言・指導」の申出件数は226件で、前年より37.0%も増加しました。これは、企業側の対応に改善の余地があることを指摘する重要なデータといえます。

また、当事者同士の話し合いでは解決が困難な場合に、第三者である紛争調整委員会が仲介に入る「あっせん」の申請件数も72件に達し、こちらも16.1%増加しています。こうした動きは、労使間の信頼関係が揺らいでいる現実を如実に物語っており、職場環境の健全化に向けた企業の取り組みが一層重要になっていることを示唆しています。

特に注目すべきは、民事上の個別労働紛争の中でも「いじめ・嫌がらせ」に関する相談が1,632件にのぼり、前年の1,498件から増加している点です。これは12年連続で最多を記録しており、職場でのハラスメント問題が依然として深刻であることを示しています。ただし、令和4年4月に改正労働施策総合推進法が全面施行されたことにより、同法に基づくパワーハラスメントに関する相談件数は別枠で取り扱われるようになっており、こちらの件数は3,190件に達しました。したがって、「民事上の個別労働紛争(いじめ・嫌がらせ)」と「パワーハラスメント相談」を合算すると、相談総数は4,822件にのぼる計算になります。

このような数字は、単なる統計にとどまらず、企業経営において看過できない課題として捉えるべきです。とくに中小企業では、人事体制や相談窓口の整備が不十分なケースも多く、従業員が安心して働ける環境をつくるためには組織の在り方そのものを見直す必要があります。職場内の人間関係に起因するトラブルは、生産性の低下や人材流出の要因ともなり得るため、早期対応と未然防止が不可欠です。

実際に、助言・指導の内容としては「労働条件の引き下げ」に関する申出が最も多く、企業の経営状況や制度変更が従業員に不安を与えている可能性が高いことを示しています。また、あっせん申請では「解雇」に関するものが最多となっており、企業側の対応が法的に不十分であるケースが一定数存在することが推察されます。近年は、働き方改革やリモートワークの導入などで就労環境が大きく変化しており、従来のマネジメントや評価制度が現在の労働実態にそぐわなくなってきている面も否定できません。

その一方で、労働者側の権利意識の高まりや情報収集力の向上も、相談件数の増加に拍車をかけていると考えられます。かつては泣き寝入りしていたようなケースでも、今では専門機関への相談を通じて正当な対応を求める動きが強まっており、企業としても透明性の高い労務管理が求められる時代に入っています。特に若年層や女性労働者の割合が増えている中で、ダイバーシティを前提とした組織運営が重要なテーマとなっており、柔軟かつ公正な対応が求められます。

企業にとって、これらの傾向を踏まえたリスクマネジメントは喫緊の課題です。万が一トラブルが発生した場合でも、適切な初期対応と社内調整を迅速に行うことで、大きな社会的信用の失墜や法的リスクを回避できる可能性があります。また、定期的な社内研修や第三者による職場診断を活用することで、トラブルの芽を早期に発見し、組織としての成熟度を高める取り組みも有効です。

今後の課題としては、ハラスメント防止に関する企業の姿勢がより一層問われることになるでしょう。表面的な制度整備だけではなく、実際に従業員が安心して声を上げられる企業文化の構築が不可欠です。それは単なるコンプライアンスの観点にとどまらず、人材定着や企業ブランドの向上にも直結する重要な経営戦略の一部と捉えるべきでしょう。

この記事の要点

  • 総合労働相談件数は44,134件で前年比2.5%増
  • 個別労働関係紛争の相談件数は10,171件で前年比18.0%増
  • 助言・指導の申出は226件で前年比37.0%増
  • あっせん申請は72件で前年比16.1%増加
  • いじめ・嫌がらせ相談は1,632件で12年連続最多
  • パワハラ相談は3,190件で合算すると4,822件に
  • 助言・指導の主な内容は労働条件引下げ、あっせん申請では解雇が最多

⇒ 詳しくは福岡労働局のWEBサイトへ

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