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2025年8月20日

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大阪府最低賃金1,177円、63円引き上げ、令和7年10月16日から

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大阪府最低賃金の改正決定の答申について


この記事の概要

2025年10月16日から大阪府の最低賃金が現行の1,114円から63円引き上げられ、時間額1,177円に改正されることが決定されました。労働者の生活安定と企業の持続可能な発展を目指す本改正は、多くの労働者や企業に影響を与える重要な動きです。


大阪府において、最低賃金の大幅な引き上げが正式に答申されました。大阪地方最低賃金審議会は、2025年7月14日に大阪労働局長から改正に関する諮問を受け、慎重な審議を重ねた結果、同年8月19日、現行の1時間あたり1,114円という最低賃金を63円引き上げ、1,177円とすることが適当であるとの結論に至りました。引き上げ率は5.66%に達しており、過去10年間で見ても非常に高い伸び率となっています。この改正は2025年10月16日から施行される予定です。

この決定の背景には、労働者の生活水準を向上させる必要性と、物価の上昇、賃金の実態変化が深く関わっています。特に最近では、消費者物価指数の高止まりが続いており、日常生活に必要な支出が増している実情が浮き彫りとなっています。加えて、春季の賃上げ交渉における企業側の妥結率が昨年に引き続き高水準であったこと、新卒者の初任給の大幅な上昇などが、今回の判断を後押しする材料となりました。

しかし、今回の改正は決して労働者側の意見のみが反映されたわけではありません。審議会では「労働者の生計費」「賃金水準」「事業者の賃金支払能力」という三要素を基準とし、企業側の意見や経済状況も慎重に考慮されています。特に中小企業や小規模事業者にとっては、物価やエネルギーコストの上昇に対して十分な価格転嫁が進んでいないという現実もあり、こうした企業の経営への影響も丁寧に検討されました。

現在、大阪府内で最低賃金以下の水準で働く労働者はおよそ38万9,244人に上り、今回の改正はその約29.4%に影響を与えると推定されています。この数字からも分かるように、最低賃金の見直しは一部の労働者だけでなく、地域全体の労働環境と企業活動にも広く関係する施策であることがわかります。

また、大阪地方最低賃金審議会は、中央最低賃金審議会が提示した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」や「経済財政運営と改革の基本方針2025」といった政府方針にも配意しており、国の成長戦略と足並みを揃える形で審議が進められました。このように、地域の施策と国の経済政策が連動し、経済全体の底上げを目指す動きが加速しているのです。

一方で、改正後の最低賃金の施行にあたっては、多くの企業にとって課題も少なくありません。中小企業・小規模事業者の中には、業績が依然として低調であり、急激な人件費の増加に対応しきれないところもあるため、政府及び大阪労働局に対しては、現場に即した柔軟な支援策の実施が強く要望されています。例えば、業務改善助成金やキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金などの制度において、「賃上げ加算」をより手厚くすること。また、価格転嫁を正当に進めるために、下請法改正を踏まえた取引適正化も求められています。

さらに、年収制限によって働き方が制限される「年収の壁」問題についても、政府が進める「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用が重要視されており、これらの取り組みが総合的に労働環境の安定に繋がることが期待されています。

大阪労働局に対しては、改正後の最低賃金を広く周知することや、助成金制度の情報提供、そして企業が確実に制度を活用できるよう実務的な支援が求められています。特に、行政から民間企業への業務委託においては、新しい最低賃金の適用に伴う契約条件の見直しが必要不可欠であり、公共調達における適正な価格転嫁の推進が急務とされています。

なお、最低賃金においては、精勤手当や通勤手当、家族手当などは賃金に含まれないとされており、基本給そのものが新しい基準を満たしているかどうかの確認が重要となります。企業にとっては、従業員の給与構成を改めて見直すタイミングにもなっており、経営戦略の一環として人件費の在り方を再検討する必要があるでしょう。

過去の推移を見ても、大阪府の最低賃金はこの20年間で着実に上昇してきました。例えば、2004年度は704円だったものが、今回の改定により2025年度には1,177円にまで達しています。これは20年間で473円の増加であり、1.67倍の水準です。年々の引き上げ率も安定しており、特に近年は物価上昇を反映する形で、より高い上昇率が示されています。こうした継続的な引き上げは、労働者の生活向上に一定の寄与をしてきたと評価される一方、企業にとっては経営コストの増加という課題にも直面しているのが現実です。

今後は、企業と労働者、そして行政が三位一体となり、持続可能な賃金制度の実現に向けて取り組むことが求められています。単なる金額の引き上げではなく、それを社会全体で支え合うための制度設計と実行力が試される局面です。大阪府の事例は、全国の他府県にとっても重要な参考事例となることでしょう。

この記事の要点

  • 大阪府の最低賃金が2025年10月16日から1,177円に引き上げられる
  • 引き上げ額は63円、引き上げ率は5.66%と高水準
  • 対象となる労働者数は約38万9,244人、影響率は29.4%
  • 改正の背景には物価上昇や初任給の上昇など複数の要因がある
  • 中小企業や小規模事業者への影響を考慮し、各種助成制度の強化が求められている
  • 企業は給与構成の見直しや価格転嫁の対応が必要
  • 行政には広報と制度活用の促進、実効性ある支援体制の整備が期待される

⇒ 詳しくは大阪労働局のWEBサイトへ

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