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2025年8月20日

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令和7年10月16日から山口県最低賃金 時給1,043円、64円引き上げ

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令和7年度山口県最低賃金改正にかかる答申について(山口労働局)


この記事の概要

2025年10月16日より、山口県の最低賃金が1時間あたり1,043円に引き上げられます。これは前年より64円高く、過去最高の引上げ幅です。


2025年10月16日から、山口県で適用される最低賃金が1時間あたり1,043円に改定されることが決定しました。前年度の979円から64円の引き上げとなり、上昇率は6.5%に達します。これは中央最低賃金審議会が示した63円の目安額を1円上回る水準であり、山口県としては過去最高の引き上げ額となります。改定の背景には、全国的な物価上昇や生活費の高騰、そして政府が掲げる「新しい資本主義」の実行計画に基づいた所得向上政策があります。

この改定は、山口地方最低賃金審議会による5回にわたる専門的な審議の末に、公益委員見解をもって決定されました。審議会では、最低賃金法に基づく3つの主要要素、すなわち「労働者の生計費」「賃金」「通常の事業の賃金支払能力」を基に議論が進められました。労働者側は、連合が提示するリビングウェイジにおいて山口県で生活に必要とされる時給が1,130円であるとし、最低賃金がそれに達していないことを強調。さらに、山口市における食料品の消費者物価指数の上昇が6.4%に及ぶなど、日常生活に必要不可欠な費用が高騰している実情を訴えました。

一方で、使用者側は、中小企業や小規模事業者における賃金支払い能力に限界があると指摘しました。山口県における中小企業の割合は90%以上を占め、そこで働く労働者も多数にのぼります。そうした企業の多くが原材料費の高騰や人件費の増加に苦しんでおり、価格転嫁も思うように進んでいない実態が浮き彫りとなりました。加えて、法人景気予測調査では2025年度の経常利益が前年比22.9%減と見込まれており、景況感の厳しさを背景に「大幅な引き上げは事業継続に影響する」と懸念を表明しました。

議論は最後まで平行線をたどりましたが、公益委員の見解により、64円の引き上げという結論が採択されました。この決定に対し、労働者側は「生活費との乖離が依然として大きい」としつつも、目安額を超えた水準には一定の理解を示しました。一方で使用者側は、「3要素に基づかない地域間格差是正の目的での上乗せは法の趣旨にそぐわない」と不満を示しつつも、最終的には公益見解の提示額に従うかたちで決着しました。

今回の最低賃金の改定により、パートタイムや非正規雇用者を中心とした所得増加が期待される一方で、賃上げに伴う企業側の負担も増加します。これを支援するため、厚生労働省および山口労働局は「業務改善助成金」や「キャリアアップ助成金」などの支援策を積極的に推進しています。これらの助成金は、最低賃金の引き上げに対応するために生産性向上や職場環境改善に取り組む企業を対象としており、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げた場合に支給される仕組みとなっています。

実際、山口県内のパートタイム労働者の募集時の平均時給は1,123円となっており、今回の改定後の最低賃金よりも高い水準にあるため、多くの事業者が既にその水準で雇用を行っている可能性があります。それでもなお、最低賃金で働く人々にとっては生活の質を左右する重大な変更となることから、今後も労使双方のバランスを取りながらの改定が求められることは言うまでもありません。

また、地域間格差の是正も重要なテーマとして取り上げられています。2020年度時点で東京都との最低賃金の差は98円でしたが、2024年度には184円と拡大傾向にあります。このような差が続けば、若年層の都市部への流出をさらに助長し、地方の人口減少と経済空洞化が進む懸念があります。特に山口県では、総務省の人口推計によれば2024年時点で前年比1.26%の人口減少率を記録しており、全国で10番目の高い減少率となっています。この背景もあり、地域の最低賃金を少しでも引き上げることで、地元定着の促進を図る狙いも込められているのです。

最後に、発効日についても議論が行われました。労働者側はできる限り早期の施行を主張したのに対し、使用者側は企業の準備期間や106万円の壁への対応を理由に、発効日を遅らせるよう求めました。結果として、改定の効力発生日は2025年10月16日となり、事業者には一定の準備期間が設けられることとなりました。

このように、山口県における最低賃金の引き上げは、単なる数値の変更にとどまらず、経済・雇用・生活に密接に関わる重要な政策課題であり、今後も継続的な議論と柔軟な支援策が求められる分野であるといえます。

この記事の要点

  • 山口県の最低賃金が64円引き上げられ、時給1,043円に決定された
  • 引き上げ率は6.5%で過去最高水準となる
  • 改定の背景には物価上昇、生活費の増加、政府方針がある
  • 労使の意見がまとまらず、公益委員見解によって決定された
  • 改定発効日は2025年10月16日、企業には準備期間が与えられる
  • 厚労省は業務改善助成金などによる企業支援を強化している
  • 地域間格差の是正と若者の地元定着も重要な課題とされている

⇒ 詳しくは山口労働局のWEBサイトへ

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