2024年10月7日
労務・人事ニュース
新制度で軽自動車運送事業の安全対策を強化、令和6年から施行
貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正を行いました(国交省)
最近の電子商取引市場の拡大に伴い、宅配便の取扱件数が急増しています。特に、軽自動車を使用した配送が拡大しており、これは物流センターや小売店を介して消費者に荷物を届ける手段として利用されています。しかし、このような需要の増加に伴い、安全性の問題が浮上しています。具体的には、事業用軽自動車の保有台数1万台当たりの死亡・重傷事故の件数が、平成28年から令和4年にかけて約50%増加しました。この状況を踏まえ、政府は令和6年5月に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」および「貨物自動車運送事業法」の一部を改正し、新たな安全対策を導入することを発表しました。
改正の主な内容として、貨物軽自動車運送事業者に対する一連の義務が新たに追加されました。まず、「貨物軽自動車安全管理者」の選任が義務付けられました。これは、事業者が各営業所ごとに専任の管理者を配置し、彼らに対して安全に関する講習の受講を求めるものです。この管理者は、国土交通大臣に選任を報告する必要があります。また、毎日の業務に関する記録の作成と保存も義務化され、特に、業務開始・終了地点や走行距離などの詳細を1年間保存することが求められています。
さらに、事故が発生した際には、その概要や原因、再発防止策を含めた詳細な記録を3年間保存する義務が課されました。これに加え、死傷者が発生した場合など、一定規模以上の事故が発生した場合には、国土交通大臣に対する報告が義務付けられています。このような措置は、事故発生時の適切な対応を促し、再発防止につなげることを目的としています。
また、特定の運転者に対しては、特別な指導や適性診断の受診が義務付けられました。特定の運転者とは、事故を頻繁に起こした運転者や新たに雇用された運転者、高齢運転者を指します。これにより、運転者の適性を適切に評価し、安全運転を確保するための体制が強化されることとなります。
この制度改正に関連する情報は、国土交通省のウェブサイトにて公開されており、リーフレットや動画などを通じて事業者への支援が行われています。具体的な対応方法や記録の作成に関する様式例も順次公表される予定です。事業者は、こうした情報を活用し、適切な安全対策を講じることが求められます。
この制度改正は、令和6年10月1日に公布され、翌月の11月1日から講習機関に関する登録が開始されます。その後、令和7年4月からは、貨物軽自動車運送事業者に対する規制が本格的に施行されます。なお、既存の事業者には一定の猶予期間が設けられており、貨物軽自動車安全管理者の選任については施行後2年間、特定の運転者への特別な指導および適性診断の受診については施行後3年間の猶予があります。
この改正により、事業者はこれまで以上に厳格な安全管理が求められることとなりますが、その一方で、適切な体制を整えることで、事故リスクを低減し、安心して事業を継続することが可能となります。特に、運送事業において軽自動車は重要な役割を果たしているため、こうした安全対策は業界全体の健全な成長を支える基盤となるでしょう。
今回の制度改正によって、運送業界全体がさらなる安全向上を目指すための重要な一歩を踏み出したと言えるでしょう。特に、電子商取引の拡大に伴い、今後も宅配便の需要は増加することが予測されるため、事業者が安全管理を徹底することが求められます。これは、消費者に対するサービスの質を高めるだけでなく、企業の社会的責任を果たすための重要な取り組みでもあります。
企業の採用担当者にとっても、このような制度改正は非常に重要なポイントとなるでしょう。安全管理体制の強化は、従業員の安心を確保するだけでなく、企業全体のブランド価値を向上させる要因となります。特に、軽自動車運送事業に従事する運転者の安全性を確保するための取り組みは、長期的に見れば、事故の減少につながり、保険料の削減や顧客からの信頼獲得に寄与する可能性があります。
最後に、制度改正に伴う問合せ窓口も設置されており、事業者が不明点を解消できるような体制が整っています。電話やメールでの問合せが可能であり、令和7年3月31日まで設置予定となっています。このようなサポート体制の下、事業者は積極的に制度に対応し、安全対策を講じることが期待されています。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ