労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 令和7年4月の北海道有効求人倍率0.99倍が示す採用環境と企業が取るべき人材戦略

2025年6月16日

労務・人事ニュース

令和7年4月の北海道有効求人倍率0.99倍が示す採用環境と企業が取るべき人材戦略

Sponsored by 求人ボックス

令和7年4月の北海道雇用統計から考える、企業が優秀人材を確保するための視点と工夫

令和7年4月に北海道労働局が公表した雇用統計によれば、道内の有効求人倍率(季節調整値)は0.99倍となりました。前月の1.00倍から0.01ポイント低下し、再び1倍を下回ったことになります。この「1倍」という水準は、労働市場における需要と供給がほぼ均衡している状態を意味し、それを下回るということは、求職者数が求人件数を上回っていることを示しています。つまり、求人を出す企業にとっては、一見すると有利な状況のようにも見えますが、実際には職種や地域、雇用条件によって需給のバランスが大きく異なり、単純に求人を出せば人が集まるというわけではありません。

新規求人倍率に注目すると、北海道全体では1.63倍という数値が示されました。これは、月内に新たに求人が出された件数に対して、新規に求職登録された人の数が追いついていないことを意味します。特にこの新規求人倍率の高さは、採用市場における流動性の偏りを表しています。つまり、求人はあるものの、求職者の希望と求人条件のミスマッチが発生しており、結果として企業が必要とする人材の採用が難航する傾向が続いているという現実があります。

また、北海道の全体的な傾向として、公共職業安定所別では地域間のばらつきが非常に大きい点も見逃せません。例えば、札幌、函館、旭川といった主要都市圏では相対的に求人倍率が高く、地方部では低い傾向があります。これは、企業が求人を集中させる一方で、求職者の人口流出が続いていることも背景にあります。こうした地域ごとの偏在性を見極めずに一律の採用戦略を展開すると、結果的に応募が集まらなかったり、採用後の定着率が低くなったりするリスクが高まります。

職業別のデータを見ると、建設・土木関連、介護・福祉、サービス業、清掃業、そして運輸関連といった業種において求人が多い一方、一般事務職や教育関連、営業職などでは求職者が多く、求人とのミスマッチが顕著に表れています。こうした傾向は全国的にも共通する課題ではありますが、北海道の場合は季節的要因や地理的広がりの影響も加わり、さらに複雑な様相を呈しています。そのため、企業の採用担当者には、業種ごとの需給状況を見極め、自社の求人内容が求職者の期待にどれだけ応えているのかを再検証する視点が求められます。

特に注目すべきは、正社員求人倍率が全国平均を大きく下回っている点です。令和7年4月の北海道における正社員の有効求人倍率は、全体で0.71倍という数値で、これは正社員を希望する求職者が多いにもかかわらず、企業側が正社員としての求人をあまり出していない、または応募に至っていないことを示唆しています。このような背景を受け、企業は非正規雇用や短期雇用に頼る構造から、安定した正社員雇用への転換を図ることで、求職者の安心感と定着率の向上を実現する必要があります。

さらに、年齢別に見ると、若年層(29歳以下)の新規求職申込は引き続き減少傾向にあり、少子化と地方から都市部への流出が影響していることが明らかです。一方で、55歳以上の中高年層の求職者は増加傾向にあり、再就職を希望する高齢者層の活用が企業の人手不足を補う鍵となりつつあります。このような人口構成の変化を採用活動に活かすには、年齢に応じた就業支援制度や教育研修体制の整備が不可欠です。また、多世代共存の職場環境を整えるための企業文化や労務管理の見直しも並行して行うべきです。

北海道の雇用保険受給者における再就職までの期間にも注目が必要です。早期再就職率は全国平均とほぼ同程度で推移しているものの、再就職までに時間がかかるケースも少なくありません。この背景には、採用選考の長期化、求職者側の条件設定の厳しさ、企業側のマッチング制度の不備など複合的な要因が挙げられます。企業の採用担当者は、応募から内定までのプロセスを迅速かつ透明にし、求職者が不安を感じずに判断できるようにすることで、採用率を高める効果が期待できます。

また、北海道では気候や交通事情、生活インフラの条件なども人材確保に影響を及ぼします。冬期の通勤リスクや移動時間の長さは、求職者にとって重要な判断材料となるため、勤務地の柔軟性やテレワークの導入、交通費や防寒手当などの支援制度が差別化のポイントになります。都市部に比べて地理的な制約が大きい地方企業こそ、採用における「人間中心の配慮」を前面に打ち出すことで、求職者からの信頼を得やすくなるのです。

さらに、北海道特有の課題として、観光業や農業、酪農業などの季節産業における労働力の確保も喫緊の課題です。これらの業種では短期間での大量採用が必要になることが多く、短期アルバイトや期間従業員の管理体制の整備、継続雇用への転換などを視野に入れた採用戦略が求められます。採用活動を単なる人材調達として捉えるのではなく、地域経済や地場産業との連携を含めた広い視野で行うことが、今後の持続的な成長を支える柱となるでしょう。

最後に、採用活動は単なる業務ではなく、企業の存在価値そのものを社会に伝える重要なコミュニケーション手段です。求職者は求人票の裏にある企業の「人間性」や「理念」に敏感に反応します。だからこそ、北海道という広大な土地で、多様な価値観を持つ人々に向けて採用活動を展開するには、従来の常識にとらわれない創造的な発想と、地域や社会と誠実に向き合う姿勢が必要です。令和7年4月の有効求人倍率0.99倍という数値は、企業にとって採用の見直しと進化のチャンスであり、自社の魅力をより深く伝えるための出発点となるのです。

⇒ 詳しくは北海道労働局のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ