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2025年6月29日

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65歳以上の経営者が3割超、5年以内に退任予定が7割に達した帯広市の事業承継危機

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帯広商工会議所調査で判明、後継者不在が事業継続の最大リスクに

帯広商工会議所が実施した最新の「事業承継に関する調査結果」が2025年6月6日に発表されました。この調査は、2025年5月12日から27日の間に、帯広市内の企業を対象として行われたもので、全体で2,275社に調査票を送付し、119社から有効な回答を得ています。回答率は5.2%と限定的ながらも、実際の経営現場から寄せられたリアルな声が反映されており、地域経済の将来にとって重要な示唆を含んでいます。

調査ではまず、回答企業の代表者の年齢分布に注目が集まりました。全体の3割以上がすでに65歳以上であることが判明し、そのうちの7割が「5年以内に退任する意向」を示していました。さらに年齢別で見ると、70歳以上の経営者の76%、65~69歳の70%が、5年以内の退任を予定していると回答しており、事業承継の喫緊の課題として顕在化しています。これにより、地域内の多数の中小企業が近い将来において経営の移行を迫られることが明らかとなりました。

加えて、代表者の退任後の事業の行方についての設問では、「事業を継続したいが後継者がいない」とする企業が34%にのぼり、廃業を選択すると回答した企業も16%存在しました。廃業を予定している企業のうち、実に7割超が「黒字経営」または「収支がトントン」であり、さらに過半数が「人手が足りている」と答えています。つまり、財務的にも人員的にも安定した状態にあるにもかかわらず、後継者不在という理由のみで廃業を決断している企業が少なくないという事実が浮き彫りになったのです。

また、承継を希望する企業においても、約半数が「承継候補者がいない」と答えており、事業承継の準備期間として「6年以上」と回答した企業が全体の6割に達しました。この結果から、後継者の確保には長い時間を要し、対応が遅れることで「時間切れ廃業」に至るケースも懸念されます。実際、候補者ありの企業における平均準備期間は5.4年であるのに対し、候補者なしの企業では7.0年と2年近くの差が生じていました。

自社譲渡に関する課題については、「相手探しと育成」が39%と最も多く、次いで「顧客や従業員の信頼」(33%)、「債務処理」(19%)と続きました。これらの課題は、特に従業員数5人以下の小規模事業者で顕著であり、支援が行き届かない場合には承継を諦めて廃業を選択するリスクが高いと指摘されています。

一方で、他社事業の引継ぎに対する関心についても重要な傾向が見られました。回答企業の3分の1が「他社事業の承継に関心あり」と回答しており、特に建設業では33%、医療・福祉業では71%と高い関心が寄せられました。これは、地域内の業務空白を避けたいという意識や、将来的なビジネス拡大を見据えた前向きな姿勢の表れと捉えられます。

今回の調査結果を受けて、帯広商工会議所では「十勝事業承継ネットワーク(仮称)」の設立に向けた準備を進める方針を明らかにしています。このネットワークは、特に民間仲介では対応が難しい小規模案件を対象に、地域全体で情報を共有し、マッチング支援や相談対応を一元的に行うことを目的としています。また、同所は「事業承継・引継ぎ支援センター」との業務提携を核に、地元の商工会連合会、政府系金融機関、産業支援機関などと連携しながら具体的な制度設計を進めていくとしています。

調査の中で特筆すべきは、「廃業予定企業の3分の1が黒字経営」であるという点です。これらの企業では9割が「従業員が間に合っている」または「やり繰りできている」と回答しており、事業継続が可能であるにも関わらず承継の手立てがないために廃業を選ばざるを得ない状況が存在しています。こうした現状は、地域経済にとって大きな損失であり、事業承継支援の必要性を裏付けるデータといえるでしょう。

また、赤字企業の75%が「廃業以外の選択肢」を模索しているという点も注目に値します。これらの企業に対しては、融資支援や債務整理など、日常的な経営相談と併せた包括的な支援が不可欠です。特に廃業を回避しようとする中小事業者にとっては、信頼できる公的機関の存在が再起の支えとなります。

こうした中、帯広商工会議所の役割は今後ますます重要となるでしょう。地域に根差した経済団体として、小規模事業者の声に耳を傾け、具体的なサポート体制を構築していく姿勢は、多くの企業にとって安心材料となります。事業承継を支援するネットワークの設立は、単なる情報提供にとどまらず、後継者候補の育成、信頼関係の構築、そして資金繰りの支援までを視野に入れた多面的な取り組みが求められます。

このような包括的な対策が講じられることで、地域経済の持続可能性が高まり、次世代への円滑なバトンタッチが実現されることが期待されます。企業の生命線ともいえる事業承継問題は、もはや一部の企業の課題ではなく、地域全体の未来に直結する重要課題です。今後の動向には大いに注目が集まることでしょう。

⇒ 詳しくは帯広商工会議所のWEBサイトへ

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