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2025年4月8日

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買物困難者対策を必要とする市町村は全国の88.1%、有効回答1,033件から見えた現実(令和6年度)

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令和6年度「食品アクセス問題(買物困難者)」に関する全国市町村アンケート調査結果の公表について(農水省)

日本全国において深刻化している食品アクセス問題、いわゆる「買物困難者」の増加に対し、農林水産省は令和6年10月に全国1,741の市町村(東京都特別区含む)を対象としたアンケート調査を実施しました。この調査は、急速な高齢化、地域商業の衰退、交通網の縮小といった複合的な要因によって、日常的な食料品の購入が困難となっている住民の実態を明らかにし、今後の政策形成に活用する目的で行われたものです。調査結果は令和7年3月に公表され、企業や自治体、関連団体に対し、対策強化の必要性が改めて浮き彫りとなりました。

調査の結果、回答を寄せた1,033市町村のうち、910市町村(88.1%)が「対策が必要」あるいは「ある程度必要」と回答しており、その必要性は全国的に高い水準にあることが確認されました。特に小規模な自治体ではその割合が高く、「住民の高齢化」や「地元小売業の廃業」が主な背景として挙げられています。中でも「中心市街地や既存商店街の衰退」が深刻で、都市部においても食品アクセスに課題を抱える地域が増えていることが判明しました。

こうした背景を受けて、すでに行政や民間事業者によって何らかの対策が実施されている市町村の割合は89.2%に上り、対策を実施していない市町村はわずか10.8%にとどまっています。行政による対策の実施率は75.5%で、特に「コミュニティバス」や「乗合タクシーの運行支援」など移動手段を提供する取り組みが全国的に広く採用されています。また大都市では、「宅配サービス」「御用聞き・買物代行サービス」など、在宅型の支援策が多く見られる傾向があります。

一方、民間事業者による取り組みとしては、「移動販売車の導入・運営」が急速に拡大しており、行政による支援に加え、地域のニーズに即した柔軟な対応が進められています。実際に、市町村内で移動販売車を1台運行しているケースが最も多く、民間事業者では2~5台の運行が一般的です。また、行政が主導する取り組みでは約半数が市町村と「見守り協定」を結んでおり、高齢者への安全配慮といった副次的な効果も注目されています。

さらに、自治体の取り組みには大きなばらつきが見られ、都市規模や予算規模によって導入可能な対策が異なることも明らかになっています。たとえば、対策の予算規模としては「1,000~4,999万円」が最多で、特に中都市・小都市では財政制約の中での取り組みが課題となっています。「どのような対策を実施すべきか分からない」「財政上の問題で実施が難しい」といった理由により、実施に至っていない自治体も存在しており、国や自治体間での情報共有やノウハウの移転が求められる状況です。

民間事業者の参入状況を見ると、全体の60.1%の市町村において、民間による独自の対策が確認されています。中でも、株式会社などの営利企業が67.1%、生協や協同組合が31.6%と、高い割合で地域に根ざしたサービスを展開しています。特に「移動販売車」「宅配・代行サービス」の2つの形態が中心となっており、需要の多様化に対応する取り組みとして広がりを見せています。さらに、NPO法人や商工会、ボランティア団体などによる取り組みも一部で確認されており、地域コミュニティとの連携による持続可能な仕組みが注目されています。

今回の調査からは、食品アクセス問題が単なる「買物手段の欠如」にとどまらず、地域交通のあり方、福祉制度との連動、そして地域経済の再構築にまで関わる構造的な課題であることが浮かび上がりました。今後求められるのは、個別の対策を超えて、地域の現状や課題を共有し、持続的かつ柔軟な制度設計を行うことでしょう。特に注目されるのは、郵便局の配送網やタクシー会社など、既存のインフラや業種を横断する連携によって、新たなサービスモデルを創出する動きです。買物困難者への支援は、地域社会全体で支える仕組みづくりが求められる段階に来ていると言えます。

企業にとってもこの問題は無関係ではありません。たとえば、従業員が家族の買物支援に関わるケースでは、時短勤務やテレワーク制度の活用が求められ、企業側の制度整備が重要になります。また、地域貢献型のCSR(企業の社会的責任)活動として、食品アクセス支援に携わることは、地域との信頼関係を構築し、企業イメージを向上させる好機でもあります。高齢化が進む地域における採用活動においても、企業が地域生活の一部を担う存在として見られることは、求職者にとっても安心材料となる可能性があります。

⇒ 詳しくは農林水産省のWEBサイトへ

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