2025年5月19日
労務・人事ニュース
子どもの40.2%が悩みを抱える現実、10年後の新卒世代に必要なメンタルケア
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最終更新: 2025年6月6日 22:32
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第14回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況 こどもの悩みや不安(厚労省)
厚生労働省が継続的に実施している「21世紀出生児縦断調査」は、子どもたちの成長過程を社会全体で見守り、家庭環境や社会環境が子どもにどのような影響を及ぼしているのかを把握するための極めて重要な取り組みです。今回公表された第14回調査(令和6年実施)では、平成22年に生まれた子どもたちが中学2年生となった段階で、彼らが抱える「悩みや不安」に関する実態が明らかになりました。これは、思春期を迎えた子どもたちの心理的状況を把握する上で貴重な情報であり、将来的に社会の中核を担う彼らが、どのような心の課題を抱え、どのような支援が求められているのかを考える上でも非常に示唆に富んだ結果となっています。
まず、悩みや不安を感じている子どもたちの割合は、第14回調査時点で40.2%と、前回の第13回調査(中学1年生時点)の33.5%から6.7ポイント上昇しており、学年が進むにつれて心の負担が増している実態が浮き彫りになりました。これは平成13年出生児(現在20代前半)における同様の調査結果とも共通する傾向であり、年代を超えて共通する成長過程の特徴であるとともに、現代特有の環境要因が心の問題に拍車をかけている可能性も考慮する必要があります。
悩みや不安の具体的な内容に目を向けると、「学校や塾の成績に関すること」が最も多く、全体の30.0%を占めていました。この傾向は前回調査や過去世代においても同様で、学力評価や進学へのプレッシャーが、子どもたちにとって大きな心理的負担になっていることがうかがえます。次いで、「進路に関すること」(20.6%)、「部活動でのトラブル」(8.9%)、「友達との関係」(6.9%)、「自分の容姿に関すること」(4.2%)が挙げられ、いずれも中学生の生活の中で頻繁に直面する場面に関連した内容となっています。特に進路に関する悩みがここまで高い割合を占めている点は注目に値し、将来への不安が早期から芽生え、それが日常生活にまで影響を及ぼしていることを示しています。
このような精神的課題に対し、子どもたちは誰に相談しているのかという視点も重要です。今回の調査では、「お母さん」と答えた子どもが最も多く、65.0%にのぼりました。「友人」が51.9%、「お父さん」が28.3%と続き、家庭内の親子関係や友人とのつながりが、悩みを解決するための主要な支援源となっていることが明らかになりました。これらの数値は、過去の調査結果と比較しても上昇しており、子どもたちが身近な人に悩みを打ち明ける傾向が高まっていることが読み取れます。特に「友人」に相談する割合は、前回調査から4.8ポイント上昇しており、同世代との関係性がいかに重要であるかを物語っています。
また、「誰にも相談しない」と答えた子どもも一定数存在しており、その割合は14.0%でした。この数値は、過去の調査とほぼ同水準であるものの、決して見過ごせるものではありません。悩みや不安を抱えながら、それを打ち明けることができない子どもが一定層存在することは、メンタルヘルスの問題としても重要な社会課題です。近年は、学校や自治体によるスクールカウンセラーの配置が進められ、子どもたちが専門的支援を受けやすくなる環境が整いつつありますが、その利用率は依然として低く、制度の存在を知らない、または信頼関係を構築できていないといった課題が残っています。
企業の採用担当者にとって、このような若年層の心理的傾向を理解することは、単に教育や福祉の話にとどまりません。10年後に自社の職場で働く可能性のある人材が、どのような背景や価値観を持って成長してきたのかを把握することは、人材の定着率やパフォーマンスの最大化を図る上で欠かせない視点です。たとえば、「成果」に対するプレッシャーを過度に感じて育ってきた世代には、目標設定の仕方や評価制度において、一定の配慮が求められます。また、メンタルヘルスに対する感度が高い若年層に対しては、定期的な面談やメンタルサポートの導入が、職場への適応と生産性向上の両面で有効に作用する可能性があります。
さらに、子どもたちが相談相手として家族や友人を重視する傾向にあるという点は、企業内の人間関係の構築にも通じます。職場内での信頼関係が築かれているかどうかが、ストレスの軽減や仕事へのモチベーションに直結することを考慮すれば、エンゲージメント向上に向けた取り組みの中で、こうしたデータは大いに参考になるはずです。
また、将来的な労働力の育成という観点からも、今の子どもたちが抱えている不安の種類や相談傾向を把握することは、次世代支援施策の設計に直結します。企業が行うインターンシップや職場体験プログラムにおいても、単なる業務体験にとどまらず、自己肯定感の醸成や将来設計の支援を含む内容にシフトしていくことが求められていると言えるでしょう。
このように、厚生労働省が実施した最新の縦断調査は、子どもたちの現在の心理状態を明らかにするだけでなく、企業が未来を見据えた人材戦略を構築する上でも、極めて有意義な示唆を与えるものです。採用や育成、職場環境づくりにおいて、数値に裏打ちされたこうしたデータを活用することが、企業の持続的成長と社会的責任の遂行の両立に資する重要な取り組みとなるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ