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2025年6月9日

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出生数は年間71万人に減少、企業の人材確保に直結する人口動態の変化(令和7年3月分)

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人口動態統計速報(令和7年3月分)(厚労省)

令和7年3月時点での最新の人口動態統計速報により、日本社会が直面する少子高齢化の現状が一段と鮮明になった。今回の統計は、厚生労働省によって集計された出生、死亡、婚姻、離婚、そして死産に関するものであり、日本における人の動きを詳細に示している。過去1年間、すなわち令和6年4月から令和7年3月にかけてのデータに基づくと、日本全国における出生数は713,139人にとどまり、前年に比べて33,819人も減少した。これは前年比で4.5%の減少を意味し、出生率の継続的な低下が進行していることを示している。

一方、死亡数は前年よりも51,096人増加し、合計で1,643,986人に達している。死亡数の増加率は3.2%となっており、高齢化社会の進行とともに、死亡数が右肩上がりに推移している現実が見て取れる。この2つの数字から導き出される自然増減、すなわち出生数から死亡数を差し引いた値はマイナス930,847人と過去最大級の人口減少を記録した。この数字は、前年のマイナス845,932人と比較しても84,915人増加しており、日本社会における人口減少が加速度的に進んでいることを如実に表している。

さらに注目すべきは死産数の推移である。過去1年間で報告された死産数は15,923件となり、前年の16,109件からわずかに減少したものの、その差は186件にとどまっている。死産率は前年よりも若干上昇し、出産全体における死産の割合が1.2%増加したことになる。出産環境の整備や周産期医療の質向上が求められる中で、依然として一定数の死産が発生している事実は、医療機関や行政にとっても見過ごせない課題といえる。

婚姻件数については、令和6年4月から令和7年3月の1年間で494,678組が届け出を行っており、これは前年の491,082組から3,596組の増加となる。増加率に換算すると0.7%とわずかながらも上昇しており、結婚に対する意識が一定の回復傾向にある可能性が示唆される。一方で離婚件数は187,898件と前年より310件減少し、減少率は0.2%と極めて小幅である。この数字は、婚姻の増加が必ずしも離婚の抑制につながっていない現状を示している。

地域別に見ると、東京都は依然として出生数・婚姻数ともに最多であり、令和7年3月単月のデータでは6,406人の出生と8,843組の婚姻が報告されている。これは都市部特有の人口集中を反映した結果であり、都市部と地方との人口動態の乖離がさらに拡大していることを物語っている。大阪府や神奈川県、愛知県、福岡県といった他の大都市圏でも同様の傾向が見られるが、それでも出生数の減少傾向は例外なく各都道府県で顕著である。例えば、神奈川県では前年と比較して出生数が11,828人から10,539人に減少し、婚姻数も微減している。

また、地方に目を向けると、秋田県や高知県、鳥取県といった小規模県では出生数が年間でも1,000人を下回る水準となっており、極端な人口減少と高齢化が深刻な課題となっている。秋田県においては、令和7年3月の単月の出生数がわずか255人であるのに対し、死亡数は1,510人に達しており、差し引きで1,255人もの人口が月単位で自然減少している計算になる。これは年間換算で15,000人規模の減少となり、自治体運営や地域経済への影響が避けられない状況である。

こうした人口動態の変化は、企業の人材戦略にも大きな影響を与える。採用市場では若年層の労働人口が年々減少しつつあり、新卒採用や中途採用においても優秀な人材の確保がますます困難になっている。厚生労働省の統計が示す通り、少子化はもはや一時的な現象ではなく、長期的な構造問題として定着している。これに対応するためには、採用活動の多様化や、育成・定着支援に重きを置いた人事制度の再構築が急務である。特に地方においては、リモートワークや地域定住支援などを通じた人材誘致が一層重要になるだろう。

さらに女性の社会進出や、共働き世帯の増加など、社会のライフスタイルが変化する中で、出産や育児に対する支援制度の整備も企業にとって不可欠である。従業員の出産や育児を支える制度が整っていない企業は、優秀な人材の確保・維持が難しくなる傾向にある。出生数の減少が続く中、企業がいかにして働く人の生活を支え、安心して子育てできる環境を提供できるかが、今後の企業価値を左右する大きな要素となる。

こうした統計データの背景には、社会全体の価値観の変化や、経済的要因、地域ごとの行政サービスの格差といった複数の要因が複雑に絡み合っている。単なる数値としてではなく、その背景にある社会の動きを読み解き、具体的な対策を講じることが求められている。企業もまた、持続的な経営を実現するためには、こうした社会動向を的確に把握し、柔軟かつ戦略的な対応を進めていくことが重要である。

最後に、今回の統計から読み取れる最大のメッセージは、「人口減少は一層深刻化している」という事実である。この現実に対し、企業・行政・地域社会がそれぞれの立場からどのように連携し、持続可能な社会づくりに取り組むかが、今後の日本の未来を大きく左右することになるだろう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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