2025年6月17日
労務・人事ニュース
2025年4月時点での神奈川労働局発表による新規求人倍率1.79倍を採用活動にどう活かすか
- 「駅チカ」/正看護師/クリニック
最終更新: 2025年6月16日 22:31
- 「夜勤なし」/正看護師/介護施設/オンコールなし
最終更新: 2025年6月16日 22:31
- 「残業ゼロ」/正看護師/介護施設/住宅補助あり
最終更新: 2025年6月16日 22:31
- 栄養士/福岡市中央区/常勤/介護施設/唐人町 福岡市営地下鉄空港線
最終更新: 2025年6月17日 02:33
情報通信業と運輸業における求人減少(5.6%、0.1%減)から読み解く採用の盲点
令和7年4月、神奈川労働局が発表した最新の労働市場動向によると、神奈川県の有効求人倍率(受理地別季節調整値)は0.92倍と、前月より0.02ポイント上昇したものの、依然として1.0倍を下回る水準が続いています。一方、就業地別の有効求人倍率は1.11倍で、前月から横ばいのまま推移しており、地域によって求人と求職のバランスにばらつきが見られる状況です。
採用担当者が特に注目すべきは、新規求人倍率の大幅な上昇です。2025年4月の新規求人倍率(受理地別季節調整値)は1.79倍となり、前月より0.13ポイント上昇しています。就業地別では2.13倍とさらに高く、これは求職者1人あたりに対し2件以上の新規求人が存在しているという状況を示します。このような求人の供給過多とも言える環境下において、企業は従来の採用方法だけでは競争に勝ち残ることが難しくなってきています。
さらに、正社員に限定した有効求人倍率は0.64倍と、前年同月より0.02ポイント低下しており、安定的な雇用形態を求める労働者に対して、企業側のニーズとのギャップが浮き彫りとなっています。これは企業にとって、正社員採用における母集団形成が一層難しくなっていることを意味します。特に中堅人材や即戦力を求める企業にとっては、求人条件や採用プロセスの見直しが急務と言えます。
では、このような労働市場の変化に直面して、企業の採用担当者はどのように行動すべきなのでしょうか。まず前提として理解しておくべきなのは、2025年4月時点で神奈川県内の有効求人数が101,450人、対して有効求職者数が110,691人と、求人数が求職者数を下回っているという現実です。求職者1人に対して1つの職が確保できない状態が続いており、特に人材を獲得しにくい業界では人手不足の深刻化が進んでいます。
特に顕著な業種としては、「宿泊業・飲食サービス業」が前年同月比で87.9%もの大幅な求人増となっており、これは観光需要や外食産業の回復に伴う人手不足が背景にあると考えられます。また、「サービス業」は前年比27.4%増、「建設業」は17.5%増、「製造業」は8.9%増といったように、幅広い業種で求人が増加傾向にあります。こうした分野では、新規採用活動の競争がより一層激化しており、求職者の獲得が企業の成長戦略を左右する大きな要素になりつつあります。
一方で、「情報通信業」は前年比5.6%減、「運輸業・郵便業」は0.1%減と、求人が減少している業種も存在します。これらの分野においては、人材の流動性が限定的であることから、特定スキルを持った人材を確保するには、より的確な人材要件の明示や、採用後のキャリアパス提示などが必要となります。求人市場における需給のバランスは業種ごとに大きく異なるため、自社が属する業界の動向を的確に把握し、それに応じた柔軟な対応が求められます。
さらに、新規求人数は37,767人で前月比13.9%増と大幅に増加しています。これは、春の採用シーズンに向けて各社が一斉に採用活動を活発化させた結果とみられます。この動きは特に新卒・第二新卒や転職を検討している在職者層へのアプローチが重要であることを示しており、企業としては、自社の魅力をわかりやすく伝えるための求人票の見直し、選考プロセスのスピードアップ、内定後フォローの充実など、応募から入社までの全工程における質の向上が問われています。
また、正社員の有効求人数は45,353人、常用の有効求職者数は70,588人と発表されています。これは正社員ポジションに対しての求職者数が多いことを示しており、企業側としては「どのような人材を正社員として迎え入れたいのか」という採用方針の明確化と、それを踏まえたターゲティングが求められます。ミスマッチを減らすためには、仕事内容・待遇・キャリア支援などを正直に伝えることが、長期的な雇用安定に直結します。
採用市場の競争が激しさを増す中、特に注目すべきは「企業ブランディング」と「働きやすさの見える化」です。単に給与や福利厚生だけではなく、企業の社会的貢献や理念、リーダーシップのあり方、柔軟な働き方の導入状況など、求職者が共感しやすい情報の発信が、採用の成否を分ける大きな要素となっています。特に20代から30代前半の若年層は、企業のミッションやカルチャーに強く関心を示す傾向があるため、SNSや自社メディアを活用した情報発信も一層重要性を増しています。
最後に、2025年4月時点の雇用情勢に関して、神奈川労働局は「一部に弱さが残るものの、持ち直しに向けた動きが広がっている」との判断を示しています。ただし、物価上昇の影響など、今後の景気動向によって雇用市場の先行きが不透明である点にも注意が必要です。企業としては、短期的な採用成果だけでなく、中長期的に組織を強くするための「人材の質」や「定着率の向上」に注目し、教育研修の充実やキャリア形成支援といった仕組みづくりにも力を入れる必要があります。
このように、採用担当者にとって現在の労働市場データは、単なる統計情報ではなく、経営戦略や人材戦略に直結する重要な判断材料となります。神奈川県という地域性や業種ごとの傾向を踏まえつつ、自社の現状と目指す方向性をしっかり見極め、効果的な採用活動を展開していくことが、これからの時代の人材確保の鍵となるのです。
⇒ 詳しくは神奈川労働局のWEBサイトへ