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2025年6月16日

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令和7年4月の長崎県有効求人倍率1.17倍に見る採用環境と企業の対応戦略

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面接から内定までのスピードが鍵、長崎県求人倍率から読み解く対策

令和7年4月に公表された長崎労働局の統計によると、県内の有効求人倍率(季節調整値)は1.17倍となり、前月より0.01ポイント上昇しました。この数値は、求職者1人に対して1.17件の求人があることを示しており、全国平均の1.26倍には届かないものの、依然として売り手市場の状態が続いているといえます。企業の採用担当者にとって、このような情勢下では人材の確保が一層困難になるため、採用計画の立て方や手法に工夫が求められます。

特に注目すべきは、新規求人倍率が2.14倍と依然として高い水準にあることです。これは、新規に求人を出した企業に対して、求職者の数が少なくなっている状況を意味しています。つまり、求人を出すだけでは応募が集まらないケースが増えており、他社との競争の中で「選ばれる企業」としてどう存在感を出すかが問われているのです。

新規求人数は前年同月比で1.1%増加しており、産業別では建設業、製造業、卸売業・小売業、医療・福祉などで求人が伸びています。反対に、宿泊業・飲食サービス業、教育・学習支援業などでは求人が減少しており、コロナ禍以降の需要変動や業界の再編成が影響していることがうかがえます。企業の採用担当者は、自社の属する業界の求人動向を注視しながら、求職者のニーズに合った求人条件や魅力ある労働環境を打ち出す必要があります。

地域別の状況にも差が見られます。長崎市をはじめとした都市部では求人倍率が相対的に高い一方、佐世保市、島原市、諫早市、大村市、五島市、対馬市などの地方都市では倍率が低く、人材が流動しにくい傾向があります。このような地域差は、採用戦略を立てるうえで非常に重要な要素です。例えば、勤務地を限定せず通勤や住まいに柔軟な支援制度を設けることで、広範囲から人材を募集できるようになります。また、テレワークや週数回出勤といった柔軟な勤務形態の導入も、地域間の求人格差を埋める一手となります。

一方で、正社員の有効求人倍率は0.95倍と、前年同月比で0.02ポイントの上昇が見られたものの、依然として1.0を下回っています。これは、正社員として働きたいと考える求職者が多く、求人件数がそれに追いついていないことを意味しています。企業にとっては、質の高い人材を正社員として迎え入れるチャンスであり、非正規雇用とのバランスを見ながら、将来的な戦力として人材を育成する視点を持つことが重要です。雇用の安定を求める求職者に対しては、キャリアパスや研修制度、昇進機会などを明確に伝えることが、応募促進の鍵となるでしょう。

年齢別の求職者構成を見ると、若年層(29歳以下)は依然として求職者数の中で高い割合を占めていますが、近年はその数が横ばいもしくは微減傾向にあります。一方で、55歳以上の中高年層は着実に増加しており、高齢者雇用に積極的な企業が求められる時代になりつつあります。高齢層は即戦力となるスキルや豊富な社会経験を持っており、短時間勤務やパートタイム雇用といった柔軟な就業形態を整えることで、新たな戦力として活躍してもらえる可能性が高いといえます。

また、雇用保険受給者のうち、受給開始後3か月以内に再就職した者の割合(再就職早期率)は50.5%と、全国平均とほぼ同水準にあります。このデータは、企業が提示する求人条件が求職者にとって魅力的であるかどうかの指標の一つと捉えることができます。再就職までのスピードが早いということは、求職者の意思決定も迅速であることを意味しており、企業側にはスムーズかつスピーディな選考プロセスの設計が求められます。面接から内定までの期間を短縮する、選考フローを簡略化する、あるいはオンライン選考を導入するなどの取り組みは、採用競争を有利に進めるための有効な手段となります。

また、職種別に見ると、一般事務や医療関連職、製造系、サービス系などが人気ですが、求人件数と求職者数との間にギャップが生じており、いわゆる「ミスマッチ」の状況が続いています。このような場合、企業側は求める人材像をより具体的に提示するとともに、職務内容や勤務条件を明確に説明することで、より適合度の高い応募者を集めやすくなります。また、採用後のミスマッチを防ぐために、職場見学や体験入社制度など、事前の相互理解を深める機会を提供することも有効です。

このように、長崎県内においても求人倍率は全体として高い水準にありますが、業種や地域、雇用形態によって採用の難易度や課題が異なっており、画一的な採用活動では成果を上げにくい時代となっています。企業の採用担当者は、データに基づいた現状分析を行いながら、自社の魅力を最大限に伝える戦略を構築する必要があります。そして、採用後の定着率を高めるための社内体制の整備や、従業員のキャリア支援にも目を向けることが、中長期的に見た人材確保の成否を分けることになるでしょう。

採用市場は今後ますます競争が激化し、企業と求職者の立場が流動的に入れ替わる傾向が強まっていくと考えられます。だからこそ、企業にとっては採用活動そのものを「ブランディングの一環」として捉え、求職者の共感を呼ぶ情報発信、柔軟な雇用制度、そして丁寧な人材育成の体制を整えることが、持続的な成長を支える基盤となるのです。

⇒ 詳しくは長崎労働局のWEBサイトへ

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