2025年6月30日
労務・人事ニュース
国際鉄道市場拡大を見据えた「鉄道技術標準化ビジネスプラン」策定、アジア太平洋地域への進出が鍵
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「鉄道技術標準化ビジネスプラン」の策定について ~我が国鉄道の海外展開及び持続的発展に向けて~(国交省)
令和7年6月13日、国土交通省鉄道局は「鉄道技術標準化ビジネスプラン」を正式に策定・公表しました。このビジネスプランは、日本の鉄道システムの国際競争力をさらに高め、国内外における鉄道事業および関連産業の持続的な発展を図ることを目的としたものであり、その背景には人口減少や少子高齢化といった社会構造の変化、加えて世界的な鉄道市場の成長が存在します。特にアジア太平洋地域では今後も鉄道インフラへの投資が活発になる見通しがあり、日本としてもこの成長市場に積極的に参画していくための技術的基盤の整備が急務とされています。
このプランの策定にあたっては、東京大学の大崎博之教授を委員長とする「鉄道技術標準化調査検討会」において、国土交通省、鉄道事業者、製造事業者、研究機関、関連協会の関係者らが参加し、過去の標準化活動で浮かび上がった課題や社会情勢の変化を丁寧に分析しました。そのうえで、今後の方向性として、国際規格の新規提案体制の強化、鉄道製品の認証制度の持続可能性確保、装置や部品の共通化を通じた国内鉄道の効率化、そして国際的な鉄道技術評価の基準づくりが重点的に打ち出されました。
この中で特に注目されるのが、国内外における鉄道システムの効率化と安全性の担保に向けた技術の「標準化」です。例えば、鉄道車両の装置や部品については、製造・保守・交換のコストを抑えるために事業者間での共通仕様を定める必要があり、その際に標準化が不可欠な手段となります。これにより、技術者不足が進む中でもメンテナンス作業の平準化が図られ、運行の安定性や安全性の向上にも寄与することが期待されています。
また、海外市場の拡大に向けた戦略として、日本の設計思想や技術仕様を反映した国際規格を積極的に提案し、国際審議において日本のプレゼンスを高める取り組みも強調されています。すでに我が国から派遣された専門家による活動もあり、国際標準化機関との対話が進められてはいるものの、各国の利害が絡むなかでの合意形成は容易ではありません。そのため、国際的な調整力と技術的知見を兼ね備えた人材の育成が急務となっています。
こうした背景を受けて、鉄道認証室の体制強化や、鉄道品質マネジメント認証スキームの整備といった具体的施策も盛り込まれています。製品の適合性を客観的に評価する第三者認証体制が確立されることで、安全性と信頼性の確保が図られ、海外プロジェクトにおける日本企業の受注機会の拡大に資することが見込まれます。
このビジネスプランでは、国内の鉄道関連事業者や製造業者をはじめとする関係者が、標準化活動の重要性を共通認識として持ち、その推進に向けて継続的に取り組む必要性が説かれています。特に人材の育成については、実務担当者に向けた教育プログラムの実施、経営層に対する啓発、標準化活動をキャリアパスとして位置づけるための制度設計など、長期的かつ組織的な対応が求められています。
さらに、カーボンニュートラルの実現に向けた技術転換も今後の鉄道技術においては重要な要素であり、ディーゼル車両からの代替として蓄電池車、バイオ燃料、さらには水素燃料電池を活用した鉄道車両の導入・普及が進められています。これら新たな技術の社会実装には、その技術が明確な規格として定義され、関係者間で共通の理解を持つことが不可欠です。そのため、鉄道業界全体でこうした標準化の枠組みを整備し、将来的にはこれらの規格が国際的に認知されることが望まれています。
企業の採用担当者にとっても、このビジネスプランが意味するところは極めて大きいものがあります。特に技術標準化に関わる分野では、国際調整能力や高度な技術理解が求められることから、これからの人材像としては語学力や交渉力、技術マネジメントの知識を兼ね備えた人材が強く求められるようになるでしょう。また、標準化活動そのものが企業戦略と密接に関連し、製品開発や海外展開の競争力に直結することから、人材の採用段階からこうした素養を重視した評価軸を導入する必要があります。ビジネスプランの実現には、現場を支える専門技術者だけでなく、経営戦略を見通しながら長期的な視点で人材配置を考えられる組織力も問われてくる時代が到来しているといえます。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ