2025年12月28日
労務・人事ニュース
自己効力感の低い若者を支えたフィードバックとリフレーミングの役割
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わかものハローワークにおける若年求職者への支援の実際(JILPT)
この記事の概要
若年求職者を対象とした就職支援機関で行われた職員ヒアリング調査では、支援の中心に「自己理解の促進」が位置づいていることが明らかになった。支援経験のある23名を対象としたインタビューによって、積極技法の多用、支援ツールとの併用、困難事例への具体的対応などが整理され、今後の若年層支援の改善に向けた知見が得られた。
2024年11月から12月にかけて、若年求職者支援の現場で相談業務を担ってきた23名を対象とするヒアリング調査が実施され、各地の支援拠点で行われてきた個別支援の実態が詳細に明らかとなった。対象者は女性20名、男性3名で、東京都の複数拠点に加え、埼玉県、千葉県、神奈川県の施設でも調査が行われた。半構造化インタビューを用いた調査であり、1〜3名単位の個別および集団形式で30分から2時間の時間が設定された。
調査は、若年求職者支援の特徴を整理する目的で行われ、キャリアカウンセリングの基本プロセスとマイクロカウンセリング技法の枠組みを用いて内容が分類された。その結果、相談者の特性や支援の工夫、困難事例の対処、自己効力感の低さへの支援、離脱の要因など多岐にわたるテーマについて詳細な語りが収集され、テーマ分析に基づいて支援の傾向が整理された。
最も多く語られた内容が「自己理解」に関する支援であり、若年求職者が自分の興味や特性、価値観を整理することが、支援の出発点として重視されていた。自己効力感が低い場合や、相談対応が難しいと感じられるケースほど、自己理解を深めるための支援が必要であるという認識が多く示され、現場での重要なポイントとして位置づけられた。
自己理解を促す場面では質問技法が多用され、相談者が自身の状況や行動を振り返るよう促す工夫が見られた。相談者が経験を語る際には、繰り返しや感情の反映などを用いて、気づきを引き出しやすい雰囲気をつくる働きかけが行われていた。励ましの言葉や表情といった非言語の情報も重要視され、相談者が安心して話せる関係の構築が常に意識されていた。
積極技法の活用も特徴的であり、リフレーミングやフィードバック、さらにはアドバイスや情報提供などが頻繁に取り入れられていた。自分の能力や行動を否定的に捉えがちな相談者には、見方を変えるリフレーミングや、具体的な行動を評価するフィードバックが有効に活用されていた。また、労働市場や職種理解が不足している相談者には、情報提供や具体的な検索方法の助言が行われ、次の行動につなげる支援が実施されていた。
積極技法を用いる際には、相談者との関係性に配慮した伝え方が重視され、良い点と改善点をセットで伝える、疑問形で提案するなど、コミュニケーションの工夫が細かく実践されていた。これにより相談者が自ら考える姿勢を引き出し、支援への参加意識を高める構造がつくられていた。
支援ツールの活用も有効な手段として位置づけられ、キャリア・インサイトやjobtagなどのツールが広く利用されていた。これらのツールは若者が自身の興味や特性を視覚的に理解する助けとなり、相談の深まりを支える役割を果たしていた。ツールの結果を手掛かりに、相談者に合わせた質問やフィードバックを行うことで、自己理解や仕事理解が促進される仕組みが形成されていた。
調査の中では、若年求職者に特徴的とみられる4つのケースに対する実践内容も整理された。自己の強みに気づいていないケースでは、相談者が日常的に見過ごしていた行動や経験を取り上げ、強みとして認識できるよう促す支援が行われていた。これにより、相談者が自信を取り戻し、応募行動につながる例が確認されていた。
職場定着に課題があるケースでは、離職理由を丁寧に把握することが重視され、相談者の状況に合わせた新たな職場での対処法の情報提供が実施されていた。環境の変化や働き方について具体的に説明することで、適応への不安を軽減しようとする試みがみられた。
支援者への依存度が高いケースでは、ツールの操作や求人検索を共同で行い、行動を促すことが意図されていた。相談の過程で小さな自己決定の機会を積み重ねることで、相談者が自ら行動する土台をつくる工夫が重ねられていた。
希望と現実のギャップが大きいケースでは、労働市場の情報提供や特性に合わせた挑戦の機会を設けることで相談者自身に気づきを促し、必要に応じて職業訓練や施設見学など啓発的経験を提案する方法が取られた。選択肢を広げる支援を通じて、相談者が現実的な方向性を見出す流れがつくられていた。
今回の調査結果から、若年求職者への支援では自己理解の促進が重要であり、相談者とのかかわりを重視した積極技法が効果的であることが示唆された。さらに、支援ツールの活用がカウンセリング技法と相乗的に作用し、職業選択や自己PRのきっかけをつくる場として機能していた。支援従事者への基礎資料として、今後の就職支援の質向上に資する内容となった。
この記事の要点
- 自己理解の促進が支援の中心である
- 積極技法の活用が多く確認された
- 非言語コミュニケーションへの配慮が重視された
- 支援ツールが自己理解の深化に寄与した
- 困難事例には個別に応じた工夫があった
- 希望と現実のギャップへの対応が整理された
- 離職理由の把握と環境理解が定着支援に活用された
- 自己決定を促す支援が依存軽減につながった
- 若年求職者支援の現場に共通課題が見られた
⇒ 詳しくは独立行政法人 労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ


