2025年12月1日
労務・人事ニュース
令和7年10月長崎県の求人倍率1.07倍、企業が押さえるべき採用の要点
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長崎県の雇用失業情勢（令和７年１０月分）について（長崎労働局）
この記事の概要
長崎県の令和7年10月の有効求人倍率は1.07倍となり、前月から0.01ポイント低下した。求人が求職を上回る状況は56か月連続で続いているが、新規求人数は前年比10.5％減で9か月連続で減少しており、求人の勢いには落ち着きが見られる。中小企業の採用は依然として難しいが、倍率の動向を踏まえた戦略的な採用手法が求められる。
令和7年10月の長崎県の労働市場データを見ると、県内の雇用環境は一見安定しているようでありながら、その内側には変化の兆しが表れている。長崎労働局が公表した資料によると、有効求人倍率（季節調整値）は1.07倍で、前月からわずかに低下した。求人が求職を上回る状況は56か月連続で続いており、県内企業の採用意欲が完全に落ち込んでいるわけではない。しかし、月間有効求人数は前月比2.8％減の23,733人、有効求職者数も前月比1.2％減の22,247人となり、求人・求職の双方で減少が見られたことは注視すべき点である。
加えて、新規求人倍率は1.72倍と前月から0.08ポイント上昇しており、求人そのものよりも求職者の動きが弱くなっていることがうかがえる。資料には新規求人数（季節調整値）が8,333人で前月比3.5％増、新規求職者数は4,849人で前月比1.5％減と整理されている。この動きは、企業側の新規募集が一部で戻り始めている一方、求職者が積極的に職探しに踏み出す動きが鈍っていることを示している。
しかしながら、新規求人数を原数値で見ると状況はやや異なり、前年比10.5％減となっており、9か月連続で減少している。資料の1ページにも強調されているとおり、物価上昇の影響やコスト増を背景に、企業が求人枠を慎重に設定している様子がうかがえる。特にパートタイム求人が前年比15.6％減と大きく落ち込んでおり、採用戦略を見直す企業が多いことが考えられる。
産業別の新規求人動向を確認すると、建設業が前年比9.7％減、製造業は12か月連続で減少し前年比6.3％減、卸売業・小売業は18.2％減、宿泊業・飲食サービス業は22.7％減となるなど、主要産業が軒並み減少している。資料2ページや7ページに記載されている細分化されたデータでは、製造業の中でも食料品製造業や電子部品関係で減少が目立ち、卸売・小売業では各地域で求人減が広がっていることが示されている。生活関連サービス業や娯楽業など、県内で人手確保が課題となりやすい業種でも減少が継続しており、求人の側から見れば人材確保の難しさが今後も続くことが想定される。
一方で、新規求職者数は4,994人で前年同月比0.7％減となり、求職者数そのものは大きくは増えていない。男性は前年同月比2.4％増加したが女性は2.6％減少しており、年齢層別に見ると35〜44歳は2.8％増、65歳以上は11.2％増となるなど、求職者の構成に変化がある。資料10ページに示されているとおり、若年層と中年層は微増または横ばいだが、高齢層の求職者が増えており、中小企業にとっては幅広い年齢層から人材を受け入れる柔軟性が求められる。
正社員有効求人倍率は1.03倍で、前年同月比0.08ポイント低下した。正社員有効求人数は13,035人で前年同月比6.6％減、パートを除く常用有効求職者は12,621人で前年同月比0.1％増となり、企業が提示する正社員求人の枠が縮小している様子がうかがえる。求職者側は安定した雇用を求める傾向が強いものの、企業側が慎重になっているためマッチングが難しくなっている。
地域別に見ても、資料3ページの表では、長崎地域の有効求人倍率が1.00倍、佐世保が1.17倍、島原が1.19倍、江迎が0.90倍など、地域によって採用難の状況が異なっている。対馬は1.51倍と県内で最も高く、地域の求人需要が活発であることを示しているが、江迎や五島では0.90〜0.93倍と求人が求職者を下回る地域も存在する。中小企業の採用担当者にとって、地域ごとに異なる労働需給状況を把握したうえで採用の間口を広げることは、今後ますます重要になる。
このような雇用環境のなか、中小企業が採用活動を進めるにあたっては、単に求人を出すだけでは成果が得にくい状況になっている。まず重要なのは、求人内容の精度を高め求職者に“選ばれる求人”を作ることである。有効求人倍率が1.07倍という数字は求人が求職を上回っていることを示すが、新規求人が減少している現状では、求職者の選択肢が狭まり、条件の良い求人に応募が集中しやすい。つまり、中小企業は「求職者に比較される前提」で求人票を作成する必要がある。
そのためには、給与や勤務時間といった基本条件に加え、キャリアステップ、教育制度、職場環境など、企業の魅力を明確に伝える記載が欠かせない。長崎県の労働市場では、35〜44歳や55歳以上の求職者が増加しているため、これらの層を意識した働きやすさの提示も効果的である。たとえば、ミドル層に向けた専門スキルの活用機会の強調、シニア層に配慮した体力的負担の少ない職務設計など、ターゲット層に応じて求人内容を最適化することで応募への動機づけが高まる。
さらに、採用スピードの迅速化は重要な課題である。新規求人倍率は1.72倍と高い水準にあり、求人に対して求職者数が十分とは言えないため、一度応募が入った際に選考が遅れると他社に人材を奪われる可能性が高い。資料4ページでは就職率が35.7％と表記されており、求職者が複数社に応募する傾向があることが読み取れる。面接日程の調整や選考結果の通知を迅速に行う体制を構築することで、採用機会の喪失を防げる。
地域別の求人倍率の差を踏まえ、採用エリアの見直しも効果的である。対馬や佐世保地域のように求職者数より求人が多い地域では、積極的に求人を出すことでより多くの応募を期待できる。一方で、江迎や五島のように有効求人倍率が低い地域では、求職者数の方が多いことを逆に活かし、地域を超えた採用やテレワークの導入などによって応募者を取り込む工夫が必要になる。
総じて、長崎県の令和7年10月の雇用情勢は求人減少と求職者増のバランスが微妙な状況であり、中小企業にとって採用難が続くことが予想される。ただし、求職者の属性変化、新規求人倍率の高さ、地域差など、データを適切に活用することで採用の成功率は大きく高まる。今後の採用活動では、求人票の質向上、採用スピードの強化、地域特性の活用、多様な人材の受け入れ体制の整備など、戦略的かつ柔軟なアプローチが鍵となる。
この記事の要点
- 令和7年10月の長崎県有効求人倍率は1.07倍で前月から低下
- 新規求人数は前年比10.5％減で9か月連続減少
- 主要産業の求人は軒並み減少し採用活動は慎重姿勢
- 正社員求人倍率は1.03倍で前年同月比低下しミスマッチ拡大
- 地域による求人倍率の差が大きく採用戦略の地域最適化が必要
- 中小企業は求人票の質と採用スピードの強化が必須
⇒ 詳しくは長崎労働局のWEBサイトへ
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