2026年8月8日
労務・人事ニュース
2026年7月公表、東南アジア5か国の職業資格制度を比較し採用担当者が確認すべき技能評価の違いを解説
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東南アジア諸国の職業能力評価制度Ⅱ(JILPT)
2026年7月8日、カンボジア、タイ、ミャンマー、インドネシア、ベトナムの5か国を対象に、職業能力評価制度の現状を整理した調査結果が公表されました。技能労働者向けの資格制度や技能評価の仕組み、教育資格との関係、国家間の相互承認の進み具合がまとめられています。
調査は現地調査と文献調査を組み合わせ、技能実習生の主要な送り出し国で公的職業資格がどのように設計され、企業や労働者に活用されているかを確認したものです。制度の段階数や対象職種数だけでなく、実際の運用状況にも国ごとの差がみられました。
カンボジアの教育資格枠組みは、前期中等教育卒業に相当するレベル1から博士課程修了のレベル8までの8段階です。知識、認知能力、精神運動能力、対人スキル、責任感、情報技術、数値処理能力などを段階別に評価する仕組みとなっています。
同国では、職業能力の認定だけを目的とした独立した公的資格試験は確認されていません。職業訓練校で職種別のカリキュラムを修了した際に交付される修了証が、公的職業資格に相当すると整理されています。
職業技術教育訓練で設けられている職種は約147です。前期中等教育修了に相当する職業訓練修了証と、後期中等教育の3学年に対応する技術職業資格1から3があり、教育制度と職業訓練を接続する設計が採られています。
制度上は、後期中等教育修了に相当する職業訓練課程を終えることで、一般大学への入学資格を得られる仕組みです。大学や大学院に相当する技術職業教育も用意されていますが、実際には一般教育との橋渡しが十分に機能していないとの見方も示されました。
タイでは、教育資格を8段階に分ける枠組みが設けられています。国家技能基準に基づく資格は6段階で286職種、専門職向けの資格制度は8段階で50分野、1,103職種に及び、対象範囲の広さが特徴です。
国家技能基準は主にレベル1から3、専門職向け資格は主にレベル4から6で活用されています。20職種では両制度の資格を相互に認める仕組みがあり、複数制度の間で資格を接続する取組も進んでいます。
また、286職種のうち141職種では、技能資格の保有者に一般の最低賃金より高い水準を適用する制度が設けられています。資格取得を賃金上昇に結び付けることで、労働者の技能向上を促す構造です。
国家間の相互承認では、日本との情報処理技術者資格の相互承認に加え、周辺国との間で建設、電気配線、縫製などの技能認証をそろえる取組が進められています。2023年2月には、れんが積みと左官の2職種で隣国との技能水準の同等性が確認されました。
ミャンマーの国家教育資格枠組みは8段階で、地域共通の資格参照枠組みに準拠する形で2022年5月に発行されました。職業資格は半熟練、熟練、高度な熟練、監督者の4段階で構成されています。
優先対象とされる約175職種で技能基準の整備が進められ、確認できた範囲では52職種から88職種について、主にレベル1と2の策定が完了しています。ただし、2021年以降は国際支援が停止し、資格整備が今後も停滞する可能性が指摘されました。
インドネシアでは、国家職業資格基準に記載された能力単位を組み合わせ、教育資格枠組みのレベルを参照しながら、職種ごとの技能水準を決める仕組みが採用されています。職種によって必要な能力単位の数や範囲が異なるため、レベル数も一律ではありません。
公的職業資格の企業での活用率は約14%にとどまりました。活用企業では人事部門や製造部門で資格を評価基準に組み込み、社内資格や人事評価へ反映する例がある一方、制度自体を知らない企業や全く利用していない企業も多いとされています。
一部企業では、日本の技能検定を参考に社内資格を設計し、現地の国家職業資格基準も併用していました。社内資格の認定時に公的資格の保有状況を考慮する事例も確認され、制度を理解している企業では一定の活用が進んでいます。
一方、資格の相互承認は教育資格を中心に進められており、職業資格との連携はほとんど確認されませんでした。国内での認知や活用が限定的なことも、国際的な相互承認を進めるうえでの課題となっています。
ベトナムでは、2025年3月の行政再編により職業訓練の所管が移され、法律改正や下位法令の整備が進行中です。その影響で職業資格認定の実務が滞り、感染症拡大後は多くの職種で技能検定試験がほとんど実施されていないことが分かりました。
企業における公的職業資格の認知度と活用度も極めて低く、実際に就業要件として使われるのは鉱山労働など一部の職種に限られます。多くの企業では、公的資格よりも社内資格を基準に人事労務管理を行っています。
国家資格枠組みと職業技能資格枠組みは、記述内容に似た部分があるものの、現地調査では両者の照合や調和ができていないことが確認されました。現在は新たな制度整備によって、2つの枠組みを統合する方向で検討が進められています。
教育資格の国際的な参照作業では一定の前進があり、2025年10月24日に提出された参照報告が承認されました。ただし、職業資格については他国との相互承認が進んでいるとは言い難く、教育資格と職業資格の間に隔たりが残っています。
過去の調査対象だったフィリピンを含む6か国を比較すると、公的職業資格の対象職種数は約147から1,103まで大きな差があります。職業資格のレベル数も4段階から9段階まで幅があり、制度の設計思想や教育資格との接続方法も統一されていません。
職種数はカンボジアが約147、タイが専門職1,103職種と国家技能基準286職種、ミャンマーが52から88職種、インドネシアが938職種、ベトナムが96職種、フィリピンが530職種と整理されています。
今回の調査では、各国の制度が外国政府や国際機関の協力によって構築されてきた点も示されました。複数の支援制度を組み合わせた結果、資格同士の関係が分かりにくくなったり、現地の職場実態に合わず認知や活用が進まなかったりする可能性があります。
企業の採用担当者にとっては、資格名だけで技能を判断するのではなく、取得時の教育課程、評価方法、実務経験、国内での活用度を確認することが重要です。同じレベル表記でも、国によって能力の範囲や評価基準が異なるためです。
外国人材の採用や配置を進める際には、各国の公的資格と社内評価を組み合わせ、実務能力を個別に確認する仕組みが求められます。教育資格と職業資格の関係を把握することが、適切な採用判断や育成計画につながります。
職業資格の国際的な相互承認を進めるには、まず各国内で教育制度と職業訓練制度の関係を整理する必要があります。制度間の連携が弱い国では国内調整に時間がかかり、外国との承認手続も長期化する可能性があるとまとめられました。
⇒ 詳しくは独立行政法人労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ


