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2025年9月17日

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栃木労働局が硫化水素中毒防止へ緊急要請、4名死亡災害を受けた現場対策とは

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硫化水素中毒防止に向けた緊急要請を実施(栃木労働局)


この記事の概要

令和7年8月2日に埼玉県で発生した下水道作業中の硫化水素中毒による死亡災害を受け、栃木労働局は県内の関係団体に対して緊急要請を行いました。過去にも全国で同様の災害が発生しており、栃木県内でも近年2件の労働災害が確認されています。栃木労働局は、作業従事者の命を守るため、防止対策の徹底を強く呼びかけています。


栃木労働局は、令和7年8月2日に埼玉県内で起きた下水道管路点検・清掃作業中の硫化水素中毒による4名の死亡事故を受け、県内の関係団体に対して硫化水素中毒防止に関する緊急要請を行いました。事故の詳細は現在も調査中ですが、類似の災害がこれまでにも全国各地で繰り返されており、下水道管路などの閉鎖空間における作業では硫化水素中毒のリスクが常に付きまとう重大な安全問題とされています。栃木労働局ではすでに8月21日付で緊急要請文書を発出しており、建設業や浄化槽関連団体を中心に、作業従事者の安全確保と防止策の徹底を強く求める姿勢を示しています。

今回の緊急要請では、栃木県内の建設業労働災害防止協会や浄化槽協会などをはじめ、建設産業に関係する7つの団体に対して文書を通じた呼びかけがなされました。その背景には、下水道管路内での硫化水素中毒が突発的に発生するという構造的な危険性があります。硫化水素は腐敗物から発生しやすく、下水中や堆積した汚泥の内部に静置状態で封じ込められていたとしても、作業中の撹拌や空気の流れによって急激に大気中に放出されることがあり、作業開始時には低濃度であっても途中で濃度が急上昇することがあります。これが致命的な事故につながる最大の要因であり、作業者の油断や対策の不備が直ちに命に関わる重大事態を引き起こす可能性を常に孕んでいるのです。

栃木労働局は今回の緊急要請の中で、下水道管路やし尿処理施設など、硫化水素が発生する可能性のある場所で作業を行うすべての事業者に対して、8つの具体的な留意事項を挙げて徹底的な対策を求めました。まず最も重要なのが、適正な作業計画を事前に策定することです。現場ごとに得られる情報をもとに、リスクを洗い出した上で硫化水素中毒の防止を念頭に置いた計画を立て、それに基づいて作業を進める必要があります。次に、作業開始前だけでなく作業中にも継続的に硫化水素濃度を測定し、状況の変化をリアルタイムで把握する体制を整えることが求められています。

さらに、有効な換気を実施し、作業空間の硫化水素濃度を常に10ppm以下に保つことが指導されています。これが難しい場合には、空気呼吸器や送気マスクなどの保護具の着用が義務づけられ、万が一の墜落などを防ぐために要求性能を満たした墜落制止用器具の使用も推奨されます。また、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の選任とその業務の徹底、異常事態を早期に察知し通報できる監視体制の確保、さらには作業員への特別教育や救出時の二次災害を防ぐ訓練まで、あらゆる角度からの安全確保が盛り込まれています。

このような具体的な対策の背景には、実際に発生した労働災害の実例が存在します。厚生労働省の調査によると、過去にはマンホール内や雨水枡内での作業中に硫化水素を吸引して死亡・休業となった事例が複数報告されています。例えば、マンホール内で滞留物の除去作業中に意識を失い休業したケース、下水管の詰まりを解消するため写真を撮ろうとして中に入り死亡したケース、汚水圧送管の空気抜き弁交換作業中に漏れ出した硫化水素を吸って被災したケースなどが挙げられています。いずれも作業従事者の不注意というより、予期せぬ事態が一瞬にして命を奪う典型的な事例であり、防止策の不徹底が悲劇を招くことを証明しています。

栃木県内においても、下水道管路作業中ではないものの、令和5年以降に硫化水素中毒による労働災害が2件発生しています。1件は温泉旅館の水タンク補修中に、源泉から流入した硫化水素を吸引して被災したもの、もう1件は汚水浄化設備の上部に立ち入った際に、排出口から噴出した硫化水素を吸引して休業に至ったケースです。これらの事例もまた、閉鎖空間だけでなく開放された空間においても硫化水素が突発的に発生する危険性を示しており、場所に関係なく十分なリスク評価と対策が必要であることを強調しています。

栃木労働局が今回のような緊急要請を行うのは、単なる行政的措置ではなく、労働者の命を守るための切実な呼びかけです。過去の教訓を踏まえ、再発防止を真剣に捉えることが全ての関係者に求められています。建設業、清掃業、浄化槽関連業者など、現場作業を担う企業や組織の採用担当者にとっても、これらの対策は作業員の安全だけでなく、企業としての信頼性や社会的責任を果たす上で不可欠な要素です。職場の安全が確保されてこそ、持続可能な採用活動が成り立ち、ひいては地域経済の安定にもつながっていくといえるでしょう。

この記事の要点

  • 令和7年8月に埼玉県で硫化水素中毒による4名死亡の重大災害が発生
  • 栃木労働局が県内の建設・清掃関連団体に緊急要請を実施
  • 下水道作業では撹拌により硫化水素濃度が急上昇する危険性あり
  • 栃木県内でも令和5年以降に硫化水素中毒による労働災害が2件発生
  • 濃度測定、換気、保護具の使用、特別教育、監視体制など8つの対策を提示
  • マンホールやタンク内だけでなく屋外作業でも発生例がある
  • 企業の採用担当者にも安全配慮義務が求められる状況に

⇒ 詳しくは栃木労働局のWEBサイトへ

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