労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 令和7年8月 兵庫県の有効求人倍率0.95倍 採用市場が示す新たな局面

2025年10月30日

労務・人事ニュース

令和7年8月 兵庫県の有効求人倍率0.95倍 採用市場が示す新たな局面

Sponsored by 求人ボックス

一般職業紹介状況(令和7年8月分)(兵庫労働局)


この記事の概要

令和7年8月、兵庫県の有効求人倍率(季節調整値)は0.95倍となり、前月から0.02ポイント低下しました。求人数の減少と求職者の増加が続いており、労働需給は引き締まりからやや緩和へと移行しています。県内の雇用は総じて安定しているものの、地域や産業によって回復度合いに差が見られ、企業の採用活動にはより戦略的な対応が求められています。本稿では、兵庫労働局発表データをもとに、採用担当者が今後どのように採用戦略を見直すべきかを詳しく解説します。


令和7年8月の兵庫県における有効求人倍率は0.95倍で、前月比0.02ポイントの低下となりました。全国平均の1.20倍を下回り、近畿圏内では相対的に求人需要の落ち込みが見られます。有効求人数は77,102人で前月比1.9%減、有効求職者数は81,123人で前月比0.5%増と、求職者が増え求人が減るという需給の転換が鮮明になっています。新規求人倍率も1.69倍と前月比0.04ポイント下がり、4か月連続の低下です。企業側の採用意欲は引き続きあるものの、物価上昇や人件費増加の影響で新規採用を慎重に見直す動きが広がっています。

地域別にみると、兵庫県内では神戸地域が0.95倍、阪神地域が0.75倍、東播磨地域が1.09倍、西播磨地域が1.41倍、但馬地域が0.84倍、丹波地域が0.75倍、淡路地域が1.71倍と、地域ごとの格差が明確になっています。淡路地域や西播磨地域では観光業・製造業・物流関連の需要が強く、比較的高い求人倍率を維持していますが、都市部では求職者数が増え、倍率が1倍を下回る地域が多く見られます。特に神戸市や阪神間では求職が求人を上回り、採用競争がやや落ち着いた一方で、企業にとっては人材の「選定力」が問われる局面に入っています。

業種別では、建設業が前年同月比1.2%増と持ち直しの兆しを見せたものの、製造業は2.7%減、卸売・小売業は24.8%減、宿泊・飲食サービス業は23.6%減と大幅な落ち込みを記録しました。特に小売業と外食産業では消費動向の鈍化が影響し、人件費抑制の動きが広がっています。医療・福祉分野の求人は前年同月比7.2%減と18か月連続の減少となり、介護職などの人材不足は依然深刻ですが、採用活動が長期化する傾向が顕著です。

一方で、情報通信業は前年同月比58.2%増と急伸しました。デジタル化やクラウドサービスの需要拡大を背景に、ITエンジニアやシステム開発関連の求人が増加しています。これは、県内企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる動きを反映しており、今後も持続的な求人増加が見込まれます。

新規求職者は15,859人で前月比3.8%増加しました。在職中の転職希望者が一定数見られるほか、定年退職後の再就職希望者も増加傾向にあります。特に55歳以上の再雇用希望者が増えており、企業がシニア層を戦力として活用する動きが広がっています。この層は即戦力として現場の安定化に寄与する一方で、働き方の柔軟性や待遇面での配慮が不可欠です。

正社員の有効求人倍率は0.77倍で前年同月比0.03ポイント低下しました。非正規雇用を含めた全体求人倍率が0.95倍であることを踏まえると、正社員採用の難易度は依然高く、安定した雇用条件を提示できる企業ほど採用優位に立っています。特に製造業や建設業など体力を要する現場では若年層の採用が進みにくく、企業は教育・研修制度を充実させて育成前提での採用に舵を切る必要があります。

業界別の詳細を見ると、運輸・郵便業は6.3%減、不動産業は12.0%減、生活関連サービス業は10.5%減と、物流・サービス関連職の減少が目立ちます。物流分野では人手不足が慢性化しており、採用難が続く一方、給与水準や待遇改善を打ち出す企業も増えています。宿泊業では特に人材流動性が高く、観光需要回復に対応できる人材確保が課題です。

地域経済の視点から見ると、兵庫県の雇用市場は大都市圏に隣接していることから、京都や大阪への人材流出が続いています。兵庫県内企業は、地元で働くメリットを打ち出す採用戦略が求められています。たとえば、ワークライフバランスの充実、通勤負担の軽減、地域密着型の働き方など、地元企業ならではの魅力を訴求することが効果的です。また、地方自治体や大学との連携によるインターンシップ制度の強化は、若年層採用の鍵を握るでしょう。

採用活動を進める上で、企業は「数」ではなく「質」に焦点を移す必要があります。求人倍率が1倍を切るということは、求職者が増え選択肢が広がっている一方で、企業にとっては応募者をより慎重に見極める機会でもあります。採用担当者は応募者のスキルや価値観の適合性を重視し、ミスマッチを防ぐ採用手法を強化することが求められます。そのためには、採用面接や適性検査の精度向上に加え、入社後のキャリア支援やメンター制度など、組織全体での人材定着施策が重要です。

また、求人情報の発信方法にも変化が求められます。若年層は求人票よりもSNSや動画を通じて企業を判断する傾向が強いため、デジタル媒体を活用したブランディング戦略が必要です。ハローワークインターネットサービスのオンライン登録や自主応募が拡充されたことで、求人の透明性が高まり、企業間の比較が容易になっています。このような環境下では、自社の強みを明確に表現し、求職者の信頼を得る情報発信が不可欠です。

さらに、今後の採用活動では「柔軟性」が最大のキーワードとなります。リモートワークの導入、時短勤務制度の拡充、副業容認といった多様な働き方の提案が、採用競争における差別化要因となるでしょう。兵庫県は神戸や尼崎を中心に中小企業が多数集積する地域であり、各企業が独自の働き方を設計することで、県外大手企業との差別化が図れます。

総じて、令和7年8月の兵庫県の有効求人倍率0.95倍という数字は、採用市場の過渡期を示しています。企業は今こそ採用活動を“攻め”から“整える”段階へ移行し、長期的な人材確保と定着を見据えた戦略を立てるべきです。求人倍率の低下はマイナスではなく、むしろ採用基盤を再構築する好機と捉え、データに基づいた的確な判断が求められます。

この記事の要点

  • 令和7年8月の兵庫県有効求人倍率は0.95倍で前月比0.02ポイント低下
  • 有効求人数は77,102人、求職者は81,123人で求人減少・求職増加
  • 新規求人倍率1.69倍で4か月連続低下、採用意欲は慎重化
  • 建設・情報通信業で求人増、製造・小売・飲食業は減少
  • 地域別で淡路・西播磨は高倍率、神戸・阪神は1倍未満
  • 採用活動は量から質へ転換し、柔軟な雇用設計が重要

⇒ 詳しくは兵庫労働局のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ
パコラ通販ライフ
PR記事作成サービス受付フォーム