2025年11月6日
労務・人事ニュース
賃金改定で最重視されたのは「企業の業績」41.7%、労働力確保17.0%が続く(2025年)
- 施設内での訪問看護業務/車通勤可/即日勤務可/シフト
最終更新: 2025年11月6日 00:34
- 精神科の訪問看護業務/高時給/即日勤務可/シフト
最終更新: 2025年11月6日 00:34
- 施設内訪問看護のお仕事/看護師/残業なし/即日勤務可/シフト
最終更新: 2025年11月6日 00:34
- 注目の在宅医療未経験者も歓迎しております/車通勤可/残業なし/即日勤務可
最終更新: 2025年11月6日 00:34
賃金引上げ等の実態に関する調査:結果の概要 賃金の改定事情(厚労省)
この記事の概要
厚生労働省が2025年に実施した「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、企業の業況を「良い」と回答した企業は全体の35.3%、「さほど良くない」が51.2%、「悪い」が13.1%であった。賃金改定の決定要因として最も多かったのは「企業の業績」で41.7%を占め、次いで「労働力の確保・定着」(17.0%)、「雇用の維持」(11.9%)が続いた。物価上昇や原材料費の高騰を受け、企業規模によって経営環境に差が見られる結果となった。
厚生労働省は2025年、「賃金引上げ等の実態に関する調査」の一環として、企業の経営状況と賃金改定の判断要因を分析した結果を公表した。調査対象は、常用労働者100人以上を雇用する民間企業であり、7月から8月にかけて実施された。今回の結果は、賃上げが広がる中で、企業がどのような経営判断に基づいて賃金改定を行っているのかを明らかにするものである。
調査によると、2025年8月1日時点の企業活動に関して、「業況が良い」と回答した企業は全体の35.3%にとどまった。「さほど良くない」とした企業が51.2%と半数を超え、「悪い」とした企業は13.1%であった。企業規模別にみると、大企業ほど「良い」と回答する割合が高く、5,000人以上の企業では53.0%が業況を良好と評価している。一方、従業員100〜299人規模の中小企業では「悪い」と回答した割合が15.5%に達しており、規模による景況感の差が顕著に表れている。
また、「原材料費・経費」については、すべての企業規模で「増加」と回答した企業が7割を超えており、物価上昇によるコスト負担が依然として企業経営を圧迫している状況が浮き彫りになった。特に製造業では82.9%が「原材料費が増加した」と回答し、コスト高が利益圧迫要因となっていることがうかがえる。
次に、賃金改定を行った、または予定しており改定額も決定している企業に対し、「賃金改定を決める際に最も重視した要素」を尋ねた結果、「企業の業績」と回答した企業が41.7%で最も多かった。前年の35.2%から大きく上昇しており、賃上げの背景に企業収益の改善が関係していることがわかる。続いて「労働力の確保・定着」が17.0%、「雇用の維持」が11.9%と続き、人材確保と安定雇用が経営上の重要課題として認識されていることが示された。
一方、「消費者物価の動向」を重視した企業は3.3%にとどまり、物価上昇によるコスト転嫁よりも、企業の内部事情を反映した賃金改定が主流であることが明らかになった。また、「労使関係の安定」を重視する企業は0.6%、「親会社やグループ会社の改定動向」は5.9%、「最低賃金の改定」は3.2%、「行政からの支援(減税・補助・助成)」を挙げた企業はわずか0.1%と低水準だった。これらの結果から、企業の賃金決定は政府施策よりも自社の業績や人事戦略に基づいて行われていることがうかがえる。
企業規模別にみると、すべての規模で「企業の業績」を最重視する傾向は共通している。特に5,000人以上の大企業では63.8%が業績を重視しており、収益改善に応じた賃上げが進んでいる。一方、100~299人規模の中小企業では44.4%が業績を重視しつつも、「労働力の確保・定着」(17.1%)や「雇用の維持」(13.3%)といった要素を重視する傾向が強く、人材不足への対応が中小企業経営の焦点となっていることがわかる。
産業別に見ると、製造業では業績を重視する割合が高く、非製造業では人材確保を優先する傾向が強い。サービス業では特に「労働力の確保・定着」が上位に挙がり、採用難が続く中で人材流出を防ぐために賃金を引き上げる企業が増加している。宿泊・飲食業などの人手不足業種では、賃金改定の主目的が「人材定着」となっているケースが多い。
また、原材料費や人件費の上昇を背景に、「コスト増を価格転嫁できていない」と回答した企業も多く、特に中小企業では厳しい経営環境が続く。製造業や小売業では「販売価格が横ばい」との回答が半数を超えており、利益率の確保が課題となっている。
今回の調査結果は、企業が単に外部要因に依存するのではなく、自社の経営努力や人材戦略に基づいて賃金改定を進めていることを示している。賃金の引き上げは、業績好転による分配だけでなく、人材確保・定着のための戦略的な経営判断として定着しており、これが賃上げの継続を支えているといえる。
政府が推進する「構造的な賃上げ」の実現には、こうした企業努力を支える政策的支援が不可欠である。特に中小企業の生産性向上や価格転嫁支援、労働環境の改善が今後の焦点となるだろう。
この記事の要点
- 業況が「良い」と回答した企業は35.3%、「悪い」は13.1%
- 原材料費・経費が増加した企業は全体の7割超
- 賃金改定で最も重視された要素は「企業の業績」(41.7%)
- 「労働力の確保・定着」(17.0%)、「雇用の維持」(11.9%)が続く
- 労使関係や行政支援を重視する企業はごく少数
- 大企業は業績重視型、中小企業は人材確保重視型の傾向
- 賃上げが経営戦略の一部として定着しつつある
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ


