2025年12月6日
労務・人事ニュース
2025年10月先行き 東北、物価高と人件費上昇が採用意欲を圧迫
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最終更新: 2025年12月5日 09:34
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最終更新: 2025年12月5日 21:00
景気ウォッチャー調査(令和7年10月調査)― 東北(先行き)―(内閣府)
この記事の概要
令和7年10月に実施された東北地方の景気ウォッチャー調査では、新政権の経済対策への期待感が広がる一方で、物価上昇や人手不足の長期化、企業の採用意欲の鈍化が経済回復の重しとなっていることが明らかになった。職業安定所によると新規求人数と有効求人数はともに前年を上回ったが、最低賃金の引き上げに対する企業の慎重姿勢や人件費の上昇が採用活動を抑制している。中小企業では求人を控える傾向が見られ、求人情報誌制作会社からも「利益確保が難しく、募集を止める企業が増えている」との報告があり、雇用環境の改善には時間を要するとみられる。
令和7年10月の東北経済は、年末商戦や観光需要の回復が期待される中で、新政権による積極財政政策への期待感が強まりつつあった。鉄道会社のキャンペーンやイベントの再開により観光名所や宿泊施設では先行予約が前年を上回り、特に都市型ホテルでは雪のシーズンに向けたインバウンド予約が好調に推移している。観光関連産業では年末年始に向けた宴会需要の回復や冬季観光の盛り上がりが見込まれ、景気に対する期待感が高まっている。
小売業や外食業でも年末に向けた需要拡大が見込まれているが、物価高による消費者の節約志向が依然として強く、実質賃金の低下が個人消費の回復を鈍らせている。スーパーでは来客数が増加傾向にあるものの、客単価上昇の主因が価格改定であるため、実質的な購買意欲の改善とは言い難い。商店街や小売業界では「株価は上がっているが購買行動は変わらない」との声が多く、家計防衛意識の強さが地域経済の回復を遅らせている。
百貨店業界でも物価上昇の影響が続いており、衣料品や贈答品の販売が鈍化している。特に冬物衣料の販売は気温変動の影響を受けやすく、秋物商戦の出遅れもあり在庫調整が課題となっている。飲食業では宴会需要が徐々に戻りつつあるが、原材料費の上昇と人件費負担の増大が経営を圧迫しており、採算の改善には至っていない。
製造業では、通信機器関連の受注増や輸送用機械器具製造業における一部の取引先拡大が明るい材料となっているが、建設業や土木業では資材価格の高騰が続き、採算確保が難しい状況が続いている。特に窯業・土石製品製造業では公共事業・民間事業の双方で受注が減少しており、「冬を迎えて一層厳しくなる」との見方が多い。
金融機関や経済団体の見立てでは、エネルギー価格の上昇が物価高をさらに押し上げ、円安による輸入コスト増加が中小企業の経営を直撃している。人件費や原材料費の上昇を価格転嫁できない企業が多く、収益悪化が続く中で「人員を確保しても利益を維持できない」との声が広がっている。最低賃金引上げに伴い労働分配率が高まる一方、求人を控える中小企業が増加しており、採用コストの上昇が経営の足かせとなっている。
雇用情勢に目を向けると、職業安定所による調査では新規求人数と有効求人数がともに前年を上回ったが、業種間の格差が広がっている。観光・サービス業などでは求人が増加しているものの、製造業や建設業では受注減少を背景に求人を控える動きが見られる。求人情報誌制作会社によれば、「人員は必要だが賃上げコストを吸収できず、募集を見送る企業が増加している」との指摘があり、地域経済の構造的な課題が浮き彫りとなっている。
人材派遣会社からは「求職者の登録数は増加傾向にあるが、企業ニーズとのミスマッチが解消されていない」との報告があり、特に大手志向が強い若年層では中小企業の求人に対する応募が少ない。求職者の希望条件が多様化している中、企業の対応が追いついておらず、採用活動の長期化が続いている。最低賃金の上昇により企業が採用を見送る動きもあり、求人市場全体では停滞感が漂っている。
地域の職業安定所では、物価上昇が購買意欲を抑制していることを懸念する声が多く、「賃上げが行われても物価上昇が上回る状況では消費は活性化しない」との見解が示されている。さらに、製造業の一部では生産拠点の再編が進み、2026年末までに工場の規模縮小を予定する企業もあり、地域雇用への影響が懸念される。
総じて、東北地方の経済は年末にかけて観光や季節商戦による一時的な明るさが見られるものの、物価高や人件費上昇、企業の採用余力低下が持続的な成長を阻んでいる。求人は増加傾向にあるが、企業側の慎重な採用姿勢が続いており、有効求人倍率の上昇には時間がかかる見通しである。
この記事の要点
- 新規求人数と有効求人数が前年を上回るも採用活動は停滞
- 最低賃金引上げによる人件費負担で中小企業が求人を抑制
- 観光・サービス業では好調も製造・建設業は受注減少
- 物価高と円安で中小企業の収益悪化が続く
- 求職者の大手志向が強くミスマッチが拡大
- 雇用回復には時間を要し求人市場は停滞感
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ


