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2026年4月28日

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2025年改正で6か月に短縮されたイギリス制度と2017年フランス一覧表導入を分析

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諸外国における解雇の金銭解決をめぐる制度構造・運用実態・政策評価(JILPT)

2026年3月27日、ドイツ、フランス、イギリスの3か国における解雇の金銭解決制度を比較分析した調査研究の結果が公表された。本研究は、文献調査と有識者へのヒアリングを通じて、制度の法的構造だけでなく、実務上の運用や政策的評価までを多角的に明らかにした点に特徴がある。

調査ではまず、ドイツにおける制度の基本構造として、不当解雇に対しては原則として解雇が無効とされ、労働関係の継続が重視されていることが確認された。常時11人以上を雇用する事業所で、勤続6か月を超える労働者に対する解雇には社会的正当性が求められ、これを欠く場合は法的に無効とされる枠組みが採られている。

その一方で、例外的に金銭解決を認める制度も存在している。裁判所が関係の破綻を認めた場合に補償金の支払いと引き換えに契約を終了させる仕組みや、2003年改正で導入された補償金制度があるものの、実務ではほとんど利用されていない実態が明らかとなった。

実際の紛争解決では、労働裁判所における和解が中心となっている。多くのケースで、勤続年数と月収に0.5を掛け合わせた算定式を基準に補償額が決められており、裁判手続の中で金銭解決が事実上の主流となっている。この運用は有識者から一定の評価を受ける一方、雇用維持の原則をより強化すべきとの指摘も見られた。

次にフランスでは、解雇に際して補償金の支払いが原則として義務付けられており、さらに解雇理由が「現実かつ重大な事由」であることが求められる。勤続8か月以上の労働者が対象となり、正当性を欠く解雇には補償が伴う仕組みが整備されている。

不当解雇と判断された場合、法制度上は復職の可能性も用意されているが、当事者双方の同意が必要となるため実現例は少なく、実際には補償金の支払いによる解決が一般的となっている。こうした実態は、制度設計と運用の乖離を示すものとして注目される。

さらに2017年には、補償額の上限と下限を勤続年数に応じて定める一覧表が導入された。この改正により金額の予測可能性は向上したと評価される一方で、適用対象外となる訴訟の増加や、勤続年数の短い労働者が提訴を控える動きなど、新たな課題も指摘されている。

また、裁判前の和解が増加している点も特徴として挙げられる。補償額の見通しが立てやすくなったことで交渉が進みやすくなり、結果として紛争の早期解決につながっている。加えて2008年以降に制度化された合意解約も利用が拡大しており、裁判に至らない解決手段として機能している。

イギリスについては、伝統的に解雇自由の原則が採られてきたが、現在では一定の条件下で不公正解雇が規制されている。従来は2年以上の勤続が必要とされていたが、2025年の制度改正により6か月へと短縮され、保護対象が広がっている。

不公正解雇と判断された場合、原職復帰や再雇用も制度上は可能とされるが、実務では金銭補償が中心となっている。補償は基本額と追加的な補償額に分かれて算定され、それぞれに上限が設けられている点が特徴とされる。

ただし、補償額は将来の収入減少の見込みなどを踏まえて個別に判断されるため、金額の予測が難しいとされる。この不確実性が、裁判外での和解を促進する要因となっているとの指摘もあり、紛争解決のあり方に影響を与えている。

さらに、調停手続の活用が制度的に組み込まれており、訴訟前に和解を試みる仕組みが整備されている。これにより、裁判に至る前の段階での解決が広く行われている点も特徴的である。

今回の調査では、3か国いずれにおいても制度上は復職が想定されているにもかかわらず、実務では金銭解決が主流となっている共通点が浮き彫りとなった。一方で、その制度設計や補償額の算定方法、予測可能性の程度には国ごとに違いが見られ、各国の労働市場や法文化を反映した多様な姿が示されている。

本研究の成果は、2025年11月18日に開催された第205回の審議の場でも報告されており、今後の制度設計に向けた基礎資料としての活用が期待されている。働き方の多様化が進む中で、解雇をめぐるルールのあり方は重要な政策課題となっており、今回の知見が今後の議論に与える影響が注目される。

⇒ 詳しくは独立行政法人労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ

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