2026年5月18日
労務・人事ニュース
2026年版白書、賃上げ率5.25%と最低賃金1,000円超の流れの中で問われる中小企業の稼ぐ力
2026年版中小企業白書・小規模企業白書が閣議決定されました(経産省)
政府は2026年4月24日、2026年版の中小企業白書および小規模企業白書を閣議決定した。今回の白書では、経営環境が大きく変化する中で、中小企業が持続的に成長していくためには「稼ぐ力」を高めることが不可欠であるとの認識が示されている。特に、労働生産性の向上や経営基盤の強化に向けた取り組みの重要性が強調された。
今回の分析では、近年の賃上げ動向にも焦点が当てられている。2025年の春季労使交渉では、賃上げ率が約30年ぶりの高水準を維持しており、最低賃金の引き上げも進んでいることが確認された。一方で、中小企業は大企業と比べて賃上げの余力が限られており、継続的な賃上げを実現するための原資確保が大きな課題とされている。
雇用面では、人手不足の深刻化が継続している。2010年代以降、多くの業種で人材不足の傾向が強まり、今後も生産年齢人口の減少に伴い状況は一層厳しくなる見通しとなっている。将来推計では、中小企業の雇用者数は2040年に2018年比で80%台半ばまで減少する可能性が示されており、労働供給の制約が経営に与える影響が懸念されている。
こうした状況の中で、白書は現状維持を続けること自体がリスクであると指摘している。短期的な利益確保にとどまらず、長期的な視点で事業構造や組織の見直しを進める戦略的な経営への転換が求められている。特に、付加価値を生み出す力を高めることで、持続的な賃上げや企業成長を実現する必要があると位置付けられている。
労働生産性の動向については、中小企業全体として一人当たりの労働時間が減少する一方で、付加価値額は増加しており、時間当たりの生産性は上昇傾向にあることが示された。また、大企業と同等の生産性を持つ中小企業も存在しており、適切な取り組みによって規模に関係なく競争力を高められる可能性があると分析されている。
具体的な対応としては、価格転嫁の推進や成長投資による高付加価値化、事業承継や再編による構造改革などが重要とされた。さらに、AIの活用やデジタル化によって業務効率を高め、限られた人材を有効に活用することも不可欠とされている。これらの取り組みを実施している企業は、付加価値の増加や生産性向上といった成果を上げている傾向が確認されている。
小規模事業者に関する分析では、経営者の知識や判断力に関わる経営リテラシーの重要性が示された。財務や人材管理、運営、戦略といった基礎的な能力を備えた事業者は、業績や人材確保の面で優位性を持つ傾向があるとされる。また、限られた経営資源を補うために、他の事業者との連携を進めることが事業の維持や拡大に有効であることも示された。
今回の白書は、賃上げや人手不足といった現実的な課題に直面する中小企業に対し、単なる現状維持ではなく、成長を前提とした経営への転換を促す内容となっている。2026年以降の経済環境を見据え、企業がどのように競争力を高めていくかが、日本経済全体の持続的成長に直結する重要なポイントとなる。
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