2026年6月24日
労務・人事ニュース
2026年4月広島県の有効求人倍率1.38倍が示す採用改革の必要性
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2026年4月広島県の有効求人倍率1.38倍と製造業求人2530人の現状
広島労働局が2026年5月29日に公表した2026年4月分の雇用情勢によると、広島県の有効求人倍率は季節調整値で1.38倍となり、前月の1.37倍から0.01ポイント上昇した。これにより有効求人倍率は3か月ぶりの上昇となった。一方で新規求人倍率は2.39倍となり、前月から0.03ポイント低下し3か月連続の低下となっている。求人が求職を上回る状況は継続しているものの、企業の採用活動には慎重さが見え始めており、県内の雇用市場は転換点を迎えつつある。
広島県の有効求人数は57,896人で前年同月比0.9%増加したのに対し、有効求職者数は41,808人で前年同月比0.2%減少した。求職者1人に対して1.38件の求人がある計算となり、依然として企業側が人材確保で優位に立てない市場環境が続いている。全国平均の有効求人倍率は1.18倍であり、広島県はこれを大きく上回る水準にある。全国順位では9位、中国地方では2位という位置付けであり、人材獲得競争の激しさが数字からも読み取れる。
広島労働局は県内の雇用情勢について、求人が求職を上回って推移しているものの、持ち直しの動きに弱さが見られると分析している。また、物価上昇などが雇用に与える影響に注意が必要としており、企業経営を取り巻く環境の変化が採用市場にも影響を及ぼしていることがうかがえる。
新規求人の状況を見ると、2026年4月の新規求人数は20,338人となり前年同月比1.0%増加した。3か月ぶりの増加ではあるものの、業種によって状況は大きく異なっている。採用担当者にとって重要なのは、県全体の数字だけを見るのではなく、自社が属する業界や地域の実態を正確に把握することだ。
産業別の新規求人動向を見ると、最も注目されるのが製造業である。2026年4月の製造業の新規求人は2,530人となり、前年同月比13.6%増加した。広島県は自動車産業や機械関連産業が集積する地域であり、製造業の採用需要回復は県内経済にも大きな影響を与える。特に輸送用機械器具関連では前年同月比106.0%増加という大幅な伸びが確認されており、生産活動の活発化に伴う人材需要の高まりが見えている。
情報通信業も385人で前年同月比9.4%増加した。デジタル化の進展やDX推進に伴い、IT人材への需要は引き続き高い水準にある。また、学術研究・専門技術サービス業も651人で前年同月比3.0%増加している。専門性の高い職種に対する需要は今後も継続すると考えられ、人材育成やスキル開発への投資が企業の競争力を左右する時代になっている。
一方で減少が目立つ業種も少なくない。卸売業・小売業は3,038人で前年同月比18.9%減少した。サービス業も3,600人で13.0%減少している。宿泊業・飲食サービス業は728人で19.3%減少し、19か月連続の減少となった。生活関連サービス業・娯楽業も770人で30.6%減少している。消費行動の変化や省力化投資の進展、人件費上昇への対応などが背景にあるとみられる。
医療・福祉分野は5,192人と依然として高い求人規模を維持しているものの、前年同月比では3.8%減少した。ただし、高齢化の進展を考慮すると中長期的な人材需要は高い状態が続くと考えられる。介護職や看護職を中心に人材不足が完全に解消される可能性は低く、今後も採用競争は続くだろう。
新規求職者数は8,527人となり前年同月比2.6%増加した。2か月連続の増加となっている。これは企業の採用担当者にとって重要な変化である。ここ数年は求職者そのものが少なく、求人を出しても応募が集まらない状況が続いていた。しかし現在は求職活動を行う人が増え始めているため、採用活動の工夫次第では人材確保の可能性が広がる局面に入っている。
年齢別の新規求職者を見ると、55歳から59歳は前年同月比8.5%増加、60歳から64歳は8.2%増加、65歳以上も5.2%増加している。高年齢層の求職活動が活発化していることが特徴的だ。人口減少が進む中で若年層だけを対象に採用活動を行うことは限界がある。中小企業は経験豊富なシニア人材を積極的に受け入れる体制づくりを進めるべき段階に来ている。
就業状態別に見ると、離職者は11,927人で前年同月比0.9%増加した。事業主都合離職者は2,060人で1.2%減少した一方、自己都合離職者は8,706人で1.7%増加している。これは転職市場が引き続き活発であることを示している。働き方や待遇、キャリア形成への関心が高まる中で、求職者は企業を慎重に選ぶ傾向を強めている。
正社員市場の動向も見逃せない。2026年4月の正社員有効求人倍率は1.16倍となり、前年同月から0.07ポイント低下した。それでも求職者数を上回る求人が存在している状況は変わらない。正社員有効求人数は29,277人で前年同月比6.4%減少したが、有効求職者数も25,132人で1.5%減少している。企業は依然として安定的な人材確保を重視していることがわかる。
ここで中小企業の採用担当者が考えるべきなのは、有効求人倍率1.38倍という数字の意味である。一般的には倍率が高いほど採用が難しいと考えられる。しかし実際には単純な人手不足だけでは説明できない状況になっている。求職者数が増加しているにもかかわらず、多くの企業が採用に苦戦している背景には情報発信不足や応募者との接点不足がある。
求人票だけで企業の魅力を伝える時代は終わりつつある。求職者は企業ホームページや採用サイト、SNSなど複数の情報源を確認しながら応募先を決めている。給与や休日数だけでなく、どのような人が働いているのか、どのようなキャリア形成が可能なのか、どのような企業文化なのかを重視する傾向が強まっている。
中小企業は大企業と同じ条件競争を行う必要はない。むしろ地域密着型企業ならではの魅力を発信することが重要になる。経営者との距離の近さ、意思決定の速さ、幅広い業務経験を積める環境、地域社会への貢献実感などは中小企業ならではの価値である。これらを具体的に伝えることで応募者の関心を高めることができる。
また、職業別の有効求人倍率を見ると、人材不足の深刻さには大きな差がある。建設・採掘従事者は7.26倍、保安職業従事者は6.18倍、輸送・機械運転従事者は2.89倍となっている。専門的・技術的職業従事者も2.16倍で高い水準だ。一方で事務従事者は0.42倍となっており、職種によって採用難易度は大きく異なる。
この結果から、中小企業は即戦力採用だけに依存する採用戦略を見直す必要がある。倍率が高い職種では経験者の奪い合いになりやすく、採用コストも上昇する。そこで未経験者採用や職業訓練との連携、資格取得支援制度の整備など、人材育成を前提とした採用モデルへの転換が重要になる。
地域別に見ると、広島地域計は1.35倍、福山地域計は1.37倍、北部地域計は1.06倍となっている。地域ごとに労働市場の状況は異なるため、自社所在地の特性に応じた採用戦略が求められる。都市部では企業間競争への対応が必要であり、地方部では地域定着を重視した採用活動が重要になる。
2026年4月の広島県の有効求人倍率1.38倍は、表面的には人材不足の継続を示している。しかし数字を詳しく見ると、求職者は増加し、業種によって求人動向に差が生まれ、転職市場も活発化している。つまり採用市場は単純な売り手市場から、企業の魅力発信力や採用力が結果を左右する市場へと変化しているのである。
中小企業の採用担当者は、有効求人倍率の高さだけを理由に採用難を嘆くのではなく、求職者が何を求めているのかを理解し、自社の強みを明確に伝える努力を続ける必要がある。採用活動を単なる人員補充ではなく企業成長を支える経営戦略として位置付けることで、厳しい採用環境の中でも優秀な人材との出会いを実現できる可能性は十分にある。広島県の雇用市場は今まさに新たな局面に入りつつあり、その変化を正しく捉えた企業が今後の人材確保競争をリードしていくことになるだろう。
⇒ 詳しくは広島労働局のWEBサイトへ


