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2025年9月8日

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令和7年度 最低賃金1,121円時代へ突入、地域別最低賃金、全都道府県で63円以上の引き上げが実現

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全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました(厚労省)


この記事の概要

令和7年度の地域別最低賃金の改定額が全国の都道府県で出そろいました。厚生労働省が発表した今回の2025年最低賃金答申では、全国加重平均額が1,121円となり、前年度から66円の引き上げが行われました。これは目安制度が始まって以降で最大の引き上げ幅となります。最低額と最高額の差も縮小傾向にあり、地域間格差の是正にもつながる重要な改定です。


令和7年9月5日、厚生労働省は全国47都道府県における地域別最低賃金の改定額について、各地方最低賃金審議会が取りまとめた答申内容を公表しました。これにより、全国すべての地域で新たな最低賃金額の答申が完了したことになります。今回の発表によると、2025年最低賃金改定後の全国加重平均額は1,121円となり、前年から66円の大幅な引き上げが行われました。この引き上げ額は、昭和53年度に地域別最低賃金の目安制度が始まって以来、最大の伸び幅となっており、歴史的な改定として注目を集めています。

今回の改定にあたっては、令和7年8月4日に中央最低賃金審議会が示した目安額をもとに、各地方審議会が調査と審議を行い、地域の実情に応じた金額が決定されました。答申された改定額は、労使双方からの異議申出を受け付ける手続を経たうえで、正式に都道府県労働局長が決定し、令和7年10月1日から令和8年3月31日までの間に順次発効される予定です。

具体的な引き上げ額を見ると、47都道府県すべてで63円から82円の幅で引き上げが行われています。中でも82円の引き上げが行われた県が1県、81円が1県、80円が1県となっており、いずれも高水準の改定です。一方、最も低い引き上げ幅となったのは63円で、これは8都府県で適用される予定です。都道府県ごとの詳細な金額については、各地域の労働局賃金課・室への問い合わせが推奨されています。

改定後の地域別最低賃金の最高額は1,226円、最低額は1,023円となっており、この差は203円です。これにより、最高額に対する最低額の比率は83.4%となり、前年の81.8%から改善されました。この比率の上昇は11年連続で続いており、地域間の賃金格差の是正が着実に進んでいることが分かります。時給引き上げが全国的に底上げされることで、働く人々の生活の安定はもちろん、地方経済の活性化にもつながることが期待されています。

今回の引き上げは、物価上昇や人手不足といった社会経済的背景を受けたものでもあり、最低賃金の見直しがより現実に即したものとなっている点が特徴です。企業側にとっては人件費の増加が避けられない課題となる一方で、採用力の強化や従業員の定着率向上につながる可能性もあるため、戦略的な対応が求められます。特に、最低賃金に近い水準で雇用を行っている中小企業にとっては、今回の改定が経営戦略に与える影響は少なくありません。

採用担当者にとって重要なのは、改定額が施行される令和7年10月1日以降に向けて、求人条件や給与体系の見直しを早急に行うことです。新卒採用やアルバイト・パートの募集においても、最低賃金を下回る条件での求人は法令違反となるため、事前の確認と対策が不可欠です。また、賃金引き上げを契機として、従業員の職場定着やモチベーション向上につなげる工夫も必要です。これにより、企業全体の生産性向上やサービス品質の改善にも結び付けることが可能になります。

今回の最低賃金改定は、単なる数字の見直しにとどまらず、日本社会全体の労働環境の質を引き上げる重要な取り組みとして位置づけられます。すべての労働者が適正な賃金で安心して働ける環境を整えることは、持続可能な経済成長に向けた基盤を築く意味でも重要です。今後は、企業・労働者・行政が連携しながら、新たな賃金水準に適応した働き方や職場環境づくりを進めていくことが求められます。

この記事の要点

  • 令和7年度の最低賃金全国加重平均額は1,121円
  • 前年からの引き上げ幅は66円で過去最大
  • 最低賃金の最高額は1,226円、最低額は1,023円
  • 最低額の地域は最高額の83.4%まで改善
  • 引き上げ幅は全国で63円〜82円の範囲
  • 令和7年10月1日から令和8年3月31日まで順次発効予定
  • 採用担当者は給与体系の見直しが急務
  • 中小企業には戦略的な人件費対応が求められる

令和7年度 地域別最低賃金 答申状況

都道府県名ランク目安額令和7年度令和6年度引上げ額【円】目安差額発効日(予定)
北海道B631075101065+22025年 10月4日
青森C64102995376+122025年 11月21日
岩手C64103195279+152025年 12月1日
宮城B63103897365+22025年 10月4日
秋田C64103195180+162026年 3月31日
山形C64103295577+132025年 12月23日
福島B63103395578+152026年 1月1日
茨城B631074100569+62025年 10月12日
栃木B631068100464+12025年 10月1日
群馬B63106398578+152026年 3月1日
埼玉A631141107863±02025年 11月1日
千葉A631140107664+12025年 10月3日
東京A631226116363±02025年 10月3日
神奈川A631225116263±02025年 10月4日
新潟B63105098565+22025年 10月2日
富山B63106299864+12025年 10月12日
石川B63105498470+72025年 10月8日
福井B63105398469+62025年 10月8日
山梨B63105298864+12025年 12月1日
長野B63106199863±02025年 10月3日
岐阜B631065100164+12025年 10月18日
静岡B631097103463±02025年 11月1日
愛知A631140107763±02025年 10月18日
三重B631087102364+12025年 11月21日
滋賀B631080101763±02025年 10月5日
京都B631122105864+12025年 11月21日
大阪A631177111463±02025年 10月16日
兵庫B631116105264+12025年 10月4日
奈良B63105198665+22025年 11月16日
和歌山B63104598065+22025年 11月1日
鳥取C64103095773+92025年 10月4日
島根B63103396271+82025年 11月17日
岡山B63104798265+22025年 12月1日
広島B631085102065+22025年 11月1日
山口B63104397964+12025年 10月16日
徳島B63104698066+32026年 1月1日
香川B63103697066+32025年 10月18日
愛媛B63103395677+142025年 12月1日
高知C64102395271+72025年 12月1日
福岡B63105799265+22025年 11月16日
佐賀C64103095674+102025年 11月21日
長崎C64103195378+142025年 12月1日
熊本C64103495282+182026年 1月1日
大分C64103595481+172026年 1月1日
宮崎C64102395271+72025年 11月16日
鹿児島C64102695373+92025年 11月1日
沖縄C64102395271+72025年 12月1日
全国加重平均11211055663

※上記表は厚生労働省、(別紙)令和7年度地域別最低賃金額答申状況を参考に作成
※発効日は、答申公示後の異議の申出の状況等により変更となる可能性有
※上記のExcelデータはこちら

令和7年度最低賃金1,121円へ過去最大66円引き上げ 働く人と企業に広がる影響を徹底解説

令和7年度の最低賃金引き上げは、単なる数字の変化にとどまらず、働く人や企業に大きな影響を与えるものです。今回の全国加重平均額1,121円という水準は過去最大の上げ幅であり、労働者にとっては賃金の底上げによる生活の安定が期待されます。しかし一方で、企業側には人件費増加という現実的な課題が突きつけられます。読者にとって大切なのは、この変化が自身の働き方や採用環境、日常生活にどのようにつながるのかを具体的に理解することです。

まず、アルバイトやパートで働く人にとっては、賃金が確実に引き上げられることが大きな安心材料になります。特に学生や主婦層は、これまで時給1,000円前後で働いていた地域でも1,050円以上に改善されることが多く、月に数万円単位で手取りが増える可能性があります。物価上昇によって食費や光熱費が重くのしかかる中、この引き上げは家計の支えとして実感されやすいものになるでしょう。

新卒や中途採用を控える求職者にとっても、この改定は大きな意味を持ちます。最低賃金の水準が上がると、求人票に記載される給与額の下限も自然と底上げされ、就職活動の選択肢が広がります。例えばこれまで時給1,000円で提示されていた職種が1,100円を超える水準に修正されるケースが増え、条件面で不利な状況が改善される可能性があります。これは若年層の雇用安定や労働市場での交渉力向上につながる動きでもあります。

一方で、中小企業にとっては人件費の増加が避けられず、経営に直結する課題として捉えられます。特に飲食業や小売業など、最低賃金に近い水準で雇用している企業では、給与計算や人員配置の見直しが急務となります。人件費負担をどう吸収するかは業績に直結するため、価格転嫁や業務効率化といった工夫が求められるでしょう。ただし、賃金を引き上げることで従業員の定着率やモチベーションが向上し、結果的に採用コストの削減やサービス品質の向上につながる可能性もあります。この点を前向きに捉え、戦略的に対応する企業が今後の競争力を高めると考えられます。

地域ごとの視点で見れば、賃金水準が上昇することは地方経済にも波及効果をもたらします。これまで都市部との格差が大きかった地域でも、最低賃金が1,020円を超える水準にまで達することで、消費意欲の拡大や地域内でのお金の循環が期待されます。格差是正が進むことは、地方で働く選択を後押しする要因となり、人口流出の抑制にもつながる可能性があります。

今回の改定はまた、雇用契約や求人票の見直しという実務的な対応を採用担当者に迫ります。早ければ令和7年10月1日以降は、最低賃金を下回る条件での雇用契約は法令違反(各地域の発効日以降)となるため、求人票を再確認することは必須です。企業が誤って低い金額を掲載した場合、法令違反だけでなく企業イメージの低下にも直結しかねません。採用活動において信頼を維持するためには、正確な情報発信と透明性の確保が欠かせないといえるでしょう。

読者一人ひとりにとって大切なのは、この賃金改定が自分の働き方や暮らしにどう影響するかを考えることです。パートタイマーであれば月の収入の増加が生活費にどのように充てられるのか、新卒であれば初任給の改善がどのような職場選びにつながるのか、中小企業の経営者であれば人件費の増加をどう前向きに転換できるのか。最低賃金の数字は単なる統計ではなく、日々の働き方や暮らしに直結する現実であることを忘れてはなりません。

今回の最低賃金引き上げは「働く人の生活改善」「企業の採用力と経営課題」「地域経済の活性化」という複数の視点で影響を及ぼします。読者が自分の立場に置き換えて理解することで、意味がより鮮明になり、今後の行動や判断に役立つ情報として活かすことができるのです。

最低賃金は10年で323円上昇 令和7年度1,121円への改定と過去最大66円引き上げの意味

令和7年度(2025年度)の地域別最低賃金は、全国加重平均額が1時間あたり1,121円となり、前年(令和6年度)の1,055円から66円の大幅な引き上げが行われました。この66円という上昇幅は、厚生労働省が示した目安制度(1978年度以降)においても最大の引き上げ額となります(厚生労働省報道発表資料)。

それでは、ここ10年間の全国加重平均額の推移を振り返ってみましょう。平成27年度(2015年)は798円、令和元年度(2019年)は901円、令和3年度(2021年)は930円、令和4年度(2022年)は961円、令和5年度(2023年)は1,004円、令和6年度(2024年)は1,055円。そして令和7年度(2025年)は1,121円と、10年で約323円、増加率にして約40%の上昇を達成しています。これらの数値は厚労省公表のPDF資料で確認できます(厚生労働省「地域別最低賃金の全国加重平均額と引上げ率の推移」

さらに、この長期的なトレンドは、労働政策研究・研修機構(JILPT)のグラフ資料にも表れており、1975年度から2024年度まで全国加重平均額が着実に上昇していることが視覚的にも理解できます(JILPT「図3 最低賃金(地域別最低賃金 全国加重平均額)1975年度〜2024年度」。

このように、過去数十年にわたって最低賃金は確実に上昇しており、令和7年度における最大幅の引き上げも、その延長線上にあるものといえます。

地域間格差にも改善の兆しがあります。令和7年度の最低額は沖縄など複数の県で1,023円、最高は東京で1,226円。最低額が最高額に対して83.4%の水準にあり、前年の81.8%から改善しています。この11年連続の格差縮小は、厚労省の答申状況資料から確認できます(厚労省「令和7年度地域別最低賃金の答申状況」

そして、このような最低賃金の引き上げは、実際の求人情勢にも影響を及ぼしています。内閣府の分析によれば、応募や求人票に掲示されるパート・アルバイトの募集時給には、最低賃金の引き上げ分の約4割が2か月後に、約6割が半年後までに反映されているとされています。とくに2024年度の大幅引き上げ時には、半年後までに66%以上が反映されたというデータもあります(内閣府「最低賃金引上げの影響」

この長期的な推移を踏まえると、最低賃金は単なる年度ごとの法改定や政策調整ではなく、生活基盤の安定や経営資源の配分、地域間格差の是正といった社会的な課題に対応する政策の一環として進化していることが感じられます。

読者にとって重要なのは、この数字の変化がご自身の暮らしや働き方、会社の採用活動や経営戦略にどのように影響を与えるか、という点です。例えば、アルバイトとして月160時間働く方であれば、時給が300円上がれば月収は48,000円増、年間では約60万円の収入増。これは生活の安定に直結し、消費・貯蓄行動にも余裕をもたらすものです。一方、中小企業の経営者にとっては人件費の上昇という負担が避けられませんが、最低賃金引き上げをきっかけに採用力や従業員定着率の改善、企業イメージ向上などのメリットも期待できます。

このように、令和7年度の地域別最低賃金改定は、長期的トレンドの一端を成し、制度としての成熟と地域経済・社会への波及効果を示す大きな節目となる内容です。数字の裏側にある「誰の生活にどうつながるのか」を意識することが大切だといえます。

令和7年度最低賃金一覧 東京1,226円から沖縄1,023円まで地域別水準を徹底解説

令和7年度の地域別最低賃金の改定は、全国すべての都道府県で引き上げが行われ、加重平均額は1,121円となりました。中でも東京の最低賃金は1,226円となり、全国で最も高い水準に位置しています。東京都とほぼ同水準の神奈川県も1,225円で推移しており、首都圏は高水準の賃金体系が維持されることが明確になりました。こうした大都市圏の動きは、採用活動における人材確保競争をさらに加速させる要因となり、求人票においても給与条件の見直しを迫られる企業が増えると予想されます。

一方で、青森県や秋田県、沖縄県などの地域では最低賃金が1,030円前後に設定されています。具体的には、青森県が1,029円、秋田県が1,031円、沖縄県は1,023円と、全国の中でも比較的低い水準にとどまっています。しかし、それでも前年から70円以上の引き上げが実現しており、過去と比較しても大幅な上昇です。地域間の差は依然として残るものの、格差は年々縮小しており、最低額と最高額の比率は83.4%まで改善されました。これは、地方に暮らす人々の生活を下支えする効果を持ち、都市部との不均衡を少しずつ埋める流れを示しています。

関西地方に目を向けると、大阪府の最低賃金は1,177円となり、前年の1,114円から63円の上昇となりました。京都府は1,122円、兵庫県は1,116円であり、首都圏に次ぐ高水準の地域が関西圏で形成されています。とくに大阪府は全国で3番目に高い位置にあり、製造業やサービス業を中心とする地域経済に大きな影響を与えると考えられます。

東海地方では、愛知県の最低賃金が1,140円と高く、静岡県の1,097円、岐阜県の1,065円と続きます。愛知県は製造業の集積地としても知られており、高い賃金水準は人材確保において強みとなりますが、中小企業にとっては人件費負担の増加という課題も同時に生じます。

北陸地方では、新潟県が1,050円、富山県が1,062円、石川県が1,054円、福井県が1,053円と、いずれも1,050円前後の水準で横並びとなりました。地域特性に応じた改定がなされていることがわかり、企業が求人を出す際には「地域平均とどの程度差をつけるのか」という点が応募効果を大きく左右する可能性があります。

中国・四国地方についても見てみると、広島県が1,085円、岡山県が1,047円、香川県が1,036円、徳島県が1,046円、愛媛県が1,033円、高知県が1,023円と、概ね1,030円から1,080円程度の範囲に収まっています。四国地域は全国的に見るとまだ低めの水準ですが、それでも前年から70円前後の大幅な引き上げが行われており、賃金水準は確実に改善しています。

九州地方では、福岡県が1,057円、長崎県が1,031円、熊本県が1,034円、大分県が1,035円、宮崎県が1,023円、鹿児島県が1,026円と続きます。福岡県は九州の中で最も高い水準となっており、都市部と地方の差がはっきりと見て取れます。中でも熊本県や大分県は81円から82円という大幅な引き上げが行われており、全国の中でも改定幅が最も大きかった地域の一つです。

このように都道府県ごとの数値を具体的に見ると、全国で一律に底上げが進んでいることが理解できます。東京や神奈川のように1,200円を超える地域もあれば、沖縄や宮崎のように1,020円台にとどまる地域もあります。しかしいずれも前年より60円以上の引き上げが行われており、全国的な流れとして生活基盤を支える政策が進んでいることが分かります。

読者にとって大切なのは、自分が住む地域の最低賃金を確認し、それが働き方や生活にどう影響するかを考えることです。例えば、パートで月160時間働く場合、東京であれば月収が約196,000円、沖縄では163,680円となり、地域間で3万円以上の差が生じます。これは単なる統計ではなく、生活の実感に直結する数字であり、転職や就業地選びの際には必ず意識すべき指標です。

令和7年度最低賃金1,121円改定と同一労働同一賃金 人手不足対策や助成金支援との関係を解説

令和7年度の最低賃金改定は、労働者にとっての収入底上げだけにとどまらず、雇用政策全体との整合性のもとに進められています。とくに「同一労働同一賃金」の徹底、「人手不足への対応」、物価高への対策、そして中小企業支援制度との連動が強まっており、その背景と意味合いを読み解くことが重要です。

まず、「同一労働同一賃金」が法的に義務化されている点が挙げられます。同一企業内で正社員と非正規雇用労働者との間で不合理な待遇差を設けることは禁止され、待遇差がある場合にはその理由について事業主による説明が求められます(厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」)。この法制度により、最低賃金引き上げが非正規にもきちんと波及するよう求められる土台が整備されています。

さらに、厚労省は令和7年度の地方労働行政運営方針において、最低賃金制度の適切な運営を掲げ、格差是正に向けた監督指導を強化することを明記しています。とくに、人手不足が深刻な業種には重点的な対応が予定されており、同一労働同一賃金の遵守もあわせて徹底される姿勢です。

そして、最低賃金の引き上げが中小企業の経営負担につながることを前提に、政府は様々な支援制度を整えています。代表的なものが「業務改善助成金」の拡充です。これは、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げたうえで、生産性向上のための設備投資などを行った中小企業を支援する制度で、地域別最低賃金改定にあわせて適用範囲が拡大されています(厚生労働省「業務改善助成金」拡充)。

また、非正規雇用の処遇改善や正社員化を支援する「キャリアアップ助成金」も重要です。「年収の壁」への対応や賃上げにも活用可能で、同一労働同一賃金の実現に向けた企業の取り組みを支援しています。

これらの政策は、最低賃金の引き上げだけではなく、人手不足に対応しながら企業の生産性や雇用条件を改善する構造的な道筋を示しています。

さらに背景には、政府の賃上げ目標があります。地方行政運営方針では、2020年代に全国平均で1,500円という高い目標を掲げており、長期的な賃上げの流れを国として継続する意志が明記されています(「令和7年度地方労働行政運営方針」の策定について 厚生労働省)。

こうして見ると、最低賃金の引き上げは単独のニュースではなく、「同一労働同一賃金」の遵守促進や人手不足対策、企業への助成や監督強化など、多様な政策と連携しながら進行していることがわかります。企業にとっては、単に賃金を上げるだけでなく、制度の活用や働き方の見直しも求められる局面です。

読者の皆様には、自分の立場(労働者、経営者、人事担当など)に応じて、これらの関連制度を踏まえた上で最低賃金の影響を読み解くことが、今後の判断や行動に役立つことを確信しています。

令和7年度最低賃金改定は2025年10月1日から順次施行 給与計算や求人票修正で注意すべき実務ポイント

令和7年度の地域別最低賃金改定は、全国すべての都道府県で10月1日以降、順次施行されていく予定です。都道府県ごとに発効日は異なり、10月初旬に実施する地域もあれば、翌年の3月末にかけて施行される地域もあります。そのため、企業の採用担当者や経理部門にとっては、スケジュールを正しく把握し、いつまでに準備を整えるべきかを明確にすることが大切です。最低賃金が実際に効力を持つ日は「求人票や給与明細の見直し」と「雇用契約書の更新」に直結するため、施行日の確認を怠ると法令違反につながる危険があります。

給与計算に関しては、発効日の直後から新しい最低賃金額に基づいて時給換算を行う必要があります。時給労働者だけでなく、月給制や日給制の従業員についても、労働時間を基準に最低賃金を下回らないかを計算する必要があります。例えば、月給制であっても、所定労働時間で割った額が最低賃金を下回っていれば違法となるため、あらかじめシミュレーションを行い、不足があれば給与体系を修正しておくことが求められます。

雇用契約の更新時にも注意が必要です。最低賃金改定後に従業員と契約を更新する場合、提示する労働条件通知書や雇用契約書に記載される時給や月給の金額が、必ず新しい最低賃金を上回る必要があります。改定前の条件をそのまま記載してしまうと、契約時点で不適法となり、後にトラブルへ発展するリスクがあります。更新の際には賃金額を改めて確認し、必要に応じて条件変更を行うことが欠かせません。

求人票の修正も実務上の重要なポイントです。採用を継続している企業は、求人票に記載された時給や月給の金額が改定後も有効であるかを確認する必要があります。求人媒体によっては、発効日までに金額を修正しなければ掲載停止となる場合もあるため、余裕を持った対応が求められます。求人情報は企業の信頼性を大きく左右するため、誤った金額を提示したまま応募者を集めてしまうと、法令違反だけでなく企業イメージの低下にもつながりかねません。

また、今回の改定は過去最大幅の引き上げであるため、従業員の定着率やモチベーションの向上につなげる工夫も同時に必要です。単に賃金を引き上げるだけではなく、昇給理由や背景を丁寧に説明することにより、従業員の理解と納得感を高めることができます。人件費の増加は経営上の課題ではありますが、これを前向きに受け止め、採用力の強化や職場環境の改善へつなげる姿勢が重要です。

こうした準備は、最低賃金改定の発効日が到来してから行うのでは遅すぎます。給与システムの調整、雇用契約書の見直し、求人票の修正などは、施行日の少なくとも数週間前には完了させておくべきです。これにより、発効日以降も混乱なく事業を継続でき、従業員や応募者に対して誠実な対応を示すことができます。

令和7年度の最低賃金改定は、単なる数字の変更ではなく、実務対応の遅れが直接的な法令違反や企業リスクに直結する大きな節目です。スケジュールを正しく把握し、給与計算・雇用契約・求人票を早めに準備することこそが、改定を円滑に乗り切るための最も実務的で効果的な対応といえるでしょう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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