2025年2月5日
労務・人事ニュース
全国の空き家900万戸突破!企業が注目すべき不動産市場の新たな動向(令和5年)
令和5年住宅・土地統計調査 住宅の構造等に関する集計(確報集計)結果(総務省)
2023年10月1日現在の住宅・土地統計調査によると、日本の総住宅数は6504万7000戸に達し、2018年と比較して4.2%(263万9000戸)の増加を記録した。一方、総世帯数は5621万5000世帯で、5年間で4.1%(221万4000世帯)増加し、いずれも過去最多となっている。住宅数の増加は継続的に続いており、世帯数を上回る傾向が1968年以降続いている。現在、1世帯当たりの住宅数は1.16戸で、2013年以降、ほぼ同水準で推移している。
特に注目すべきは、空き家の増加傾向だ。2023年の空き家数は900万2000戸で、2018年の848万9000戸と比べ、51万3000戸増加した。これは、過去最多の水準であり、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)も13.8%と過去最高となった。特に、賃貸・売却用や別荘などの二次的住宅を除く空き家は385万6000戸にのぼり、全住宅の5.9%を占める。30年間で空き家数はほぼ2倍に増え、今後の有効活用や政策対応が求められる。
住宅の建て方をみると、一戸建住宅は2931万9000戸で全体の52.7%を占め、共同住宅は2496万8000戸で44.9%に達した。共同住宅は1993年から2023年の30年間で約1.8倍に増加しており、都心部を中心に高層化が進んでいる。東京都では共同住宅の割合が71.6%と最も高く、一方で秋田県では一戸建住宅が79.4%を占めるなど、地域による住宅形態の違いが顕著だ。
共同住宅の階数別割合では、「1~2階建」が25.1%、「3~5階建」が37.4%、「6~10階建」が21.3%、「11~14階建」が11.6%、「15階建以上」は4.6%となっている。2018年と比較すると、5階建以下の割合は低下する一方、6階建以上の割合は増加しており、共同住宅の高層化が進行していることが分かる。
住宅の構造面でも変化が見られる。1993年には住宅全体の31.9%が非木造だったが、2023年には46.0%に増加し、木造住宅の割合は68.1%から54.0%に低下した。耐震性や防火性能の向上により、鉄筋・鉄骨コンクリート造の住宅が増加傾向にある。
住宅の所有形態を見ると、持ち家の割合は3387万6000戸で、全体の60.9%を占める。5年前と比較すると0.3ポイント低下しているが、30年間を通して持ち家率は60%前後で推移している。一方、借家は1946万2000戸で、35.0%を占め、民営借家が最も多く、1568万4000戸で全体の28.2%を占める。公営借家は176万戸(3.2%)、給与住宅は130万2000戸(2.3%)、UR・公社の借家は71万6000戸(1.3%)と、それぞれ減少傾向にある。
住宅の規模についても変化が見られる。2023年の1住宅当たりの居住室数は4.26室、居住室の畳数は32.49畳、延べ床面積は90.86㎡で、2018年と比較して減少傾向にある。特に一戸建の延べ床面積は、2013年をピークに減少しており、共同住宅も同様の傾向を示している。一方、1人当たりの居住室の畳数は14.65畳と増加しており、住居の広さよりも居住環境の快適性が重視されるようになっている。
借家の家賃は、全国平均で月額59,656円となり、5年間で7.1%の増加を記録した。公営借家は24,961円(7.6%増)、UR・公社の借家は71,831円(2.8%増)、民営借家(木造)は54,409円(4.5%増)、民営借家(非木造)は68,548円(7.0%増)、給与住宅は37,993円(11.6%増)となっている。特に民営借家(非木造)の1畳当たり家賃は4,151円と最も高額で、住宅の高品質化や都市部での賃料上昇が影響している。
また、65歳以上の世帯員がいる主世帯は2375万世帯に達し、全世帯の42.7%を占める。2018年と比較して0.7ポイント上昇しており、高齢者の単身世帯は32.1%と過去最高を記録した。夫婦のみの高齢世帯は28.9%、その他の高齢者のいる世帯は39.0%となっている。特に75歳以上の世帯員がいる世帯は1380万8000世帯となり、全世帯の24.8%を占めている。
住宅政策においては、空き家の増加や高齢者世帯の増加への対応が急務とされる。今後、持ち家の活用や住宅のコンパクト化、バリアフリー化の推進が求められ、空き家の活用策や都市部の住宅供給のあり方が重要な課題となるだろう。
住宅改修市場の現状:2019年以降に974万戸が改修、今後の人材需要は?
総務省が実施した令和5年住宅・土地統計調査の確報集計結果によると、2019年以降に増改築・改修工事を行った持ち家は約974万8千戸で、持ち家全体の28.8%に相当する。主な改修内容として、「台所・トイレ・浴室・洗面所の改修工事」が16.1%と最も多く、次いで「屋根・外壁等の改修工事」が12.4%、「天井・壁・床等の内装の改修工事」が7.5%と続いた。築年数別に見ると、1981年から1990年に建てられた住宅のうち38.7%が改修を行っており、1971年から1980年の住宅も37.6%が改修を実施している。2000年以前に建築された持ち家の3割以上が、2019年以降に増改築・改修工事を行ったことがわかる。
耐震改修工事に関しては、2019年以降に実施された持ち家の割合は1.9%にとどまった。改修内容の内訳をみると、「壁の新設・補強」が46.0%で最多を占め、「金具による補強」(38.0%)、「基礎の補強」(34.5%)と続く。住宅の種類別では、一戸建て住宅の2.3%が耐震改修工事を行ったのに対し、共同住宅では0.2%にとどまった。また、木造住宅では2.4%が耐震改修工事を行った一方、非木造住宅では0.7%にとどまっており、耐震補強の取り組みは木造住宅のほうが進んでいる傾向があることが明らかとなった。
高齢者向けの設備工事については、2019年以降に実施された持ち家は441万戸で、持ち家全体の13.0%を占める。改修内容別に見ると、「階段や廊下の手すりの設置」が7.8%、「トイレの工事」が5.4%、「浴室の工事」が5.3%となっている。高齢者のいる世帯における工事実施率は年齢層が高くなるにつれて増加し、75歳以上の世帯では22.2%が改修を行ったのに対し、65歳から74歳では13.9%、55歳から64歳では7.7%と年齢が下がるにつれて低下する傾向が見られる。
また、住宅のバリアフリー化率についても調査が行われた。65歳以上の世帯員がいる主世帯のうち、一定のバリアフリー化が施された住宅に居住している世帯は全体の45.4%で、高度なバリアフリー化が施された住宅に居住している世帯は10.0%だった。2018年と比較すると、一定のバリアフリー化率は3.0ポイント、高度なバリアフリー化率は1.2ポイント上昇している。住宅の種類別に見ると、一戸建て住宅のバリアフリー化率は47.0%、共同住宅(持ち家)は52.4%、共同住宅(借家)は34.0%と、持ち家のほうが借家よりもバリアフリー化が進んでいることがわかる。
住環境の視点では、高齢者のいる世帯が最寄りの老人デイサービスセンターまでの距離別にどのように分布しているかも調査された。「500m未満」に住む世帯は41.6%、「500~1,000m未満」は30.1%、「1,000m以上」は28.3%となっている。2003年時点では500m未満の世帯割合は17.0%だったが、20年間で2倍以上に増加し、逆に1,000m以上の世帯割合は60.5%から28.3%へと大幅に減少している。これは、高齢者向けの福祉施設の整備が進んだ結果と考えられる。
一方で、世帯所有の空き家についても調査が行われた。世帯が現住居以外に所有する空き家のうち、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の割合を建築時期別にみると、1970年以前に建築されたものが44.6%と最も多く、1971年から1980年に建築された住宅が22.8%と続いた。取得方法別では、「相続・贈与」で取得した空き家が全体の61.6%を占め、新築・建て替え(14.1%)や中古住宅の購入(11.8%)に比べて圧倒的に高い割合を占めている。これは、持ち家が相続されるケースが多く、その後使用されずに空き家化する傾向が強まっていることを示している。
これらのデータは、日本の住宅事情において重要な指標となる。特に、高齢化社会が進む中でバリアフリー化や高齢者向け設備の整備が進んでいる一方で、耐震改修の進捗は依然として遅れていることが浮き彫りになった。また、空き家問題が依然として深刻であり、特に相続による空き家の増加が目立つ。これらの課題を解決するためには、耐震補強の促進、高齢者向け住宅のさらなる整備、そして空き家の有効活用を進める政策が求められるだろう。
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