2024年9月15日
労務・人事ニュース
安全性と技能の向上を図る新制度!林業従事者向けの『林業職種』技能検定が開始

技能検定「林業職種」を新設しました ~今年度から「林業」の技能に関する新しい技能検定試験が始まります~(厚労省)
厚生労働省は、職業能力の向上を目的とした国家検定制度である「技能検定」に、新たに「林業職種」を設けることを決定しました。この新しい職種の設置により、林業に従事する労働者の技能向上とその社会的・経済的地位の向上を図り、安全性の向上による労働災害の減少にも寄与することが期待されています。今回の改正は、「職業能力開発促進法施行規則」および「職業能力開発促進法第47条第1項に規定する指定試験機関の指定に関する省令」の一部を改正する形で実施されました。
林業は、長年にわたり日本の自然環境と経済にとって重要な産業の一つであり、森林資源の持続的な管理と利用を支える基盤となっています。特に近年では、環境保護や再生可能資源の利用に対する関心が高まる中で、林業の役割が再評価されつつあります。しかし、林業の現場では、作業の専門性や安全管理が求められる一方で、技術の継承や人材育成が十分でない状況も指摘されています。こうした背景から、林業従事者の技能を公式に評価し、その技術を証明する制度が必要とされてきました。
今回新設された「林業職種」の技能検定では、主に育林作業と素材生産作業に関する技能と知識が検定対象となります。育林作業とは、森林を健全に育てるための作業全般を指し、苗木の植栽や間伐、枝打ちなどの手入れ作業が含まれます。一方、素材生産作業は、木材の伐採や搬出、加工に関わる工程を指します。これらの作業は、単に技術的な側面だけでなく、安全性や環境への配慮も重要視される領域であり、技能検定を通じてその能力が評価されます。
技能検定の等級は、1級、2級、3級、基礎級の4段階に分かれており、それぞれの等級に応じた試験が実施されます。1級は最も高度な技能を必要とし、リーダー的な役割を担う人材が対象です。2級と3級は中堅から初級レベルの技能者を対象としており、基礎級は初心者や新規参入者向けの内容となっています。これにより、幅広い層の林業従事者が自らのスキルを評価・向上させる機会が提供されることになります。
今回の「林業職種」技能検定の運営を担うのは、「一般社団法人林業技能向上センター」です。このセンターは、林業に関する専門知識と実務経験を持つ機関として、林業従事者の育成や技能向上に取り組んできました。今後、この技能検定の普及と発展を支援し、林業従事者の技能認定を通じて業界全体の底上げを目指していくことが期待されます。
技能検定は、昭和44年に制定された「職業能力開発促進法」に基づく制度で、これまで多くの職種で実施されてきました。この制度は、労働者が自らの技能や知識を公式に証明できる場を提供するものであり、合格者は「技能士」という称号を得ることができます。この称号は、労働市場において高い評価を受けることが多く、キャリアアップや転職においても有利に働くことが期待されます。また、企業側にとっても、技能士の資格を持つ労働者を雇用することで、業務の質の向上や労働災害のリスク軽減につながるとされています。
厚生労働省は、今回の「林業職種」技能検定の新設にあたり、林野庁をはじめとする関連機関と密接に連携し、受検者の募集や制度の普及に努める方針です。具体的には、林業関係者への説明会や広報活動を通じて、受検の奨励を行い、多くの従事者が技能検定を受けられる環境を整えていく予定です。これにより、林業分野における人材の質的向上が期待され、ひいては日本の森林資源の持続可能な利用と保全に寄与することが期待されます。
林業は、今後ますますその重要性が増すと考えられており、特に地球温暖化対策や自然災害の防止、再生可能エネルギーの活用など、さまざまな分野での役割が期待されています。そのためにも、現場で働く労働者の技能向上と安全管理の徹底が不可欠です。今回の技能検定「林業職種」の新設は、こうした時代のニーズに応えるための重要な一歩であり、林業に携わるすべての人々にとって大きな意義を持つ制度となるでしょう。
林業従事者の皆様には、この機会を活用して、自身の技能を高めるとともに、業界全体の発展に貢献していただきたいと期待されています。技能検定を通じて、自らの技術を磨き、さらなる高みを目指すことができるでしょう。今後、林業分野でのキャリア形成において、技能検定が一層重要な役割を果たすことになると考えられます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ