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2024年7月7日

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日本における未婚化の進行とその背景:経済的基盤、親密性基盤、結婚意欲の三要素から見た現状と課題

第80巻 第2号 (2024年6月刊)(社人研)

近年、日本の未婚率が急速に上昇しています。その背景には、様々な社会的および経済的要因が絡んでいます。特に1980年代以降、25歳から34歳の年齢層における未婚者の割合が増加しており、この現象は「未婚化」として広く知られるようになりました。今回は、未婚者の状態を経済的基盤、親密性基盤、結婚意欲という三つの要因に基づいて類型化し、その変化について詳しく分析します。

未婚状態を理解するためには、まず結婚に必要な三つの要素、すなわち経済的基盤(安定した仕事)、親密性基盤(親密なパートナーの存在)、結婚意欲の保有が重要です。これらの要素が揃っていることが、結婚の前提条件と考えられます。本研究では、これら三要素を基に未婚者を四つの類型に分類しました。すなわち、前駆型未婚、解放型未婚、剥奪型未婚、離脱型未婚です。

前駆型未婚は、経済的基盤と親密性基盤が揃っており、結婚意欲もあるが、何らかの理由で結婚を先送りしている状態です。解放型未婚は、経済的基盤と親密性基盤があるものの、結婚意欲がない状態で、結婚から解放された状況を示します。剥奪型未婚は、経済的基盤か親密性基盤のいずれか、または両方が欠如しているが、結婚意欲がある状態です。最後に、離脱型未婚は、経済的基盤も親密性基盤も欠如し、結婚意欲もない状態です。

1980年代には、前駆型未婚の割合が増加していました。この時期は、経済的基盤と親密性基盤が揃っているが、結婚を先送りする未婚者が多かったことを示しています。しかし、1990年代から2000年代にかけては、剥奪型未婚の割合が増加しました。特に経済的基盤が欠如している未婚者が多く見られ、これは平成不況の影響とされています。

2010年代以降、剥奪型未婚の割合が減少し、離脱型未婚の割合が急増しました。これは、経済的基盤と親密性基盤が整わないまま、結婚意欲も失われた未婚者が増えたことを示しています。また、全期間を通じて解放型未婚の割合は希少であり、多くの未婚者が結婚を望んでいるものの、実現に至っていない状況が続いています。

未婚化の進行は、個々の生活や社会全体に多大な影響を及ぼします。例えば、経済的基盤が不安定な未婚者は、安定した生活を送りにくく、社会的な不安要因となり得ます。また、親密性基盤が欠如している未婚者は、孤独感や精神的な健康問題を抱えるリスクが高まります。結婚意欲のない未婚者の増加は、出生率の低下や人口減少につながり、長期的には経済成長の鈍化や社会保障制度の維持が困難になる可能性があります。

一方で、未婚化が進むことで、結婚に対する価値観や生活様式の多様化が進展しています。結婚に縛られない生き方を選ぶ人々が増え、これにより個人の自由や自己実現の機会が広がる側面もあります。このような社会の変化に対応するためには、柔軟な社会政策が求められます。

未婚化に対する政策的対応は、多岐にわたる分野での取り組みが必要です。まず、経済的基盤を強化するための雇用対策や住宅政策が重要です。特に若年層の正規雇用を増やし、安定した収入を得られる環境を整えることが求められます。また、ワーク・ライフ・バランスを実現するための制度整備や、育児・介護支援の充実も不可欠です。

親密性基盤の確保には、社会的なネットワークの構築や、婚活支援などの取り組みが有効です。地域コミュニティの活性化や、デジタル技術を活用したマッチングサービスの充実が考えられます。結婚意欲を喚起するためには、結婚や家族の価値を再評価し、多様な家族の形を尊重する社会的な風潮を醸成することが重要です。

日本における未婚化の進行は、経済的基盤、親密性基盤、結婚意欲という三つの要因が複雑に絡み合った結果です。未婚者の状態を四つの類型に分類し、その変化を時代別に分析することで、未婚化の実態とその背後にある要因が明らかになりました。今後の政策対応としては、経済的基盤の強化や親密性基盤の確保、結婚意欲の喚起に向けた総合的な取り組みが求められます。

これにより、未婚化による社会的な課題を軽減し、多様な生き方を尊重する社会の実現を目指すことが重要です。このような観点から、未婚化の現象を単なる個人の選択と捉えるのではなく、社会全体の構造的な問題として捉え、適切な政策を講じることが求められます。

未婚化が進行する背景には、特に若年層の雇用環境の悪化が大きく影響しています。正規雇用の減少や非正規雇用の増加により、安定した収入を得ることが難しくなり、これが結婚や家庭形成を妨げる要因となっています。また、住宅費の高騰や都市部での生活費の上昇も、若者が経済的に自立する障害となっています。これに対して、政府や自治体は、若者の雇用機会を増やすための政策や、住宅費の負担軽減策を講じる必要があります。

さらに、親密性基盤の確保も重要な課題です。現代社会では、デジタル技術の進展により人々の交流が多様化している一方で、実際の対面でのコミュニケーション機会が減少している傾向があります。これにより、親密な関係を築く機会が減少し、未婚者の孤立感が増大しています。地域コミュニティの活性化や、婚活イベントの支援、デジタル技術を活用した出会いの場の提供など、親密性基盤を強化するための取り組みが求められます。

結婚意欲の喚起についても、社会的な風潮や価値観の変化が影響しています。結婚や家族に対する価値観が多様化し、必ずしも結婚が人生の目標とされなくなっている現状に対応するためには、結婚や家庭の持つ意義を再評価し、多様な生き方を尊重する社会を構築することが重要です。教育現場やメディアを通じて、結婚や家族の価値を伝える啓発活動を行うことも効果的です。また、結婚後の生活を支えるための育児支援や介護支援の充実も、結婚意欲を高める要因となります。

総じて、未婚化の進行は、経済的要因、社会的要因、個人的要因が複雑に絡み合った結果であり、それに対する対応策も多岐にわたる必要があります。経済的基盤の強化、親密性基盤の確保、結婚意欲の喚起を柱とする総合的な政策を講じることで、未婚化

による社会的課題を解決し、より豊かで多様な社会の実現を目指すことが求められます。

未婚化の進行には、特に若者のライフスタイルや価値観の変化も大きく影響しています。かつては結婚が人生の大きな節目とされていましたが、現代では個人のキャリアや自己実現を優先する傾向が強まっています。これにより、結婚を後回しにする人や、結婚自体を選ばない人が増えてきました。これに対応するためには、結婚や家庭生活がキャリアや自己実現と両立できる環境を整えることが重要です。例えば、育児休業制度の拡充や、職場での柔軟な働き方の推進、キャリア支援プログラムの充実などが考えられます。

さらに、未婚化の背景には、性別役割分担の変化もあります。女性の社会進出が進む一方で、家庭内での性別役割分担が依然として強固に残っている場合、女性が結婚や出産をためらう一因となります。男女が平等に家事や育児を分担できるような社会制度の整備や、職場での男女平等の推進が必要です。これにより、女性が結婚や出産を選びやすくなるとともに、男性も家庭生活に積極的に関与できるようになります。

また、未婚化は都市と地方の人口動態にも影響を及ぼしています。都市部では生活費が高く、経済的な負担が大きいため、結婚や子育てが難しいと感じる人が多い一方、地方では人口減少や高齢化が進み、若者の結婚や定住を促進するための支援が求められています。地方自治体が若者の移住や定住を支援するための政策を打ち出し、地域コミュニティの強化や地域資源の活用を図ることが重要です。

具体的な対策としては、地方での住居支援や就業支援、地域での婚活イベントの開催、地域社会との交流機会の提供などが考えられます。これにより、若者が地方での生活に魅力を感じ、結婚や家庭を築くことを選びやすくなるでしょう。

未婚化が進む一方で、シングルライフを選ぶ人々に対する社会的なサポートも重要です。未婚者が孤立しないよう、社会的なネットワークやサポート体制を整えることが求められます。これには、シングル向けの住宅支援や医療・福祉サービスの充実、コミュニティ活動への参加促進などが含まれます。未婚者が安心して生活できる環境を整えることで、社会全体の安定と幸福度を高めることができます。

最後に、未婚化の問題を解決するためには、社会全体の意識改革も不可欠です。結婚や家庭に対する固定観念を見直し、多様な生き方や価値観を尊重する社会を築くことが大切です。これには、教育やメディアを通じて多様性の重要性を啓発し、社会全体で支え合う文化を育むことが含まれます。

結論として、日本における未婚化の進行は、経済的基盤、親密性基盤、結婚意欲という三つの要因が複雑に絡み合った結果であり、それに対する総合的な政策対応が求められます。経済的基盤の強化、親密性基盤の確保、結婚意欲の喚起を柱とし、若者のライフスタイルや価値観の変化に対応した柔軟な社会制度の整備が必要です。また、都市と地方の人口動態に応じた地域ごとの対策や、シングルライフを選ぶ人々に対するサポートの充実も重要です。社会全体の意識改革を進め、多様な生き方や価値観を尊重する社会を目指すことで、未婚化による課題を解決し、より豊かで多様な社会の実現を目指すことができるでしょう。

⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ

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