2026年4月28日
労務・人事ニュース
女性比率と55歳以上比率が影響、教育訓練費との関係を数値で分析した結果
企業におけるキャリア支援の現状と課題(JILPT)
2026年3月31日、企業におけるキャリア支援の実態と課題を分析した調査研究の結果が公表された。本調査は、セルフ・キャリアドックの導入状況を中心に、企業内でのキャリア支援施策の広がりや課題、導入を左右する要因を明らかにすることを目的としている。
調査は2025年8月から9月にかけて実施され、従業員300人以上の企業14,511社を対象に郵送で質問票を配布し、1,936社から回答を得た。回収率は13.3%であり、企業規模や人材施策に関する多様な実態が収集された。
分析の結果、セルフ・キャリアドックの認知や活用には、従業員数と教育訓練費が大きく関係していることが明らかとなった。従業員数が多く、教育訓練費が高い企業ほど、これらの施策を導入し活用している傾向が確認されている。
さらに教育訓練費の水準には、企業の構造的な特徴が影響している。具体的には、従業員数が多い企業や、売上高や新卒採用数が増加している企業で支出が高くなる傾向が見られた。一方で、女性社員比率や55歳以上の比率が低い企業ほど教育訓練費が高いという結果も示されている。
業種別では、医療・福祉と比較して、製造や建設、運輸、さらに卸売や小売、サービス分野において、セルフ・キャリアドックの認知度や活用度が高い傾向が確認された。産業構造による違いも、導入状況に影響を与えていることがうかがえる。
また、企業内の意識や組織文化も重要な要素として浮かび上がった。経営層や管理職が部下のキャリア形成をどのように捉えているかが、企業全体のキャリア自律を重視する姿勢に影響し、その結果として具体的な施策の導入や実施につながる構造が確認された。
この流れの中で、キャリア関連施策が実施されることで、従業員のキャリア自律の浸透が進む傾向が見られる。単なる制度導入にとどまらず、組織全体の意識改革と連動することが重要であると示された。
一方で、施策導入にあたっての課題も明らかとなっている。最も多く挙げられたのは、人材や予算、時間といったリソース不足であり、制度を整備しても運用が難しい現実が浮き彫りとなった。
加えて、施策の内容や利用方法が社内に十分浸透していない点や、業績目標が優先されることによってキャリア支援が後回しになる傾向も指摘されている。従来の組織文化や慣習が、多様なキャリア形成の障壁となるケースも少なくない。
これらの課題に対しては、従業員向けの意識啓発が有効な対策として多くの企業で実施されている。研修や動画、社内報などを通じてキャリア意識を高める取り組みが広がっているほか、管理職に対する育成責任の明確化や研修も進められている。
今回の研究は、企業内キャリア支援の推進において、単に制度を導入するだけでなく、企業規模や経営状況、組織文化といった複合的な要因を踏まえた対応が必要であることを示している。特に経営層や管理職の意識改革と、社内の意思決定の仕組みが重要な役割を果たすと考えられる。
キャリア自律が求められる時代において、企業がどのように従業員の成長を支援するかは重要な経営課題となっている。今回の調査結果は、今後の施策設計や制度運用の検討において、実務的な指針として活用されることが期待される。
⇒ 詳しくは独立行政法人 労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ


