2026年6月21日
労務・人事ニュース
佐賀県の有効求人倍率1.20倍時代に採用担当者が強化すべき施策【令和8年4月】
佐賀県の有効求人倍率1.20倍と新規求人6,444人の動向【令和8年4月】
佐賀労働局が2026年5月29日に公表した令和8年4月の一般職業紹介状況によると、佐賀県の有効求人倍率(受理地別・季節調整値)は1.20倍となり、前月から0.02ポイント低下しました。全国平均の1.18倍をわずかに上回る水準を維持しているものの、九州・沖縄の1.07倍と比較すると高い状況にあります。一方で、県内の求人動向を詳しく確認すると、採用市場は決して楽観できる状態ではなく、企業側の採用戦略の見直しが求められる局面に入っていることがわかります。
有効求人倍率とは、求職者1人に対して何件の求人が存在するかを示す代表的な雇用指標です。倍率が1倍を超える場合は求人数が求職者数を上回っていることを意味し、企業側にとって人材確保が難しい環境であることを示します。今回の佐賀県の1.20倍という数字は、依然として人手不足傾向が続いていることを表していますが、その中身を詳しく見ると採用市場に変化の兆しが見え始めています。
まず注目したいのが有効求人数と有効求職者数の動きです。季節調整値では有効求職者数が15,065人となり前月比0.4%減少しました。有効求人数は18,021人で前月比2.7%減少しています。求職者数の減少幅よりも求人数の減少幅が大きかったため、有効求人倍率は前月の1.22倍から1.20倍へ低下しました。企業の採用意欲がやや慎重になっている様子がうかがえます。
さらに新規求人倍率は1.71倍となり、前月の2.05倍から0.34ポイント低下しました。新規求職者数は3,464人で前月比8.1%増加した一方、新規求人数は5,938人で前月比9.6%減少しています。この数字は企業の新規採用活動が縮小する一方で、新たに仕事を探し始める人が増えていることを意味しています。採用担当者にとっては非常に重要な変化といえるでしょう。
原数値で見るとさらに特徴が明確になります。新規求人数は6,444人で前年同月比13.5%減少しました。有効求人数も18,306人で前年同月比4.3%減少しています。一方で新規求職者数は4,860人となり前年同月比2.3%増加しました。有効求職者数も16,120人で前年同月比0.6%増加しています。求人が減少し求職者が増加している構図が鮮明となっており、これまで続いてきた極端な売り手市場から徐々に変化が生まれていることが読み取れます。
ただし、この状況をもって採用難が解消すると考えるのは早計です。正社員有効求人倍率は1.10倍となり、前年同月から0.03ポイント低下しましたが、依然として1倍を超えています。つまり正社員を希望する求職者よりも正社員求人のほうが多い状態が続いています。企業が求める経験者や専門職、管理職人材については引き続き獲得競争が続く可能性が高いと考えられます。
産業別の新規求人動向を見ると、業界によって大きな差が生じています。建設業は811人で前年同月比8.9%増加しました。宿泊業・飲食サービス業も367人で9.9%増加しています。観光需要の回復や地域経済活動の活発化が背景にあると考えられます。農業・林業・漁業も55.4%増加しており、地域産業における人材需要が高まっていることがわかります。
一方で減少幅が大きい業種も目立ちます。卸売業・小売業は1,048人で前年同月比40.7%減少となりました。情報通信業も30.2%減少、サービス業は18.3%減少、不動産業・物品賃貸業は14.4%減少しています。製造業についても636人で6.9%減少しました。これらの業界では景気動向やコスト上昇、人件費負担などを考慮しながら採用計画を慎重に見直している可能性があります。
しかし中小企業の採用担当者が注意すべきなのは、求人が減少している業界でも人材確保が容易になるとは限らないという点です。求職者は企業を選ぶ際に給与だけでなく、働き方や職場環境、将来性、教育制度、福利厚生などを総合的に比較しています。求人倍率が低下しても、自社の魅力が十分に伝わらなければ応募につながらないケースは今後も続くでしょう。
地域別の有効求人倍率にも注目する必要があります。佐賀所管内は1.22倍、唐津は1.21倍、武雄は1.27倍、伊万里は1.32倍、鳥栖は1.18倍、鹿島は1.31倍となっています。最も高い伊万里地域では1.32倍となり、求職者1人に対して1件以上の求人が存在する状況です。採用担当者は県全体の平均だけを見るのではなく、自社が位置する地域の労働市場を把握することが重要です。
特に鳥栖地域は物流拠点として多くの企業が集積しており、運輸業や倉庫業との人材獲得競争が発生しやすい環境にあります。また伊万里や鹿島では製造業や地域産業が人材需要を支えているため、同じ佐賀県内でも採用難易度には違いがあります。地域特性を理解したうえで採用計画を立てることが重要になります。
企業規模別の求人状況も興味深い結果となっています。4人以下の事業所では前年同月比3.4%減少、5人から29人規模では12.1%減少、30人から99人規模では5.3%減少となりました。特に300人から499人規模では38.2%減少という大幅な落ち込みが見られます。一方で500人から999人規模では5.4%増加しています。
この結果から、中小企業の多くが採用活動を慎重に進めている一方で、一部の中堅企業は積極採用を継続していることがわかります。採用市場では応募者の奪い合いが続いており、中小企業は大手企業や中堅企業との差別化がますます重要になっています。
ここで中小企業の採用担当者が取るべき戦略について考えてみたいと思います。有効求人倍率1.20倍という数字は依然として求職者優位の環境ではなく、企業側が選ばれる立場にあることを意味します。そのため求人広告を掲載するだけの採用活動では成果が出にくくなっています。
まず必要なのは、自社で働く魅力を具体的に発信することです。求職者は企業規模だけで応募先を決めるわけではありません。経営者との距離が近いこと、仕事の裁量が大きいこと、地域に根差した事業であること、若いうちから責任ある仕事に挑戦できることなど、中小企業ならではの魅力を明確に伝える必要があります。
また採用活動を単なる人員補充と考えない姿勢も重要です。人口減少が進む中、今後は採用だけでなく定着率向上が経営課題になります。採用コストをかけて獲得した人材が短期間で離職すれば企業にとって大きな損失となります。そのため入社後の教育体制やキャリア形成支援、職場環境改善にも力を入れる必要があります。
さらに、求人票の内容を見直すことも重要です。仕事内容が曖昧な求人票よりも、具体的な業務内容や入社後の成長イメージを示した求人票のほうが応募につながりやすくなります。給与や休日数だけでなく、実際に働く社員の声や職場の雰囲気を伝える工夫も求められます。
近年は求職者が企業情報をインターネットやSNSで収集することが一般的になっています。採用専用ページの充実や社員インタビューの掲載、職場風景の発信なども有効な施策となります。特に若年層は企業文化や働き方への関心が高いため、情報発信力の差が応募数に直結する時代になっています。
令和8年4月の佐賀県の有効求人倍率1.20倍は、依然として人材不足が続いている現状を示しています。しかし求人減少と求職者増加という変化も同時に進行しており、採用市場は新たな局面を迎えています。中小企業の採用担当者は倍率の数字だけを見るのではなく、その背景にある求人構造や求職者行動の変化を理解することが重要です。採用活動を経営戦略の一部として捉え、自社の魅力発信と定着支援を強化する企業こそが、今後の人材獲得競争を勝ち抜いていくことになるでしょう。
⇒ 詳しくは佐賀労働局のWEBサイトへ


