2026年4月28日
労務・人事ニュース
2026年研究で判明、1990年代前半60%から2020年代50%へ低下した中間層割合の長期推移
中間層規模の長期推移と地域分布(JILPT)
2026年3月31日、日本における中間層の規模と地域差を分析した研究結果が公表された。1960年代から2020年代までの約60年間にわたる長期推移に加え、世帯主の定義の違いや都道府県別の分布を多角的に検証した内容となっている。
本研究では、世帯規模を考慮した等価所得を基準に、中間層を中央値の0.75倍以上2倍未満の所得層として定義し、複数の統計データを組み合わせて分析が行われた。これにより、従来把握が難しかった長期的な変化の実態が明らかになった。
長期推移を見ると、1960年代初頭には貧困層が大半を占めていたが、1970年代にかけて急速に減少し、中間層が大きく拡大した。所得分布の中心はこの時期に中間層へと移行し、経済成長の進展とともに社会構造が変化したことが確認されている。
その後、中間層の割合は1990年代前半に約60%に達したものの、1990年代後半以降は緩やかな低下傾向に転じ、2020年代ではおおむね50%前後で推移している。一方で、貧困層と低所得層はいずれも約20%程度に増加し、中間層の縮小が続いている状況が示された。
また、高所得層は1980年代以降に増加し、1990年代半ばには10%強となったが、その後は10%弱で横ばいとなっている。こうした変化から、所得分布の中で中間層の占める割合が縮小し、分布がやや広がる傾向が読み取れる。
所得格差を示すジニ係数については、1960年代に低下した後、1970年代以降は緩やかに上昇し、2000年頃を境に大きな変動は見られず横ばいで推移している。ただし、中間層割合の変化と完全には一致せず、両者を併せて分析する必要性が指摘された。
さらに、世帯主の定義の違いが中間層割合に与える影響も検証された。2021年データを用いた分析では、所得の最多獲得者を世帯主とする基準に変更した場合、現役世帯では中間層割合が2.0ポイント上昇し、引退世帯では5.3ポイント低下する結果となった。
特に65歳以上を含む複数人世帯では6.6ポイントの低下が確認されており、世帯主の年齢と実際の所得の担い手が一致しないケースが影響していると考えられる。世帯構造の多様化が統計結果に影響を与える実態が浮き彫りとなった。
地域別の分析では、1999年から2019年にかけて全国的に中間層割合が縮小し、沖縄県を除く46都道府県で低下が確認された。低下幅には地域差があり、各地域の経済状況や人口構造が影響している可能性が示唆されている。
また、税や社会保障による再分配はすべての都道府県で中間層割合を押し上げる効果が確認された。2019年時点では、再分配前よりも再分配後の方が中間層割合が高く、その差は20年前よりも拡大している。高齢化の進展に伴い、年金などの給付の影響が強まっていると考えられる。
さらに、中間層割合の地域差は単純な賃金水準だけでは説明できず、失業率や世帯内の就業者比率、世帯規模といった複数の要因が関係していることが明らかになった。特に現役世帯では、平均賃金の上昇が中間層割合の増加と安定的に結びつく傾向が確認されている。
今回の研究は、中間層の動向を把握するためには、中央値に連動する指標と基準年に固定した指標の両方を活用する必要があることを示している。また、地域ごとの実情に応じて、雇用環境の改善と再分配政策を組み合わせる視点の重要性も示唆された。
長期的な視点で見ると、日本の中間層は拡大から縮小へと転じており、その背景には経済構造の変化や人口動態の影響があるとみられる。今後の政策検討においては、こうした多面的な要因を踏まえた対応が求められる。
⇒ 詳しくは独立行政法人 労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ


