2026年6月22日
労務・人事ニュース
新潟県の有効求人倍率1.38倍【2026年4月】求人増加と求職者増加の実態
新潟県の有効求人倍率1.38倍【2026年4月】求職者増加の背景を探る
新潟労働局が2026年5月29日に公表した「一般職業紹介状況(2026年4月分)」によると、新潟県の有効求人倍率は季節調整値で1.38倍となり、前月から0.01ポイント上昇した。新規求人倍率は2.45倍となり、前月から0.16ポイント上昇している。一方で、正社員の有効求人倍率は原数値で1.35倍となり、前年同月を0.03ポイント下回った。県内の雇用情勢については「改善の動きにやや足踏み感がある」と判断されており、物価高騰などが雇用へ与える影響にも注意が必要な状況とされている。全国の有効求人倍率が1.18倍で横ばいとなる中、新潟県は全国平均を上回る求人環境を維持しているものの、採用市場の実態を詳しく見ると、企業の採用担当者が注意すべき変化も見えてくる。
まず有効求人倍率1.38倍という数字を確認すると、求職者1人に対して1.38件の求人が存在する状態を示している。つまり新潟県全体では求人数が求職者数を上回っており、企業側が人材確保に苦戦しやすい売り手市場が続いている。しかし倍率だけを見ると採用市場は活発に見えるものの、企業の採用活動が必ずしも順調というわけではない。
2026年4月の有効求人数は季節調整値で47,647人となり、前月比1.4%増加した。新規求人数も18,224人で前月比9.1%増加している。一方、有効求職者数は34,408人で前月比0.6%増加、新規求職申込件数は7,448件で前月比2.1%増加となった。求人と求職の双方が増加しているものの、求人の伸びが上回ったことで有効求人倍率が上昇した形である。
しかし前年同月との比較では異なる傾向が見られる。有効求人数は47,995人で前年同月比3.1%減少しており、9か月連続の減少となった。企業側の求人意欲は依然として高いものの、前年と比較すると慎重な採用姿勢が続いていることが分かる。一方、有効求職者数は37,432人で前年同月比3.2%増加しており、求職者は増えている。つまり企業が出す求人は減少し、仕事を探す人は増えている構図となっている。
中小企業の採用担当者にとって特に重要なのは、この「求職者が増えている」という変化である。ここ数年は人材不足が大きな課題となり、応募者を確保すること自体が難しい環境だった。しかし現在は求職活動を行う人が増加しており、企業側の情報発信や採用手法によって応募獲得の可能性が広がる局面に入っている。
産業別の新規求人を見ると、業種ごとの温度差は非常に大きい。建設業は3,023人で前年同月比4.5%増加した。製造業は2,640人で前年同月比5.9%増加している。新潟県では地域経済を支える重要産業である建設業と製造業の採用需要が引き続き堅調であり、人材確保競争も継続すると考えられる。
情報通信業は181人で前年同月比27.8%増加した。人数規模は大きくないものの増加率は高く、DX推進やIT人材需要の高まりを反映しているとみられる。今後も専門性の高い人材の採用競争は激化する可能性が高い。
運輸業・郵便業は923人で前年同月比1.5%増加した。物流業界では慢性的な人手不足が続いており、2024年問題以降もドライバー不足が課題となっている。新潟県内でも安定した求人需要が続いていることがうかがえる。
一方で卸売業・小売業は2,806人で前年同月比0.1%減少となった。宿泊業・飲食サービス業は1,045人で前年同月比6.7%減少している。観光需要や消費活動の回復が見られる中でも、経営コスト上昇や人件費負担の増加を背景に採用を慎重化する企業が存在すると考えられる。
医療・福祉分野は3,054人で前年同月比0.5%増加した。高齢化が進む新潟県では今後も安定した採用需要が見込まれる分野であり、人材不足解消は地域全体の課題となっている。
求職者側の動向を見ると、新規求職申込件数は10,427件で前年同月と同水準だった。その内訳では離職者が3,554人で前年同月比0.7%増加している一方、在職者は1,698人で前年同月比2.1%減少した。離職後に新たな仕事を探す人が増えていることから、企業側にとっては即戦力人材と出会う機会が増えているとも言える。
また正社員市場の動向も重要である。正社員有効求人倍率は1.35倍となり、11か月連続で前年同月を下回った。正社員有効求人数は28,561人で前年同月比0.8%減少し、8か月連続の減少となっている。一方、正社員有効求職者数は21,210人で前年同月比1.7%増加した。
この状況は採用担当者にとって大きな示唆を与えている。求人を出せば応募が集まる時代ではなくなった一方で、正社員として安定した働き方を求める人材は依然として存在している。採用成功の鍵は、企業がどれだけ自社の魅力を具体的に伝えられるかにかかっている。
中小企業の採用担当者は有効求人倍率1.38倍という数字をどのように受け止めるべきだろうか。多くの企業は倍率が高いと「採用が難しい」と考えがちである。しかし実際には求職者数が増加している現在、自社に合った人材と出会う機会は以前より増えている可能性がある。重要なのは求人票の内容や採用広報の質である。
例えば仕事内容を曖昧に記載した求人と、具体的な業務内容や入社後のキャリア形成を明示した求人では応募率に大きな差が生まれる。求職者は単に給与だけで応募先を決めるわけではない。職場環境、教育体制、働きやすさ、将来性などを総合的に比較している。そのため企業は求人票を単なる募集文書ではなく、自社の魅力を伝える営業資料として活用する視点が必要になる。
また採用活動では給与競争だけに依存しない戦略も重要である。中小企業は大企業と比較して給与水準で不利になるケースもあるが、その一方で経営層との距離の近さや成長機会の豊富さ、地域密着型企業としての安定性など独自の強みを持っている。こうした魅力を具体的な事例とともに伝えることが求職者の信頼獲得につながる。
さらに採用後の定着率向上にも力を入れる必要がある。採用市場が厳しい状況では、新規採用だけでなく既存社員の離職防止も極めて重要な経営課題となる。入社後のフォロー体制や研修制度、上司との定期面談などを整備し、安心して働き続けられる環境を構築することが結果的に採用力向上にもつながる。
今回の新潟県の有効求人倍率1.38倍は、依然として企業側の人材確保が容易ではないことを示している。しかし求職者数の増加や業界ごとの採用環境の変化を見ると、従来と同じ採用活動を続けるだけでは成果を上げにくい時代に入っていることも分かる。中小企業の採用担当者には、市場データを正しく読み解きながら、自社の魅力を分かりやすく発信し、求職者との信頼関係を構築する採用活動が求められている。数字の変化を単なる統計として眺めるのではなく、採用戦略を見直すための重要な経営情報として活用することが、これからの人材確保において大きな差を生み出すことになるだろう。
⇒ 詳しくは新潟労働局のWEBサイトへ


