2026年6月22日
労務・人事ニュース
東京都の有効求人倍率1.74倍【2026年4月】人材不足を乗り越える採用施策
東京都の有効求人倍率1.74倍【2026年4月】求人と求職の最新動向
東京労働局が2026年5月29日に公表した2026年4月の一般職業紹介状況によると、東京都の有効求人倍率は季節調整値で1.74倍となり、前月と同水準を維持した。東京都では引き続き求人が求職を大きく上回る状況が続いており、企業側の人材確保が容易ではない環境が継続している。一方で、求人数の推移や業種別の動向を詳しく確認すると、採用市場は単純な人手不足だけでは説明できない変化も見られている。中小企業の採用担当者にとっては、有効求人倍率の数字だけを見て採用難と判断するのではなく、その背景にある市場構造の変化を理解しながら採用戦略を構築することが重要になっている。
2026年4月の東京都の有効求人倍率は1.74倍となった。これは求職者1人に対して約1.74件の求人が存在することを意味する。全国平均の1.18倍を大きく上回る水準であり、東京都が全国でも特に人材獲得競争の激しい地域であることを示している。企業が採用活動を行う際には、単に求人広告を出すだけでは十分な応募が集まりにくい状況が続いている。
有効求人数は350,364人で前月比0.3%増加し、7か月ぶりに前月を上回った。一方で有効求職者数は201,545人で前月比0.5%増加し、3か月ぶりに前月を上回った。求人数と求職者数の双方が増加したことで倍率自体は変わらなかったが、企業の採用需要は依然として高い水準を維持していることが分かる。
新規求人倍率は3.41倍となり、前月から0.02ポイント低下した。新規求人数は123,535人で前月比4.1%増加し、新規求職者数も36,226人で前月比4.6%増加した。新たに採用活動を始める企業も、新たに仕事を探し始める求職者も増加しているものの、求職者の増加幅がやや大きかったことから倍率はわずかに低下した。
ただし前年同月との比較では異なる景色が見えてくる。原数値ベースで見ると、有効求人数は346,895人で前年同月比3.5%減少し、11か月連続で前年を下回った。有効求職者数も209,425人で前年同月比2.2%減少し、6か月連続で前年を下回っている。つまり企業側も求職者側も市場参加者が減少している状況にあり、その中でも企業側の採用需要の減少幅がやや大きくなっている。
新規求人数は123,288人で前年同月比4.2%減少した。これで9か月連続の減少となる。一方で新規求職者数は49,032人で前年同月比4.0%増加し、5か月連続で増加した。転職や再就職を目指して新たに求職活動を始める人は増えているが、企業の新規採用需要は縮小しているという構図が見て取れる。
この動向は中小企業にとって重要な意味を持つ。従来であれば人材不足が深刻化すると求職者の確保は極めて困難になる。しかし現在は新規求職者数が増加傾向にあるため、企業側が適切な採用戦略を構築すれば優秀な人材と接触できる可能性が高まっている。つまり応募が集まらない理由を市場環境だけに求めるのではなく、自社の採用手法や情報発信のあり方を見直すことが求められる段階に入っている。
業種別の新規求人動向を見ると、企業ごとの採用姿勢の違いが明確になっている。建設業は前年同月比12.3%減となった。建設業界は慢性的な人材不足が続いているものの、資材価格や人件費の高騰によるコスト増加の影響を受け、採用計画を慎重に見直す企業も増えていると考えられる。
情報通信業は前年同月比11.9%減となった。これまで積極採用を続けてきたIT関連企業においても、投資計画の見直しや経営効率化の動きが採用活動に影響している可能性がある。しかし職種別では依然として情報処理・通信技術者の求人倍率は高く、IT人材への需要そのものが消えたわけではない。
宿泊業・飲食サービス業は前年同月比6.3%減となった。訪日観光客の増加などによる需要回復は続いているが、人件費や原材料費の上昇が経営を圧迫しており、採用を抑制する事業者も少なくない。
医療・福祉分野は25,470人の求人があり、前年同月比4.4%減となったものの依然として高い採用需要を維持している。高齢化が進む東京都では介護職や医療従事者の需要が今後も続く見通しであり、採用競争は長期化すると考えられる。
一方でサービス業は24,771人となり前年同月比6.3%増加した。業種によって採用需要の方向性が異なっており、求職者の獲得競争も業界ごとに大きく差が生じている。
職業別の有効求人倍率を見ると、人材不足の深刻さがさらに鮮明になる。一般常用では保安職業従事者が14.04倍と極めて高い水準となった。求職者1人に対して14件以上の求人が存在している計算であり、警備業界の採用難が続いていることが分かる。介護サービス職業従事者は7.94倍、建設・土木作業従事者は6.60倍、機械整備・修理・検査従事者は6.35倍、建築・土木・測量技術者は6.12倍となった。
これらの職種は社会インフラや生活基盤を支える重要な役割を担っているが、若年層の応募減少や高齢化によって人材不足が深刻化している。中小企業がこれらの職種で採用を行う場合、給与条件だけでなく教育体制や資格取得支援制度、キャリア形成支援などを積極的に発信することが重要になる。
反対に求人倍率が低い職種もある。一般事務従事者は0.40倍、会計事務従事者は0.48倍となった。事務系職種では求職者数が多く、企業側が人材を選びやすい市場となっている。しかし応募者数が多いからといって採用活動が簡単になるわけではない。優秀な人材は複数企業から内定を獲得するため、企業側の魅力発信が不足していると採用に結びつかない。
正社員市場の状況も重要な指標である。正社員有効求人数は151,046人で前年同月比8.0%減少した。正社員有効求人倍率は1.11倍となり前年同月より0.06ポイント低下した。正社員求人は減少傾向にあるものの、依然として求職者を上回る状況が続いている。
正社員新規求人数は53,208人で前年同月比6.9%減少した。正社員就職件数は1,925件で前年同月比14.6%減少している。企業が採用活動を行っても実際の採用成立まで至る件数が減少していることから、採用活動の難易度は高まっていると言える。
中小企業の採用担当者が今後重視すべきポイントは、求人票の条件競争から脱却することである。東京都では大企業や有名企業との競争が避けられない。給与や福利厚生だけで勝負すると中小企業は不利になりやすい。そのため経営者との距離の近さ、意思決定の速さ、若手への権限移譲、成長機会の多さなど、中小企業ならではの魅力を具体的に伝える必要がある。
また、転職希望者が増加している現在は採用のチャンスでもある。離職者や在職中の転職希望者は即戦力として期待できる場合が多い。採用条件を厳しく設定しすぎるのではなく、経験の一部が不足していても育成可能な人材を受け入れる柔軟な姿勢が重要になる。
さらに採用後の定着支援も欠かせない。求人倍率が高い市場では転職機会が豊富なため、入社後のフォロー体制が不十分であれば早期離職につながりやすい。採用成功の定義を入社までではなく、長期的な活躍まで含めて考えることが重要である。
2026年4月の東京都の有効求人倍率1.74倍は、依然として企業間の人材獲得競争が激しいことを示している。しかし同時に新規求職者が増加していることから、採用市場には新たな変化も生まれている。中小企業の採用担当者は単に応募数を増やすことだけを目指すのではなく、自社の価値や働く魅力を明確に発信し、求職者との信頼関係を築く採用活動へ転換することが求められている。これからの採用競争では、企業規模ではなく企業の魅力をどれだけ伝えられるかが大きな差を生み出すことになるだろう。
⇒ 詳しくは東京労働局のWEBサイトへ


