2026年7月4日
労務・人事ニュース
令和8年5月先行き 甲信越景気、宿泊単価10%上昇でも続く人材確保難と求人市場の実態
景気ウォッチャー調査(令和8年5月調査)― 甲信越(先行き)―(内閣府)
内閣府が公表した令和8年5月の景気ウォッチャー調査によると、甲信越地域の先行き景況感は観光需要やイベント需要への期待がみられる一方で、中東情勢の長期化による原油価格上昇や資材不足への不安が広がっており、業種によって明暗が分かれる状況となっている。夏休みやお盆期間に向けて人の移動が活発になることを期待する声があるものの、物価高や消費者の節約志向が続いており、地域経済全体としては慎重な見方が優勢となっている。
観光関連業界では比較的前向きな見通しが示されている。都市型ホテルでは7月から8月にかけて宿泊需要の増加が見込まれており、平均宿泊単価も前年より約10%上昇する見通しとなっている。また、国際会議や大型イベントの開催が相次ぐ予定で、県外や海外からの来訪者増加への期待が高まっている。イベント開催が集中する地域では既に予約状況が好調に推移しており、宿泊施設や周辺事業者にとっては追い風となりそうだ。
遊園地やレジャー施設でも集客強化への取組が進められている。広報活動の拡大やイベント開催によって来園者数増加を目指しており、夏休み需要の取り込みに力を入れている。ボウリング場でも固定客や団体利用への期待があり、地域のレジャー産業は一定の需要回復を見込んでいる。コンビニ業界からも夏休みやお盆期間の人流増加による販売数量の伸びを期待する声が聞かれている。
一方で、観光業界の全てが楽観的というわけではない。観光型旅館では夏の予約状況が前年を下回るペースで推移しており、予約の動き出しが遅れていることへの不安が広がっている。原油不足や国際情勢への懸念が消費者の旅行意欲に影響しているとの見方もあり、今後の予約動向が注目されている。観光名所では現在好調なインバウンド需要も、宿泊料金の上昇によって本格的な観光シーズンには減速する可能性があると警戒されている。
旅行業界でも厳しい見方が出ている。旅行代理店によると受注件数は前年度の約7割にとどまっており、燃料価格上昇や物資調達問題が企業活動へ影響を与えれば、さらに旅行需要が落ち込む可能性があるという。観光関連産業にとっては、消費者心理の改善とエネルギー価格の安定が重要な課題となっている。
小売業界では物価上昇による影響が続いている。百貨店やスーパーではプレミアム付商品券やデジタル食事券など自治体による支援策への期待があるものの、消費者の節約志向は依然として強い。特売日や割引商品の購入に集中する傾向がみられ、通常商品の販売は伸び悩んでいる。生活必需品の値上げも続いており、消費者の家計負担は増加している。
商店街ではさらに厳しい現実に直面している。高齢者の外出機会減少や大型商業施設への顧客流出によって来街者数が減少している。加えて後継者不足も深刻化しており、空き店舗問題への不安も高まっている。商店街関係者からは、今後1~2年が地域商業の将来を左右する重要な時期になるとの声も聞かれている。
飲食業界も慎重な見通しとなっている。スナックではボーナス支給時期や納涼会需要への期待がある一方で、団体利用が伸び悩んでいる。高級レストランや一般レストランからは、中東情勢や穀物価格、燃料価格の高騰が続く限り景気改善は難しいとの見方が示されている。特に酷暑による外出控えも懸念されており、夏場の集客に不安を抱える事業者も少なくない。
製造業では業種ごとに状況が分かれている。金属製品製造業では半導体需要の回復による受注増加への期待が高まっている。半導体関連市場の持ち直しによって生産活動が活発化する可能性があり、一部企業では明るい見通しが示されている。建設業でも取引先企業の動向に改善の兆しがみられ、今後の受注回復を期待する声がある。
しかし多くの製造業は資材不足や価格高騰に苦しんでいる。電気機械器具製造業ではナフサを原料とする製品の入荷が困難となり、生産活動に悪影響が出ている。受注はあるものの資材不足によって生産できないケースも発生しており、供給体制への不安が高まっている。宝飾関連業界でも円安の影響による輸入コスト上昇が利益を圧迫している。
出版・印刷関連業界では経営環境が一段と厳しさを増している。紙や印刷資材の値上げが続くなか、価格転嫁が十分に進まず収益を圧迫している。資材そのものが確保できないケースもあり、事業継続への不安が高まっている。地域経済においても原材料供給の安定化が重要な課題として認識されている。
輸送業界では燃料価格の動向が最大の懸念材料となっている。物流コスト上昇は幅広い業界へ波及するため、企業活動全体に影響を与える可能性がある。金融機関からも製造業と非製造業の双方で景況感悪化への懸念が示されており、資材確保ができる企業とそうでない企業の格差が拡大するとの見方が出ている。
雇用市場では企業の採用姿勢に変化がみられている。職業安定所によると、継続的な物価上昇によって家計負担を補うため就職活動を活発化させる動きがみられる一方、企業側の採用基準は高い水準を維持している。その結果、求職期間が長期化する傾向がみられ、雇用環境はやや厳しさを増している。
また、民間職業紹介機関によると、地域の求人を支える製造業では現場作業員や開発系人材に対する採用基準が高まっている。若年層については人物重視の採用が進む一方で、高齢層の求人環境は厳しくなっているという。企業は即戦力人材を求める傾向を強めており、人材のミスマッチが課題となっている。
人材派遣業界では大きな変化は見られないものの、今後の景気動向次第では企業の採用活動に影響が及ぶ可能性がある。職業安定所からは原油由来製品を使用する業界で雇用調整助成金活用の動きも出始めているとの指摘があり、雇用環境への警戒感が高まっている。新規求人数や有効求人倍率にも今後影響が及ぶ可能性があり、採用担当者は市場動向を慎重に見極める必要がありそうだ。
甲信越地域の先行き景況感は、観光需要や半導体需要の回復といった明るい材料がある一方で、物価上昇や資材不足、燃料価格高騰といった課題が依然として重くのしかかっている。企業は人材確保と収益確保の両立を迫られており、採用市場でも厳選採用の傾向が強まっている。今後は消費環境の改善と安定した供給体制の構築が、地域経済と雇用市場の回復を左右する重要なポイントとなりそうだ。
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