2026年7月26日
労務・人事ニュース
令和8年5月の埼玉県有効求人倍率1.11倍、就業地別原数値1.00倍が示す変化
令和8年5月の埼玉県有効求人倍率1.11倍を中小企業はどう読むべきか
令和8年6月30日、埼玉労働局は令和8年5月分の埼玉労働市場ニュースを公表しました。現在の雇用情勢については、求職者が引き続き高水準にあり、求人の動きにも足踏みがみられるなど、持ち直しの動きに弱さが感じられるとされています。さらに、物価上昇や中東情勢などが雇用に与える影響に留意する必要があるとの見方も示されました。令和8年5月の就業地別の有効求人倍率は季節調整値で1.11倍となり、前月と同水準でした。有効求人数は97,814人で前月比0.1%増、有効求職者数は88,377人で前月比0.7%増となっています。求人も求職者も増えましたが、求職者の増加幅が求人の増加幅を上回ったため、倍率は横ばいにとどまりました。中小企業の採用担当者は、この1.11倍という数字を「求人が求職を上回っているから採用は難しい」とだけ見るのではなく、求職者数が高水準で推移しながらも、求人の動きが弱い市場として丁寧に読み解く必要があります。
新規求人倍率は季節調整値で1.89倍となり、前月から0.14ポイント低下しました。新規求人数は32,238人で前月比6.0%減少し、新規求職者数は17,099人で前月比1.2%増加しています。新たに出された求人が減り、新たに仕事を探し始めた人が増えたことで、新規求人倍率は大きめに下がりました。ただし、1.89倍という水準は、新たな求職者1人に対して求人が約1.9件ある状態であり、直近で採用を始める企業同士の競争がなくなったわけではありません。採用担当者にとって重要なのは、倍率が下がったから応募が自然に増えると考えないことです。求職者は複数の求人を比較し、給与、休日、勤務時間、仕事内容、通勤条件、職場の雰囲気、入社後の働き方を細かく見ています。求人票に具体性がなければ、比較段階で候補から外れる可能性があります。
原数値で見ると、就業地が埼玉の有効求人倍率は1.00倍となり、前年同月より0.09ポイント低下しました。有効求人数は93,266人で前年同月比7.6%減少し、有効求職者数は93,088人で0.2%増加しています。求人数が減り、求職者数がわずかに増えたことで、求人と求職者がほぼ均衡する水準まで近づいています。新規求人倍率は1.74倍で、前年同月より0.18ポイント低下しました。新規求人数は30,201人で前年同月比14.5%減少し、新規求職者数は17,386人で5.2%減少しています。求人も求職者も前年より減っていますが、求人の減少幅が大きい点が特徴です。これは、企業が採用を控えているというよりも、採用人数や募集時期を慎重に見極めている状況と考えられます。
雇用形態別の新規求人数を見ると、フルタイムは17,650人で前年同月比14.2%減、パートは12,551人で14.8%減となりました。フルタイムもパートも同じように減少しており、採用需要全体が弱含んでいます。一方、希望雇用形態別の新規求職者数は17,386人で前年同月比5.2%減となり、フルタイム希望者は10,007人で7.1%減、パート希望者は7,379人で2.6%減でした。求職者の減少幅は求人ほど大きくありませんが、転職や再就職に新たに動く人が増えているわけではありません。中小企業が採用活動を行う際には、フルタイムだけで人材を探すのか、パートや短時間勤務を組み合わせて業務を回すのかを見直すことが重要です。業務を分解し、短時間でも任せられる仕事を整理できれば、子育て中の人、介護と両立したい人、シニア層などにも採用対象を広げられます。
産業別では、就業地が埼玉の主要11産業すべてで新規求人数が前年同月より減少しました。特に生活関連サービス業、娯楽業は前年同月比37.7%減、情報通信業は37.2%減、学術研究、専門・技術サービス業は32.5%減となっています。生活関連サービス業、娯楽業では理容業や洗濯、理容、美容、浴場関連などで求人減少が目立ち、情報通信業ではインターネット附随サービス業などで減少が見られました。学術研究、専門・技術サービス業ではその他の専門サービス業などの求人が減っています。求人が減っている業種では、採用競争が弱まっているように見えるかもしれませんが、求職者は将来性や働きやすさをより慎重に確認する傾向があります。採用担当者は、単に求人を出すだけでなく、なぜ今募集するのか、どのような仕事で、どのような人が活躍できるのかを明確に示すべきです。
受理地別の新規求人を見ると、合計は27,862人で前年同月比16.0%減となりました。建設業は2,279人で7.8%減、製造業は2,562人で11.7%減、情報通信業は315人で5.7%減、運輸業、郵便業は2,180人で5.9%減、卸売業、小売業は4,388人で3.3%減、学術研究、専門・技術サービス業は441人で50.2%減、宿泊業、飲食サービス業は1,695人で26.1%減、生活関連サービス業、娯楽業は303人で47.5%減、医療、福祉は8,390人で16.5%減、サービス業は3,840人で20.5%減でした。全体として減少傾向が目立つ中でも、医療、福祉は8,390人と非常に大きな求人規模を持っています。介護、医療、福祉関連の現場では、人手不足が短期的に解消したとは考えにくく、求人が減っていても必要な人材を探し続ける企業や事業所は多いはずです。
医療、福祉の採用では、資格や経験を条件にするだけでは応募者の不安は解消されません。夜勤の有無、勤務体制、利用者や患者への対応内容、教育担当者、職員同士の連携、身体的負担への配慮、資格取得支援などを具体的に示すことが重要です。製造業では、扱う製品、担当工程、機械操作の有無、安全教育、交替勤務、残業時間を明記することで、未経験者にも仕事のイメージが伝わります。宿泊業、飲食サービス業では、シフトの柔軟性、土日勤務の頻度、繁忙期の働き方、まかないや研修制度などが応募判断に影響します。中小企業は大手企業に比べて知名度で不利になる場合がありますが、仕事内容や働く環境を丁寧に伝えることで、応募者の信頼を得やすくなります。
正社員の状況を見ると、就業地別正社員有効求人倍率は0.84倍で、前年同月より0.06ポイント低下しました。受理地別正社員有効求人倍率は0.75倍で、前年同月より0.07ポイント低下しています。新規求職者のうち正社員希望者の割合は57.4%で前年同月より1.2ポイント低下しました。一方、新規求人のうち正社員求人の割合は48.1%で前年同月より2.6ポイント上昇しています。正社員求人の割合は高まっているものの、正社員希望者の割合は下がっており、企業と求職者の希望が必ずしも一致していない可能性があります。中小企業が正社員を募集する際には、「正社員募集」という言葉だけで安心感を与えるのではなく、入社後の役割、研修期間、昇給や賞与の考え方、休日、残業、転勤の有無、評価制度を具体的に伝える必要があります。
雇用保険の状況では、雇用保険被保険者数が1,630,600人で前年同月比0.5%増加しました。雇用保険受給者実人員は24,728人で前年同月比11.4%増加し、雇用保険受給資格決定件数は11,063件で5.1%減少しています。新たに失業給付の受給資格を得る件数は減っている一方で、実際に受給している人は増えています。これは、再就職までに時間がかかる人が一定数いる可能性を示しています。企業側にとっては、経験や年齢だけで応募者を狭く見るのではなく、どの業務なら受け入れられるかを考える機会でもあります。未経験者、ブランクのある人、シニア人材、短時間勤務希望者を受け入れられる業務を整理できれば、採用の可能性は広がります。
令和8年5月の埼玉県の雇用情勢から、中小企業の採用担当者が取るべき方向性は明確です。有効求人倍率1.11倍は求人が求職を上回る状態を示していますが、新規求人倍率は低下し、原数値では就業地別の有効求人倍率が1.00倍まで下がっています。主要11産業すべてで新規求人数が前年同月より減少しているため、採用市場は強い拡大局面ではありません。しかし、求職者が高水準にある今こそ、求人票の情報を見直し、応募者に選ばれる準備を整えることが重要です。採用担当者は、必須条件と歓迎条件を分け、未経験者を育てられる業務、短時間勤務でも任せられる業務、経験豊富な人材を生かせる業務を整理する必要があります。応募後は迅速に連絡し、面接日程を柔軟に調整し、選考状況を社内で共有することで、限られた応募機会を採用につなげやすくなります。採用競争が続く中で、求人募集を効果的に行うには、求人情報の発信に加えて応募者対応や採用管理の仕組みづくりも欠かせません。求人募集や採用サイト(ATS)の活用をお考えの企業様は、当社までお気軽にご相談ください。
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