2026年8月15日
労務・人事ニュース
認定こども園9園を分析 処遇改善は一時金・手当支給が中心
保育教諭の処遇改善事業と人材確保 ―政令指定都市の認定こども園の事例分析(JILPT)
2026年7月24日、政令指定都市の認定こども園9園と、そこで働く保育教諭25人への聞き取り調査を基に、処遇改善事業の運用実態と人材確保の課題を分析した研究報告が公表されました。
調査は、2013年から保育士や幼稚園教諭を対象に進められてきた処遇改善事業について、支給対象や支払い方法、職員の受け止め方を確認する目的で行われました。
対象となった私立園では、処遇改善Ⅱを除き、非正規職員を含む全職員へ原資を配分する例が多く見られました。一方、基本給に組み込むケースは少なく、一時金や毎月の手当として支給する方法が中心でした。
基本給への組み込みが避けられる背景には、その後の昇給や賞与、退職金へ影響し、園の人件費負担が増えることへの懸念があります。制度が将来廃止される可能性を不安視する声も確認されました。
それでも私立園側は、職員の処遇を改善するためには事業が必要だと捉え、継続を望んでいます。私立園で働く保育教諭13人のうち9人が処遇の改善を実感しており、一定の効果があったと分析されています。
一方、制度の運用には複数の課題が残りました。処遇改善に関する報告や配分、職員への説明などの事務作業が多く、通常業務に加えて対応しなければならないため、現場の負担が重くなっています。
配分方法が複雑であることも問題として挙げられました。金額の違いを職員へ説明する作業が必要となり、事務担当者の負担が増えることから、一律配分を求める意見も出ています。
人材確保では、公立か私立かを問わず、必要な人数を採用できない状況が共通していました。受験倍率の低下や中堅層の不足により、経験が十分でない段階で管理職へ登用せざるを得ない例も確認されています。
私立園では、採用だけでなく定着も大きな課題です。地元の短期大学の撤退や都市部からのUターン減少が人材供給を細らせ、採用競争の中で質と量の両面を満たすことが難しくなっています。
保育教諭が抱える主な不満は、賃金とワークライフバランスでした。仕事の責任や業務量に対して賃金が見合っていないとの声が多く、勤務時間内に業務を終えられず、残業や持ち帰り仕事が生じる実態も示されました。
自身の子どもが体調を崩した際に休みを取りにくいという不満もありました。保育の仕事を優先するため、自分の家庭生活に負担が及ぶ状況が、離職意向につながる要因として指摘されています。
25人のうち22人は、子育てと仕事を両立するために家族の支援を受けた経験がありました。周囲には、仕事と家庭の両立が難しくなり、退職を選んだ人もいたとされています。
業務負担を減らす取組は3園で確認されました。学年単位のチーム制により事務作業へ集中する時間を1時間30分確保したり、会議を1時間早めたりすることで、定時退勤を促す事例がありました。
また、職員全体で業務を洗い出し、早番の勤務体制を見直した園もありました。別の園では事務職員を3人配置し、保育教諭と事務担当の役割を分けることで、管理職と現場職員の負担を軽くしていました。
処遇改善だけでなく、業務の削減や役割分担、人員配置を組み合わせることが定着には重要だとされています。ただし、現行の取組だけで負担が十分に軽くなるとは限らず、必要な業務の再検討も求められます。
望ましい賃金水準については、保育教諭25人の回答から複数の考え方が示されました。公立園の保育教諭、看護師、公立小中学校教員と同程度を望む声に加え、手取り額を現在の額面相当まで引き上げてほしいとの意見がありました。
手取り額を額面に近づける形で、月額10万円程度の引き上げを望む回答は10人でした。看護師や公立小中学校教員との比較でも、およそ10万円の差が示され、希望額は同程度に収れんしています。
ただし、こうした金額は現場の主観的な回答に基づくものであり、直ちに一律の基準となるものではありません。それでも、離職や職業選択を考えるうえで、現場がどの水準を妥当と感じているかを示す材料になります。
研究では、賃金改善が生活を支える効果を持つ一方、人材定着だけを目的とするには不十分な可能性も示されました。離職意向には業務量や家庭との両立も関わるため、賃金と働き方の両面を改善する必要があります。
保育ニーズについても、園児数だけでは判断できない難しさが明らかになりました。地域全体で定員に余裕があっても、利用者が希望する園へ入れない場合があり、量的な需給と選択の質を両立させる課題が残ります。
少子化が進んでも、安定した保育サービスを維持するには保育教諭の確保が欠かせません。今回の分析は、処遇改善事業の継続と拡充に加え、事務負担の軽減、勤務体制の見直し、人員配置の改善が重要であることを示しました。
⇒ 詳しくは独立行政法人労働政策研究・研修機構のWEBサイトへ


