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2025年6月27日

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全国493自治体で書店ゼロ、書店活性化プランで地域文化再生へ挑む政府の支援施策とは

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「書店活性化プラン」を公表します(経産省)

経済産業省は令和7年6月10日、街の書店を地域の創造性と文化の拠点として再評価し、その持続的な発展を後押しするための包括的な政策「書店活性化プラン」を公表しました。このプランは、中小企業庁、内閣官房、文部科学省、文化庁、公正取引委員会、国土交通省など関係省庁が連携して策定したもので、書店の経営支援、読書文化の振興、図書館との連携強化、業界構造の見直し、そしてキャッシュレス対応の促進など、多岐にわたる課題に対する解決策が整理されています。

書店の数はこの10年間で大きく減少しており、2014年には全国に14,658店舗あった書店が2024年には10,417店舗にまで落ち込みました。つまり、10年間で約29%もの店舗が姿を消したことになります。加えて、全国の493自治体、すなわち全自治体の約28%では書店が1軒も存在しないという事実は、書店の存在が危機的状況にあることを物語っています。このような状況に対応するため、今回の書店活性化プランでは、書店が地域社会で果たす役割を明確にし、未来に向けた具体的な行動指針を打ち出しています。

プランの第一の柱は、読書人口の減少と書店の魅力向上に関する対策です。ここでは、例えば幼少期から読書に親しむ機会の提供を目的として、絵本専門士や認定絵本士といった読書推進人材の育成・周知が進められます。さらに、文字・活字文化の振興に向けたイベント支援や、地域文芸作品の活用を通じた文化拠点としての書店の機能強化にも予算が投じられます。また、若手クリエイターの育成を目的とした補助金の活用により、新たな作品の創出とその再評価を促す動きも特徴的です。

第二の柱は、図書館や自治体との連携強化です。自治体、教育委員会、図書館、学校、NPOなど関係機関が一体となって、地域における読書環境の改善に取り組む協議会の設置が推進されます。図書館による書籍の複本購入や新刊貸出が書店に与える影響を把握するための調査も行われ、連携のあり方を見直す動きが強化されます。

第三の柱は、業界慣行に対する見直しです。委託配本制度により書店から返品が可能となっていますが、これが経営負担につながっていることから、返品率の抑制に向けた研究会の設置が予定されています。返品率は書籍で約33%、雑誌で約44%にも上る現状において、効率的な流通体制の再構築が求められています。また、再販売価格維持契約に関しても、その柔軟な運用を促すことで書店側の裁量を広げ、経営の自由度を高める方針が示されています。

第四の柱は、書店経営の効率化・省力化です。たとえば、RFID(無線自動識別)技術の導入を進めることで、書店業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を図り、在庫管理の効率化や万引き防止、購買傾向の分析といった新たな可能性が開かれます。RFIDの活用により書店の利益構造も見直され、小規模書店にとっても導入のメリットが期待されています。あわせて、POSレジや自動精算機などの導入支援、IT補助金制度の利用促進などにより、経営の省力化が支援されます。

第五の柱では、新規出店やキャッシュレス決済への対応が取り上げられています。新規開業にあたっては、保証金などの初期投資負担を軽減する制度の紹介や、ショッピングモール等への書店誘致支援が盛り込まれています。また、経営者の高齢化に伴う事業承継やM&Aの支援策、さらには書店経営に特化した指針の整備も行われます。キャッシュレス決済については、手数料率の見直しと周知活動が進められ、小規模店舗でも負担が軽減されるよう配慮されています。特に1%台後半~2%台半ばという手数料率が既に複数の事業者から提示されているにもかかわらず、認知度が低いため、今後は業界団体を通じた情報発信が鍵となります。

このように、今回発表された書店活性化プランは、書店業界が直面する現実的な問題を網羅的に捉えたうえで、具体的かつ実行可能な解決策を提示しています。読書文化の維持・発展は、単なる経済政策にとどまらず、社会全体の知的基盤を支える重要な取り組みであり、地域における教育力や文化力の再構築にもつながるものです。書店が再び地域社会の中で重要な役割を果たすためには、民間と行政が共に協力し合い、それぞれの強みを生かしながら課題に取り組んでいくことが不可欠です。今後は、無書店自治体における書店の新設や維持にも焦点が移り、首長をはじめとする地方行政の積極的な関与が一層求められることになるでしょう。

⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ

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