2025年6月21日
労務・人事ニュース
母子世帯5万9千件超、単身者84万人超―多様な世帯構造から導く雇用の多様性と包摂の重要性(令和7年3月分概数)
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「夜勤なし」/正看護師/病院/車で通えます
最終更新: 2025年6月20日 22:32
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「駅チカ」/准看護師・正看護師/クリニック/ブランクのある方も歓迎
最終更新: 2025年6月20日 22:32
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「ブランクOK」/准看護師・正看護師/介護施設/残業ありません
最終更新: 2025年6月20日 22:32
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「車通勤OK」/正看護師/介護施設/研修が充実で安心
最終更新: 2025年6月20日 22:32
被保護者調査(令和7年3月分概数)(厚労省)
日本社会における経済構造や人口動態の変化に伴い、生活保護制度の利用状況にも様々な変化が生じています。特に高齢化が進行する中で、社会保障制度全体の持続可能性が問われると同時に、労働市場においては人材不足が深刻化しており、企業の採用活動にも大きな影響を及ぼしています。こうした背景のもと、厚生労働省が令和7年3月に公表した生活保護の被保護者調査結果は、社会全体の福祉状況のみならず、採用活動や人材戦略を見直す上でも非常に示唆に富むデータといえるでしょう。
まず、令和7年3月時点での生活保護の被保護実人員数は2,000,090人となっており、前年同月と比較すると18,592人、率にして0.9%の減少が見られました。この数字は一見すると改善傾向を示しているように見えますが、同時に社会の支援を必要とする層が依然として200万人規模に及ぶという現実も浮き彫りにしています。また、同時点における被保護実世帯数は1,647,346世帯であり、こちらも前年同月と比べて3,038世帯、0.2%の減少が確認されました。人員数と世帯数の両面で減少傾向があることは注目に値しますが、生活保護の必要性が完全に解消されたわけではなく、むしろその中身を分析することで、今後の社会福祉政策や企業の社会的責任のあり方に対する重要な視座が得られるのです。
特に注目すべきは、保護の申請件数および保護開始世帯数の増加です。申請件数は22,484件で、前年同月比では867件、4.0%の増加が記録されており、保護開始世帯数も20,395世帯で、1,062世帯、5.5%の増加となっています。これらのデータは、全体的な保護人員や世帯数は減少傾向にあるにもかかわらず、新たに生活保護を必要とする人々が着実に増加していることを意味しています。つまり、生活保護から脱却する人々が一定数存在する一方で、新たに支援を求める層が増加しているという構造的な入れ替わりが起こっており、これは企業にとっても「働けるが働いていない」潜在的労働力が一定数存在することを示唆しています。
さらに世帯類型別に見ると、高齢者世帯の割合が非常に高いことが明らかになっています。生活保護を受けている1,642,234世帯のうち、高齢者世帯が907,163世帯で全体の55.4%を占めており、単身世帯は845,021世帯で51.6%にのぼります。高齢者単身世帯が生活保護受給世帯の過半数を占めている状況は、少子高齢化が進む日本社会において、孤立した高齢者がいかに多いかを物語っているだけでなく、今後の医療・介護費用の増大や地域社会の担い手不足に直結する問題でもあります。また、母子世帯は59,552世帯で全体の3.6%、障害者・傷病者世帯は411,994世帯で25.1%を占めており、こうした世帯が安定した就労機会を得られていない現状が浮き彫りとなっています。
このようなデータを受けて、企業の採用担当者が注目すべき視点として、生活保護世帯の中には、本来ならば働くことが可能な人々、すなわち「潜在的就労可能層」が存在しているという点が挙げられます。特に若年層や障害者、シングルマザーなど、就労支援を通じて自立支援が可能な層に対して、企業が積極的にリスキリングや職場環境の整備、柔軟な雇用制度の導入を行うことで、社会的責任を果たすと同時に慢性的な人手不足を補う実効性のある人材確保施策にもつながるでしょう。
また、申請件数や保護開始件数の増加というトレンドは、経済的な不安定さや雇用の不安定性を背景としている可能性が高く、今後の景気後退局面ではさらに顕著になることが予想されます。これは、非正規雇用者やフリーランスなど、社会保障制度の網から漏れやすい就業形態にある人々が増加していることの反映でもあります。したがって、企業が雇用の安定性や福利厚生制度を重視し、働き方の多様性に対応した施策を打ち出すことは、単に人材の確保という観点にとどまらず、社会全体の安定にも貢献する姿勢として評価される可能性が高まります。
加えて、生活保護世帯の中には、障害や病気を抱える人々も多く含まれており、障害者・傷病者世帯は全体の25.1%に相当する411,994世帯に上ります。このような人々が社会と接点を持ち、自立した生活を送るためには、就労支援のみならず、医療、福祉、地域コミュニティとの連携が不可欠です。企業においても、障害者雇用の推進や職場のバリアフリー化、リモートワークの導入といった施策が、こうした層にとっての重要な支援策となり得ます。特に現代のようにデジタルツールの活用が進む社会においては、在宅で行える仕事の拡大が、障害や疾病を抱える人々にとっての大きな可能性となるでしょう。
最後に、生活保護に依存する人々を単に「保護される側」として捉えるのではなく、適切な支援によって「再び社会の担い手として活躍できる存在」として再評価する視点が今後の企業経営には不可欠です。これは単なる慈善活動ではなく、社会と企業が共に持続可能な形で成長していくための戦略的アプローチでもあります。採用活動を通じて、こうした人々に再チャレンジの機会を提供し、企業自体も多様な人材を受け入れる体制を整えていくことこそが、真の意味での「人材戦略」の深化につながるのです。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ