2026年6月25日
労務・人事ニュース
2026年4月北海道の有効求人倍率0.98倍で中小企業が取るべき採用施策
2026年4月北海道の有効求人倍率0.98倍と職種別採用難易度
北海道労働局が2026年5月29日に公表した「令和8年4月の雇用失業情勢」によると、北海道の有効求人倍率は就業地別の季節調整値で0.98倍となり、前月の0.99倍から0.01ポイント低下した。全国平均の1.18倍を大きく下回る状況が続いており、北海道の雇用市場では求職者数に対して求人の動きが弱含んでいることが明らかになった。北海道労働局も「求職に対し求人の動きに弱さがみられる」と判断しており、加えて物価上昇などが今後の雇用へ与える影響についても注視が必要としている。
有効求人倍率は企業の採用環境を判断する重要な指標の一つである。一般的に1倍を超えると求人数が求職者数を上回る売り手市場、1倍を下回ると求職者数が求人数を上回る買い手市場とされる。今回の北海道の0.98倍という数値は、全国的な人手不足が続く中でも、北海道では依然として求職者数が求人を上回る状態にあることを示している。ただし、この数字だけを見て採用が容易になったと考えるのは危険である。実際には職種や業種によって深刻な人手不足が継続しており、企業によって採用難易度には大きな差が存在している。
2026年4月の新規求人数は季節調整値で31,885人となり、前月比5.6%増加した。3か月ぶりに前月を上回ったことから一見すると採用意欲が回復しているように見える。しかし原数値で見ると27,766人となり前年同月比3.8%減少している。さらに10か月連続で前年同月を下回っていることから、企業全体の採用意欲は依然として慎重な状態が続いていると考えられる。
月間有効求人数についても同様の傾向がみられる。季節調整値では88,415人と前月と同水準だったが、原数値では75,062人となり前年同月比6.7%減少した。こちらも10か月連続で前年を下回っている。北海道企業の多くが人材不足を感じながらも、経営環境の先行き不透明感から積極採用に踏み切れていない現状が浮かび上がる。
一方で求職者側の動きにも変化が見られる。新規求職申込件数は18,006人で前月比3.7%増加し、2か月連続で前月を上回った。原数値でも23,745人となり前年同月比0.1%増加している。月間有効求職者数は89,946人で前月比0.8%増加し、原数値では90,956人となり前年同月比1.8%増加した。これは求職活動を行う人が増えていることを意味している。
中小企業の採用担当者にとって重要なのは、この状況を単純な「応募者増加」として捉えないことである。確かに求職者数は増えているが、その多くはより良い労働条件や安定した雇用を求めて転職活動を行っている可能性が高い。給与だけではなく、働きやすさやキャリア形成、教育制度、福利厚生など企業全体の魅力が厳しく比較される時代になっている。求人票を出せば応募が集まる時代ではなくなっているため、採用担当者にはより戦略的な採用活動が求められる。
産業別に見ると状況はさらに明確になる。医療・福祉分野の新規求人数は8,833人で前年同月比1.6%増加した。社会保険・社会福祉・介護事業では8.8%増加しており、人材需要は依然として高い水準にある。サービス業も3,522人で3.3%増加した。職業紹介・労働者派遣業は44.2%増加しており、人材確保への動きが活発化している。
一方で宿泊業・飲食サービス業は1,525人で前年同月比17.5%減少した。卸売業・小売業も9.1%減少、運輸業・郵便業は16.0%減少、製造業も5.6%減少している。業種によって採用環境は大きく異なり、同じ北海道内でも人材獲得競争の状況は一様ではない。
しかし採用担当者が本当に注目すべきなのは業種別求人動向だけではない。職種別の有効求人倍率を見ると、人材不足が深刻な分野が明確に表れている。建築・土木・測量技術者は4.79倍となり、求職者1人に対して約5件の求人が存在する状況である。整備工・修理工は4.18倍、建設・採掘関連職種は3.68倍、警備員は3.30倍となった。さらに型枠大工・とび工は6.92倍という極めて高い倍率となっている。
これらの数字は単なる人材不足ではなく、企業同士が人材を奪い合う競争状態に入っていることを意味している。このような職種で採用活動を行う中小企業は、求人広告の掲載だけでは十分な成果を得ることが難しい。採用担当者は給与改善だけでなく、資格取得支援制度や研修制度、職場環境改善などを具体的に打ち出し、自社で働く価値を明確に示す必要がある。
逆に事務職では有効求人倍率が0.34倍となっている。一般事務員は0.29倍であり、求職者数が求人を大きく上回る状態が続いている。このような職種では比較的応募を集めやすい環境にあるため、採用担当者は単に人数を確保するだけではなく、自社に適した人材を見極める採用プロセスを重視するべきだろう。
地域別に見ても差は大きい。2026年4月時点で有効求人倍率が最も高かったのは岩内の1.55倍であり、浦河と根室が1.49倍、紋別が1.39倍となっている。一方で札幌東は0.65倍、函館は0.68倍、札幌北は0.73倍である。札幌圏では求職者が比較的多い一方で、地方部では深刻な人材不足が続いている。
この地域差は中小企業の採用戦略にも大きく影響する。地方企業の場合、地域内だけで採用活動を完結させることは難しくなっている。オンライン面接や移住支援制度、住宅補助制度などを活用し、広域的な人材獲得を目指す必要がある。特に若年層人口の減少が続く北海道では、従来の待ちの採用では限界が見え始めている。
正社員求人の状況も重要なポイントである。2026年4月の正社員求人は15,123人となり前年同月比3.5%減少した。しかし新規求人全体に占める正社員求人の割合は54.5%となり前年より0.2ポイント上昇している。企業が採用人数を絞りながらも、長期的に活躍できる人材の確保を重視していることがうかがえる。
中小企業の採用担当者は、このデータから採用市場が単純な売り手市場でも買い手市場でもないことを理解する必要がある。全体では有効求人倍率が1倍を下回っているものの、人材不足が深刻な職種では激しい採用競争が続いている。一方で事務職などでは求職者が多く、選考の質を高める余地がある。つまり業界平均や地域平均だけを見るのではなく、自社の職種ごとの市場環境を把握することが重要になる。
また近年は求職者が企業を選ぶ際に口コミサイトやSNS、企業ホームページを参考にするケースが増えている。採用担当者は求人票の作成だけではなく、企業文化や働く社員の声、キャリア形成の実例などを積極的に発信することが求められる。特に中小企業は知名度で大企業に劣る場合が多いため、経営者の考え方や地域への貢献、社員同士の距離の近さなど独自の魅力を伝えることが差別化につながる。
今回の北海道の有効求人倍率0.98倍という数字は、一見すると採用環境が緩和しているようにも見える。しかし詳細なデータを確認すると、求人減少と求職者増加が同時に進行しており、業種や職種による格差も拡大している。採用担当者は倍率の高低だけに注目するのではなく、職種別や地域別の実態を把握したうえで、自社の強みを具体的に伝える採用活動へ転換することが重要である。今後も物価上昇や景気動向の影響が続く中で、人材確保は企業経営そのものを左右する重要課題であり、採用活動の質が企業の成長力を決定する時代に入っている。
⇒ 詳しくは北海道労働局のWEBサイトへ


