2026年7月3日
労務・人事ニュース
2026年5月九州景況感、応募数20%増と大卒求人倍率0.04ポイント低下
景気ウォッチャー調査(令和8年5月調査)― 九州(現状)―(内閣府)
内閣府が公表した令和8年5月の景気ウォッチャー調査によると、九州地域の景況感は観光や宿泊、自動車販売などで回復の動きがみられる一方、物価上昇や原材料不足への懸念が企業活動や消費行動に影響を与えており、業種によって大きな温度差が生じている。特に中東情勢の影響による石油関連製品やナフサ由来資材の不足が幅広い業界へ波及しており、景気回復への期待と先行き不透明感が入り混じる状況となっている。
消費関連では、自動車販売が比較的好調な分野となった。新型車の販売開始や注文停止車種の受注再開が追い風となり、来客数が増加している。メーカーの出荷体制も安定し始めており、これまで積み上がっていた受注残の納車が進んでいることから販売実績も改善している。自動車業界は長らく半導体不足や供給制約に苦しんできたが、足元では改善傾向がみられている。
百貨店業界も回復基調にある。ゴールデンウィークや販売促進施策の効果によって来客数が増加しており、一部店舗では前年割れが続いていた来客数が5月に104.0%まで改善した。会員向けセールや物産展も好調で、原材料価格上昇による商品単価の上昇があるにもかかわらず売上は堅調に推移している。さらに気温上昇によって夏物衣料や日差し対策商品の需要も高まり、季節要因が消費を後押ししている。
家電量販店では全国的な傾向と同様にエアコン需要が拡大している。省エネ基準改定への関心が高まったことで買換え需要が増加し、販売実績は上向いている。ただし、業界関係者からは景気回復による需要増というよりも、将来的な値上げや制度変更を見越した前倒し購入との見方も示されている。実際に購入を急ぐ消費者が多くみられる一方で、その他の商品については慎重な購買姿勢が続いている。
観光関連産業も好調である。観光型ホテルではゴールデンウィーク期間中の高単価宿泊が売上を押し上げている。都市型ホテルでは大型連休に加え、コンサートや学会などの開催が重なったことで年間を通じても高水準の販売実績となった。これまで停滞していた団体旅行需要も徐々に回復しており、宿泊業界には明るい兆しが広がっている。タクシー業界でもイベント開催の影響によって利用者が増加し、昼夜ともに売上が改善した地域もみられた。
商店街やショッピングセンターでも人の流れは活発である。気候に恵まれたこともあり来街者数が増加したほか、近場でのレジャーを選択する消費者が増えたことでゴールデンウィーク商戦は好調だった。県内外からの来訪者による消費が地域経済を支える要因となっている。精肉店では飲食店向け販売や新規顧客の獲得によって売上増加が報告されるなど、一部小売業には回復の動きもみられる。
しかしその一方で、多くの業種では消費者の節約志向が依然として強い。スーパーでは来客数や買上点数が前年を下回る店舗が目立ち、生活防衛意識の高まりが鮮明になっている。販売量が前年比98.9%まで低下したとの報告もあり、単価上昇によって売上を維持している状況が続いている。特売やポイント施策を実施した際には来店客が増えるものの、通常時の消費行動は慎重なままである。
コンビニ業界でも同様の傾向がみられる。値上げが続くなかで複数購入が減少し、割引商品へ需要が集中している。常連客であっても購入点数が減少し、一回当たりの購入金額が低下しているとの声が聞かれた。商品によっては価格が以前の約2倍になったと感じる消費者もおり、家計への負担感が強まっている。物価高は日常消費に大きな影響を及ぼしている。
衣料品関連も厳しい状況に置かれている。気温上昇による夏物需要が一部ではみられるものの、物価高や中東情勢への不安を背景に衣類への支出を抑える動きが広がっている。客の財布のひもは固くなっており、衣料品販売の伸び悩みにつながっている。高齢者を中心とした消費者からは、年金収入だけでは生活が厳しいとの声も出ており、家計防衛意識が強まっていることが分かる。
企業活動では半導体関連産業に明るい動きがみられる。一般機械器具製造業では半導体関連設備向けの受注が増加しており、生産活動を下支えしている。また、電気機械器具製造業でも今後の受注増加が見込まれている。しかしその一方で、中東情勢の影響による原材料調達の難しさが大きな課題となっている。原材料価格は一部で50%程度上昇しており、収益を圧迫している状況である。
建設業や住宅関連産業では資材不足が深刻化している。ナフサ不足による建築資材の供給遅延や価格上昇が発生しており、住宅着工件数は前年を下回る状況が続いている。設計事務所からはリフォーム資材の高騰や納期未定の問題が報告されており、住宅市場全体の停滞感が強まっている。建築コストや住宅ローン金利の上昇も購入意欲を抑制する要因となっている。
輸送業界でも厳しい状況が続く。物価高による消費低迷に加え、中東情勢によるメーカー減産や商品不足の影響で荷動きが低調となっている。倉庫内の商品在庫が不足する状況も発生しており、物流全体に影響が広がっている。工事予定だった案件が資材価格上昇によって中止される事例もあり、関連産業への波及も懸念されている。
雇用市場では興味深い変化がみられる。人材派遣会社によると、求職者からの応募数は約2割増加し、成約数も1割強増えている。転職や就職活動への関心が高まっていることがうかがえる。一方で、別の人材派遣会社からは県内の求人数が減少しているとの報告もあり、地域や業種によって差がみられる。企業側は採用に慎重な姿勢を強めており、長期案件よりも短期やスポット案件が中心になりつつある。
職業安定所によると、求人数は前年並みから増加傾向を維持している。前年度は減少していた求人数が今年度は2か月連続で増加しており、企業の採用意欲は一定程度保たれている。ただし、中東情勢が今後雇用市場へどのような影響を与えるのか慎重に見極める必要があるとの見方も示されている。
新卒採用市場では企業の採用意欲が比較的堅調である。2027年卒業予定者向けの大卒求人倍率は前年から0.04ポイント低下したものの、企業による採用活動は引き続き活発である。ただし大企業では即戦力志向が強まり、新卒採用人数を絞る動きもみられる。また専門学校関係者からは採用基準が上昇しているとの指摘もあり、求職者にはより高いスキルや適性が求められる傾向が強まっている。
さらに求人広告市場では若年層向け採用が中心となっている。若年層の転職活動は活発である一方、中高年層の動きは鈍く、企業側も若年人材の確保を優先している。採用担当者にとっては人材不足への対応と採用コストの最適化を両立させることが重要な課題となっている。物価高や原材料費上昇による経営負担が続くなかで、どのように採用戦略を構築するかが今後の競争力を左右しそうだ。
九州地域の景気は、観光需要や自動車販売、半導体関連産業などが下支えする一方で、物価高や原材料不足、中東情勢による供給不安が大きな課題となっている。雇用市場では求人数が前年並みから増加傾向を維持し、応募数も約2割増加するなど活発な動きがみられるものの、企業の採用姿勢には慎重さも残る。今後は資材供給の安定化と消費マインドの改善に加え、求人市場の変化が地域経済の行方を左右する重要な要素となりそうだ。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ


