2026年7月3日
労務・人事ニュース
令和8年5月近畿景気調査、エアコン売上3倍と求人減少が同時進行する雇用環境を分析
景気ウォッチャー調査(令和8年5月調査)― 近畿(現状)―(内閣府)
内閣府が公表した令和8年5月の景気ウォッチャー調査によると、近畿地域の景況感は観光需要やインバウンド需要を背景に堅調な動きがみられる一方で、物価上昇や原材料不足への懸念が企業活動や消費行動に影響を与えており、業種によって景況感に大きな差が生じている。百貨店や家電量販店、宿泊業などでは好調な声が目立つものの、小売業や住宅関連産業では慎重な見方も広がっており、地域経済は複雑な局面を迎えている。
百貨店業界では好調な状況が続いている。催事イベントや売場改装の効果によって来客数は約10%増加し、婦人服や食料品、総菜売場の売上も堅調に推移している。インバウンド需要も引き続き高い水準を維持しており、中国からの来訪者は減少傾向にあるものの、東南アジアや欧米からの観光客がその減少分を補っている。免税売上も前年を上回る見込みであり、円安や株高を背景に高額商品の販売も好調となっている。
特に富裕層を中心とした消費は活発である。海外ブランド品では値上げ前の駆け込み需要が続き、高級時計や美術品などの販売も伸びている。百貨店によっては売上が前年比で5%増加したほか、国内客の売上が1割増となるなど、消費意欲の高さが確認されている。気温上昇に伴う夏物衣料や暑さ対策商品の需要も高まり、季節要因が売上を押し上げている。
家電量販店でも非常に強い需要がみられる。2027年に予定されている新たな省エネ基準の導入を前に、エアコンの買換え需要が急増している。店舗によってはエアコン売上が前年の約3倍に達したとの報告もあり、これまでにない販売水準となっている。10年から15年ぶりに買換えを検討する消費者も多く、高価格帯モデルの販売が伸びていることも特徴だ。
観光関連産業も堅調である。ゴールデンウィーク期間中は日並びにも恵まれ、観光型ホテルでは個人客と団体客の双方が増加した。一般レストランでも欧米からの観光客利用が増えており、飲食需要の回復がみられている。コンビニエンスストアでもインバウンド需要や地域イベントの開催によって来客数が増加し、人の流れが活発化していることがうかがえる。
一方で、こうした好調な業種がある反面、消費者の節約意識は依然として強い。スーパーでは来客数が増えても売上が伸びない店舗がみられ、安価な店舗への買い回り行動が広がっている。必要な物だけを購入する傾向が続いており、商品価格の上昇による客単価増加が販売数量の減少を補い切れていないケースも多い。
コンビニやドラッグストアでも同様の傾向がみられる。食費を節約する利用者が増え、生活必需品についても慎重に購入を判断する動きが広がっている。特に物価上昇が続くなか、来店頻度や買上点数が減少しているとの報告が相次いでいる。消費者は限られた予算のなかで支出を調整しており、日常消費に対する慎重な姿勢が鮮明になっている。
住宅関連市場では厳しい状況が続いている。建築資材や住宅設備の価格上昇に加え、原材料の供給不足による工期遅延も発生している。住宅展示場では成約数が減少傾向にあり、郊外物件を中心に販売の鈍化がみられる。一方で、都心部の富裕層向け高額物件は比較的堅調であり、住宅市場でも二極化が進んでいる。
企業活動においても中東情勢の影響が広範囲に及んでいる。製造業では石油由来原料や包装資材の不足が懸念されており、一部では生産停止リスクを指摘する声も出ている。化学工業や繊維工業では原材料価格の上昇が利益を圧迫しており、価格転嫁が十分に進まない企業では収益環境が悪化している。建設業でも資材不足による納期遅延や工期変更が発生しており、事業運営への影響が拡大している。
輸送業界でも原油価格上昇による影響は深刻である。エンジンオイルや関連資材の不足によって車両運行に支障が出始めており、物流全体への影響を懸念する声が強まっている。さらに広告業界やサービス業でも受注減少が報告されており、物価高とコスト増加が企業収益を圧迫する構図が広がっている。
雇用市場については、人材不足が続く一方で採用環境には変化がみられる。民間職業紹介機関によると、2028年卒業予定者向けの夏季インターンシップは活況を呈しており、合同企業説明会への参加者数は前年を大幅に上回っている。企業の将来を見据えた採用活動は引き続き活発であり、若手人材の確保競争は続いている。
しかし、人材派遣業界では事務職求人の減少が目立ち始めている。AI活用による業務効率化が進み、大企業を中心に事務系求人を削減する動きが広がっているためだ。現在の派遣市場では産休や育休代替の求人が中心となっており、通常の事務職募集は大幅に減少している。事務職への転職や就職を希望する人にとっては、これまで以上に競争が激しくなっている。
職業安定所では求人数そのものに大きな変化はないとの報告がある一方、新規求人数については前年を下回る状況が続いている。有効求人倍率は横ばいを維持しているものの、卸売業や小売業、宿泊業、飲食業、運輸業などでは求人減少が続いている。一方で、建設業や半導体関連製造業、医療福祉分野では求人増加がみられ、業種間格差が拡大している。
民間職業紹介機関では求人数が3か月前と比較して約30%減少したとの報告もあり、企業の採用姿勢に慎重さがみられ始めている。また、大学の就職担当者からは業績悪化への懸念によって採用予定人数を減らす企業も出てきているとの指摘があった。採用担当者にとっては、人材確保を継続しながらも経営環境の変化を見極める難しい局面に入っている。
近畿地域の景気は、インバウンド需要や観光需要、省エネ家電需要などが地域経済を支える一方で、物価高騰や資材不足、中東情勢に起因する供給不安が企業活動を圧迫している。雇用市場では有効求人倍率が横ばいを維持しながらも、新規求人数の減少や職種による需要格差が拡大している。今後は資材供給の正常化や物価動向に加え、企業の採用意欲がどのように推移するのかが地域経済の重要な注目点となりそうだ。
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