2026年7月3日
労務・人事ニュース
2026年5月東海の雇用市場、人手不足継続と求人横ばいの中で企業採用が変わる転換点
景気ウォッチャー調査(令和8年5月調査)― 東海(現状)―(内閣府)
内閣府が公表した令和8年5月の景気ウォッチャー調査によると、東海地域の景況感は業種によって大きな差がみられる状況となった。観光や家電販売などでは好調な動きが続く一方で、物価高騰や原材料不足への懸念が広がり、消費者の節約志向や企業の慎重な経営姿勢が地域経済全体に影響を及ぼしている。特に中東情勢を背景としたナフサ不足や資材供給への不安が幅広い業種に波及しており、回復基調にある分野と停滞感が強まる分野が混在する結果となった。
小売業では明るい動きもみられる。商店街では販売量の増加が報告され、一部では消費者の購買意欲が改善しているとの声も上がった。家電量販店では暑さの到来と省エネ家電への買換え需要が重なり、エアコン販売が大幅に伸びている。2027年に予定されている省エネ基準改定を前に、15年以上使用したエアコンを買い替える動きが活発化しているほか、省エネ家電購入補助金も販売を後押ししている。高価格帯の商品も順調に販売されており、家電市場は好調を維持している。
観光関連では地域の大型行事が追い風となっている。20年に1度とされる遷宮関連行事の開始によって県外からの来訪者が増加し、観光地や土産物店の集客向上につながっている。観光型ホテルでも宿泊利用が前年を上回り、ゴールデンウィーク期間中の需要が地域経済を支えた。都市型ホテルでも宿泊やレストラン利用は比較的堅調であり、イベント開催による集客効果も確認されている。
一方で、消費行動には慎重さが目立つ。百貨店では高級ブランド品やインバウンド需要が売上を支える一方で、衣料品や日用品の動きは鈍い。株高による資産効果で富裕層の消費は一定程度維持されているものの、一般消費者の節約意識は依然として強い。特売日には売上が伸びる一方で、通常日は来店客が減少する傾向が続いており、価格に対する消費者の感度が高まっていることがうかがえる。
スーパーやコンビニでも同様の傾向がみられる。来客数は一定水準を維持している店舗もあるが、買上点数が伸びず売上増加につながらないケースが増えている。コンビニでは販売価格の上昇によって売上自体は維持されているものの、おにぎりなど値上げ幅が大きい商品の販売数は減少している。その代わりに比較的価格上昇が抑えられた菓子パンやサンドイッチへ需要が移るなど、消費者の節約行動が鮮明になっている。
飲食業界では二極化が進んでいる。イベント時の集客は堅調であるものの、平日の利用は弱く、特に法人利用の減少を指摘する事業者が目立つ。高級レストランでは週末需要や慶事利用は維持されているが、平日夜の利用は伸び悩んでいる。一般飲食店でもゴールデンウィーク後の来客数減少が報告されており、外食に対する支出を抑える動きが広がっている。
住宅関連業界では厳しい声が多く聞かれた。建築資材の高騰や供給不足が続いており、住宅メーカーの成約数は鈍化している。住宅展示場では資材不足による着工遅延が発生しているほか、価格上昇によって住宅購入をためらう消費者も増えている。設計事務所からは新規相談の減少が報告されており、住宅市場全体に停滞感が広がっている。
企業活動においても資材供給問題は深刻である。輸送業では工場稼働の低下を見越した前倒し出荷によって取扱量が増加しているものの、原油価格上昇によるコスト負担が重くなっている。化学工業や製造業では、ナフサ由来の資材や包装材の入手が困難になっており、価格高騰による収益悪化が進んでいる。金属製品製造業や建設関連企業からも資材不足や値上げによる利益圧迫を懸念する声が相次いでいる。
一方で、半導体関連や電池関連産業には明るい材料もある。設備投資の拡大が続いており、中国依存からの脱却を目的とした設備導入計画も進んでいる。AI関連投資も北米や東南アジアを中心に活発であり、一部製造業では将来的な受注拡大への期待が高まっている。こうした成長分野が東海地域の産業基盤を支える存在となっている。
雇用市場に目を向けると、人手不足は依然として大きな課題となっている。新聞社の求人広告担当者によると、大卒新卒採用の難易度が高まるなか、企業は高卒採用や中途採用へと戦略を広げている。全体として人材不足の状況は変わらず、採用競争は継続している。
職業安定所によると、新規求人数は業種によって差があるものの、情報通信業や宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業などで増加がみられた。一方で建設業や卸売・小売業では微減となっている。別の調査では新規求人数が3か月前と比較して8.3%増加したことも報告されており、観光やサービス関連を中心に採用需要は底堅い状況が続いている。
ただし採用環境は決して楽観できる状況ではない。民間職業紹介会社からは企業が厳選採用へシフトしているとの報告があり、採用基準が高まっている。人材派遣会社では求人件数が前年並みを維持する一方で、募集を見合わせる企業も出始めている。中東情勢による先行き不透明感や資材不足が経営判断に影響しており、採用計画を慎重に見直す企業も増加している。
また、自動車関連産業では次世代電気自動車開発の停滞を懸念する声も出ている。部品メーカーを含めて今後の事業見通しが不透明となっており、一部では業務縮小の可能性も指摘されている。東海地域は自動車産業の集積地であるだけに、今後の動向は地域雇用に大きな影響を与える可能性がある。
東海地域の景気は、観光需要や省エネ家電需要、成長産業への投資を背景に一定の底堅さを維持している。しかし、物価高騰や資材不足、中東情勢に伴う供給不安が幅広い業種に影響を与えており、消費者の節約志向も強まっている。雇用市場では人手不足が続きながらも企業の採用姿勢には慎重さが増しており、求人需要と採用難が同時に進行する状況となっている。今後は資材供給の安定化と消費マインドの回復が、地域経済と雇用市場の行方を左右する重要な要素となりそうだ。
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