2026年7月3日
労務・人事ニュース
甲信越の求人動向2026年5月版、有効求人倍率1.16倍と企業の採用抑制が示す転換点
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景気ウォッチャー調査(令和8年5月調査)― 甲信越(現状)―(内閣府)
内閣府が公表した令和8年5月の景気ウォッチャー調査によると、甲信越地域の景況感は観光関連や一部のサービス業で回復の動きがみられる一方、物価上昇や資材価格高騰の影響が広範囲に及んでおり、消費者心理や企業活動には依然として慎重な姿勢が残る結果となった。特に中東情勢を背景とした原油関連製品の価格上昇や供給不安が地域経済に影響を与えており、景気回復への期待と先行き不透明感が入り混じる状況が続いている。
観光分野では明るい材料が目立った。遊園地では春休みやゴールデンウィークの繁忙期に加え、初開催のイベントやプロモーション強化が奏功し、来場者数が大きく増加した。観光型旅館でも5連休となったゴールデンウィーク期間中の宿泊需要が好調で、例年以上の集客を実現した。混雑日には前年を上回る宿泊料金を設定したにもかかわらず満室となり、首都圏からの旅行需要の強さがうかがえる結果となった。
都市型ホテルでも大型イベントやコンサートの開催が追い風となった。特定日には過去最高となる宿泊売上を記録するなど個人需要は堅調だったが、一方で法人利用や宴会需要は弱含みとなっている。企業による経費削減や慎重な支出姿勢が続いていることが背景にあり、個人消費と法人需要の間で温度差がみられる状況となった。
小売業では一部に好調な動きがある。商店街では新入学シーズンに販売した制服や体操服の追加注文が前年を大きく上回り、学生需要が売上を押し上げた。家電量販店では2027年に導入される新たな省エネ基準を前にエアコン需要が拡大している。購入を前倒しする動きが広がっており、販売台数の増加につながっている。また、自動車販売では燃費性能を重視する消費者が増えており、電気自動車や軽自動車の販売が伸びている。
しかしながら、こうした好材料の一方で、消費者の節約意識は依然として強い。スーパーではまとめ買いをする利用者が増え、来店頻度は低下傾向にある。必要な商品をセール日に集中して購入する行動が定着しており、日常的な買物を控える傾向が続いている。食品や生活必需品の値上げが続くなか、購入点数や来店回数の減少を指摘する事業者も多く、家計防衛意識の高まりが鮮明となっている。
実際にスーパーの一部では売上が前年比7%減少し、来客数は16%減少したとの報告もあった。プレミアム付商品券の発行による消費喚起効果が期待されたものの、物価高の影響を完全に補うには至らなかった。コンビニエンスストアでも同様に、消費者の節約志向による来店頻度や購買点数の減少がみられており、売上の伸び悩みにつながっている。
飲食業界でも厳しい状況が続いている。高級レストランでは物価上昇や原油価格高騰の影響により来客数が伸び悩み、旅行代理店からも旅行関連支出を控える動きが報告された。ゴールデンウィーク期間中も宿泊を伴う旅行ではなく日帰り旅行を選択するケースが増えており、消費者が支出を慎重に見極めている様子がうかがえる。
企業活動では業種によって差がみられる。食料品製造業では見積依頼が増加しており、建設業でも受注面に明るい兆しがみられる。一方で、製造業全体では原材料や部品の調達遅延が深刻化している。受注自体は確保できていても、原材料価格の高騰や供給停止によって利益を確保できない企業が増えている。製品を作りたくても必要な部品が届かず、事業運営に支障をきたすケースも発生している。
金融機関の調査でも、製造業では供給網への不安や先行きへの警戒感が広がっていることが報告された。非製造業においても物価高と資材不足による影響が大きく、住宅関連分野では建築資材の供給不安が事業活動を圧迫している。特に中小企業では資材価格の上昇を販売価格へ十分に転嫁できないケースも多く、収益環境は厳しさを増している。
雇用市場については、企業の採用姿勢に変化がみられる。職業安定所によると、令和8年4月の有効求人倍率は1.16倍となり、前年同月を0.04ポイント下回った。有効求人倍率が前年同月を下回るのは24か月連続となっており、雇用市場の減速傾向が続いていることが分かる。
また、民間職業紹介機関からは企業が採用に慎重な姿勢を維持しているとの報告もあった。経営環境の不透明感や収益悪化への懸念から、人材確保よりもコスト管理を優先する企業が増えているとみられる。その一方で、新規求職者数は増加しており、2月との比較では約500人増えている。求職活動を始める人が増える一方で求人の伸びが鈍化していることから、雇用環境は変化の局面を迎えている。
さらに建設資材の高騰による受注減少を背景に、一部の事業所では従業員整理の動きもみられるという。企業の採用担当者にとっては、人材確保だけでなく将来的な人員計画の見直しも重要な課題となりつつある。これまで続いてきた人手不足一辺倒の状況から、業種によっては雇用需給のバランスが変化する可能性もある。
甲信越地域の景気は、観光需要やイベント需要の回復によって一定の活気を取り戻しているものの、物価高や資材不足、原材料価格の高騰といった課題が依然として重くのしかかっている。雇用市場では有効求人倍率1.16倍という水準を維持しながらも、前年割れが24か月連続で続いており、企業の採用姿勢にも慎重さがみられる。今後は物価動向や資材供給の改善状況に加え、求人市場の変化が地域経済の方向性を左右する重要な要素となりそうだ。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ


