2026年7月25日
労務・人事ニュース
令和8年5月の茨城県有効求人倍率1.13倍、新規求人倍率1.91倍が示す採用競争
令和8年5月の茨城県有効求人倍率1.13倍が示す雇用情勢
令和8年6月30日、茨城労働局は令和8年5月分の県内の雇用情勢の概況を公表しました。基調判断では、県内の雇用情勢について、求人が求職を上回って推移しているものの、一段と改善の動きが弱まっており、引き続き物価上昇などが雇用に与える影響を注視していく必要があるとされています。この判断は令和7年4月から14か月連続で同じ内容となっており、茨城県内の採用市場は急激な悪化ではないものの、改善の勢いが長く鈍い状態にあるといえます。令和8年5月の有効求人倍率は季節調整値で1.13倍となり、前月の1.14倍から0.01ポイント低下しました。全国順位は28番目で、全国平均の1.17倍を下回っています。中小企業の採用担当者は、この1.13倍という数字を「求人が求職を上回っているため採用は難しい」と見るだけでなく、「求人が減り、求職者も慎重になっている中で、企業側の採用力がより問われる局面」として受け止める必要があります。
令和8年5月の有効求人数は季節調整値で42,595人となり、前月より0.3%減少しました。2か月ぶりの減少です。一方、有効求職者数は37,573人で前月より0.2%増加し、2か月連続の増加となりました。求人が減り、求職者が増えたことで、有効求人倍率は前月からわずかに低下しました。原数値で見ると、月間有効求人数は40,844人で前年同月比6.1%減少し、月間有効求職者数は40,338人で前年同月比1.2%増加しています。原数値の有効求人倍率は1.01倍で、前年同月の1.09倍から0.08ポイント下がりました。数字上は求人と求職者がほぼ均衡しているように見えますが、採用現場では職種、勤務地、雇用形態、賃金、勤務時間によって応募の集まり方は大きく異なります。採用担当者は、県全体の倍率だけで判断せず、自社が募集する仕事に近い市場を見ることが大切です。
新規求人倍率は季節調整値で1.91倍となり、前月から0.02ポイント低下しました。新規求人倍率は、新たに仕事を探し始めた人に対して、新たに出された求人がどれだけあるかを示すため、直近の採用競争を考えるうえで重要な指標です。1.91倍という水準は、新しく動き出した求職者よりも求人の方が多いことを示していますが、前月から低下している点には注意が必要です。原数値では、新規求人数が13,236人で前年同月比12.3%減少し、17か月連続の減少となりました。新規求職申込件数も7,784件で前年同月比9.4%減少し、2か月連続で減少しています。求人も求職者も前年より減っており、採用市場全体の動きは活発とはいえません。中小企業にとっては、求人掲載を出せば自然に応募が増える状況ではなく、限られた求職者に選ばれる求人情報を作ることが欠かせない局面です。
産業別の新規求人を見ると、全体では前年同月比12.3%減となりましたが、増加した産業もあります。卸売業、小売業は1,301人で前年同月比4.5%増、製造業は1,800人で2.2%増、学術研究、専門・技術サービス業は492人で3.1%増となりました。一方で、サービス業は1,871人で26.8%減、宿泊業、飲食サービス業は491人で38.1%減、生活関連サービス業、娯楽業は497人で34.6%減、教育、学習支援業は178人で25.5%減、建設業は1,012人で14.9%減、運輸業、郵便業は712人で11.7%減、医療、福祉は3,952人で3.8%減となっています。特にサービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業の減少幅が大きく、コスト上昇、人件費負担、需要の変動、採用計画の見直しが求人の出方に影響している可能性があります。
ただし、求人が減っている業種でも、人手不足が解消したとは限りません。医療、福祉は前年より減少しているものの、新規求人数は3,952人と県内で最も大きな規模です。社会保険・社会福祉・介護事業は2,768人、医療業は1,173人となっており、地域の生活を支える人材需要は依然として大きいと考えられます。医療、福祉の採用では、資格や経験の有無だけでなく、勤務体制、夜勤の有無、教育担当者、利用者や患者への対応内容、身体的負担への配慮、職員同士の連携体制を具体的に示すことが重要です。宿泊業、飲食サービス業や生活関連サービス業では、勤務時間、休日、シフトの柔軟性、繁忙期の働き方、未経験者へのサポートが応募判断に影響します。求職者は求人倍率の数字ではなく、自分が安心して働けるかを見ています。
製造業は全体で2.2%増となり、茨城県内では比較的求人が伸びている分野です。内訳を見ると、木材・木製品製造業は78.8%増、プラスチック製品製造業は25.7%増、ゴム製品製造業は58.8%増、鉄鋼業は275.0%増、電子部品・デバイス・電子回路製造業は119.0%増、輸送用機械器具製造業は81.0%増となりました。一方、食料品製造業は13.7%減、化学工業は41.7%減、金属製品製造業は6.9%減、はん用機械器具製造業は8.1%減となっています。同じ製造業でも求人の動きは細かく分かれています。製造職を募集する中小企業は、単に「工場スタッフ」「製造作業」と表記するのではなく、扱う製品、担当工程、機械操作の有無、必要な資格、未経験者への研修、安全対策、交替勤務の有無、残業時間を具体的に示すことが求められます。
正社員有効求人倍率は原数値で0.90倍となり、前年同月の0.96倍から0.06ポイント低下しました。正社員の月間有効求人数は20,654人で前年同月比6.2%減、新規求人数は6,738人で10.0%減となっています。正社員求人の有効求職者数は22,891人で前年同月比0.3%増となっており、正社員では求職者数が求人数を上回る状態です。これだけを見ると、正社員採用はしやすくなったように感じるかもしれません。しかし、求職者は正社員という雇用形態だけで応募を決めるわけではありません。賃金の水準、昇給や賞与、休日、残業、転勤の有無、通勤しやすさ、教育体制、職場の人間関係、将来の役割を総合的に判断します。中小企業が正社員を募集する場合は、雇用の安定に加えて、入社後の働き方と成長の見通しを丁寧に伝えることが大切です。
雇用形態別では、パートタイムを除く常用の有効求人倍率が1.08倍で前年同月より0.07ポイント低下し、常用的パートタイムは0.74倍で前年同月より0.08ポイント低下しました。常用的パートタイムの新規求人数は4,258人で前年同月比15.6%減、新規求職申込件数は3,286件で10.9%減となっています。短時間勤務を希望する人も求人も減っている中で、企業は働き方の設計を見直す必要があります。子育て中の人、介護と両立したい人、シニア層、扶養範囲内で働きたい人に向けて、勤務時間や曜日、急な休みへの対応、業務範囲を明確にすれば、応募につながる可能性があります。人手不足の中でフルタイムだけにこだわると、採用対象を狭めてしまいます。業務を分解し、短時間でも任せられる仕事を設計することは、中小企業にとって現実的な採用改善策です。
事業所規模別では、29人以下の新規求人が7,931人で前年同月比19.8%減となりました。30人から99人規模は3,297人で0.3%減、100人から299人規模は1,287人で10.5%増、300人から499人規模は286人で31.3%減、500人から999人規模は288人で26.9%増、1,000人以上は147人で61.5%増となっています。小規模事業所では求人の減少が目立つ一方、一部の中堅・大規模事業所では求人が増えています。中小企業は条件面で大企業と同じ競争をするのではなく、地域密着、転勤の少なさ、経営者や上司との距離の近さ、幅広い仕事を経験できること、相談のしやすさ、地元で長く働ける安心感を具体的に伝える必要があります。こうした魅力は、求人票に書かなければ求職者には伝わりません。
令和8年5月の茨城県の雇用情勢から、中小企業の採用担当者が取るべき方向性は明確です。有効求人倍率1.13倍は求人が求職を上回る状態を示していますが、新規求人数は17か月連続で前年同月を下回り、正社員有効求人倍率は0.90倍まで低下しています。求職者が増えている一方で、新規求職申込件数は減っており、積極的に転職市場へ出てくる人材は限られています。採用担当者は、まず自社が求める人材像を整理し、必須条件と歓迎条件を分けるべきです。未経験者を育成できる業務、短時間勤務でも任せられる業務、シニア人材が力を発揮できる業務を切り分けることで、応募の入口は広がります。求人票では、仕事内容、給与、休日、残業、教育体制、職場環境、選考の流れを具体的に示し、応募後は迅速に連絡することが重要です。有効求人倍率の動向からも、採用活動においては求人情報の出し方や応募者との接点づくりがより大切になっています。人材募集を検討されている企業の方は、日本全国どこでも対応できる採用サイト(ATS)の取り扱いにも対応している当社までお気軽にご相談ください。
⇒ 詳しくは茨城労働局のWEBサイトへ


