2026年8月6日
労務・人事ニュース
2026年7月21日公表、設備・研究開発・人的資本の3分野で大胆な成長投資を促す新ガイダンスを採用担当者向けに解説
「成長投資ガイダンス」の公表について(経産省)
2026年7月21日、持続的な企業価値の向上に向けて、企業と投資家、政府に期待される対応を整理した「成長投資ガイダンス」が公表されました。設備や研究開発、人材への投資を拡大し、資本を戦略的に配分する考え方を示した実務指針です。
2010年代以降、企業統治の改革を進めるため、企業と投資家の対話に関するガイドラインや実務指針の策定が進められてきました。2014年に公表された企業価値向上に関する報告書も、こうした取組の1つに位置付けられています。
2025年11月21日に閣議決定された「強い経済」の実現に向けた総合経済対策では、企業統治に関する規範の改訂と併せ、成長投資に関する実務指針を策定する方針が明記されていました。
この方針を受けて、有識者による検討が進められ、広く意見を募る手続きを経たうえで内容が取りまとめられました。今回のガイダンスでは、日本企業が抱える構造的な課題と、企業価値向上に必要な対応が整理されています。
課題の1つとして、賃上げを含む成長投資が欧米企業と比べて相対的に低い点が挙げられました。企業が将来の成長に必要な資金をどの分野へ振り向けるかは、収益力や競争力を高めるうえで重要な論点となります。
また、企業の成長段階に応じた投資と株主還元のバランスが十分に取れていないことも、構造的な課題として示されました。投資と還元のどちらか一方に偏らず、事業の状況を踏まえて資本を配分する必要性が指摘されています。
収益性や将来性の面で企業価値を損なっている事業に資本が滞留している点も課題とされました。限られた経営資源を有効に活用するためには、事業ごとの価値を見極め、資本の配分先を見直すことが求められます。
ガイダンスは、価値創造を示すEP、Economic Profitを企業と投資家の共通言語として活用する考え方を掲げました。短期的な指標の改善だけに偏らず、中長期の企業価値向上を重視する姿勢を促しています。
具体的には、資本効率を改善したうえで、資本コストを上回る収益が期待できる投資機会へ資本を戦略的に配分し、投下資本を拡大することが推奨されました。成長の可能性がある分野へ資金を振り向ける考え方です。
賃上げについては、単なる利益の分配ではなく、人材を引き付け、生産性向上のための投資を促す供給力強化策として位置付けられました。労働力の供給制約が強まる社会では、賃上げが成長戦略の起点になるとしています。
企業に対しては、自社のビジネスモデルを踏まえた成長の道筋を構築し、投資家などへ分かりやすく説明することが求められました。商品やサービスの付加価値を高め、収益性の向上につなげることも重要な対応です。
成長投資の対象には、設備投資、研究開発投資、人的資本投資が示されました。企業には、将来の競争力を支える分野へ大胆に資金を投入し、事業の成長段階や業績に応じて株主還元との適切な均衡を図ることが期待されています。
事業構成の見直しでは、その事業の価値を最も高められる所有者の下で運営するという考え方に基づき、事業ポートフォリオの転換を進めるよう促しました。価値を生み出しにくい事業から成長領域へ資本を移す方向です。
投資家に対しては、企業の成長に必要な時間を考慮し、成長段階や事業特性に応じた対応を取ることが求められました。形式的な判断にとどまらず、企業の戦略や投資計画を踏まえた実質的な議決権行使も盛り込まれています。
政府に必要な対応としては、事業再編を円滑に進める環境の整備や、投資家と企業の対話を実質化する取組が挙げられました。諸外国の制度も踏まえ、公平な市場ルールを整える重要性も示されています。
資金供給の面では、社債市場の活性化や、成長資金を供給する主体の多様化が必要とされました。成長分野への投資を促すため、政策の予見可能性を確保し、企業が長期的な判断をしやすい環境を整える考えです。
さらに、重要技術への支援や、新しい事業を生み出す環境の強化も政府の役割として記載されました。企業、投資家、政府がそれぞれの立場で対応し、資本を成長分野へ循環させることを目指す内容となっています。
今回のガイダンスは、短期的な利益や株主還元だけではなく、設備、研究開発、人材への投資を通じて持続的な企業価値を高める方向性を示しました。賃上げを成長戦略の出発点として捉えた点も大きな特徴です。
企業には、成長の道筋を明確にし、どの事業へ、どのような理由で資本を投じるのかを説明する姿勢が求められました。採用や人材育成を含む人的資本投資も、将来の収益力を高める重要な成長投資として扱われています。
2026年7月に公表された今回の実務指針は、投資と還元、事業再編、人材への投資を一体的に捉えたものです。企業価値を持続的に高めるため、資本コストを上回る投資機会へ経営資源を配分する考え方が示されました。
⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ


