2026年7月31日
労務・人事ニュース
令和8年6月東海景気調査、新規求人数4.8%減でも人材確保が続く採用市場の最新動向
景気ウォッチャー調査(令和8年6月調査)― 東海(現状)―(内閣府)
令和8年6月に実施された東海地域の景気ウォッチャー調査では、地域経済は全体として持ち直しの動きが続いているものの、業種や企業規模によって景況感に大きな違いがみられる結果となりました。富裕層による消費や観光需要、半導体関連産業が地域経済を支える一方で、物価高や資材価格の上昇、中東情勢の影響、消費者の節約志向などが幅広い業種に影響を与えており、企業は慎重な経営判断を迫られています。
個人消費では、高価格帯商品を中心に堅調な動きが続いています。百貨店では富裕層の購買意欲が衰えておらず、特選ブランドや高級時計などの販売が底堅く推移しています。また、韓国や東南アジアを中心とした訪日外国人旅行者による消費も売上を支える要因となっています。一方で、衣料品や食料品では節約志向が強まり、中間所得層を中心に買い控えが広がっていることから、同じ小売業でも販売状況には大きな差が生じています。
商店街では来街者数や売上が前年を上回る地域がある一方、新商品の提案や販促活動を実施しても反応が鈍く、消費者が無駄な支出を避ける姿勢を強めているとの声も聞かれます。当地域で20年に一度開催される神事によって観光客が増え、土産物店では旅行需要が活発化するなど地域イベントが消費を押し上げる場面もみられましたが、日常消費では依然として慎重な購買行動が続いています。
スーパーやコンビニでは販売促進策を積極的に実施しているものの、値上げによる客単価の上昇だけでは来客数の減少を補えなくなっています。消費者は特売品や値引き商品を中心に購入する傾向を強め、必要以上の商品を購入しない姿勢が一段と鮮明になりました。米や総菜など生活必需品についても価格への関心が高く、安価な商品への需要が集中しています。コンビニ各社では来客数が前年を下回る店舗が増加し、物価高だけでは売上を維持できない状況が続いています。
乗用車販売では新型車効果や中古車需要が販売を下支えしています。中古車市場では比較的新しい高年式車への需要が高まり、新車価格の上昇を背景に高品質な中古車を選択する消費者が増えています。一方で、中東情勢の影響によるガソリン価格の上昇や部品価格の高騰は販売現場にも影響を与えており、利益確保が難しくなっています。仕入価格の上昇によって値引き販売が難しくなり、販売店では一台当たりの利益を重視した営業へ転換する動きもみられます。
観光・宿泊関連では、業態によって状況が分かれています。観光型ホテルでは宿泊需要が引き続き好調であるとの声がある一方、別のホテルでは前年の約30%程度しか宿泊予約が入っていないという厳しい状況も報告されました。都市型ホテルでは外国人宿泊客が一定数を維持し、宴会需要も安定していますが、高価格帯レストランでは法人利用や個人利用が伸び悩んでいます。旅行会社では燃油サーチャージや国際観光旅客税の引き上げ前に海外旅行予約が増加したものの、物価高や円安が旅行需要全体の重荷となっています。
住宅市場ではインフレや金利上昇を見越した駆け込み需要が一部でみられるものの、建築資材価格の高騰や材料不足は依然として続いています。住宅販売会社では資材価格がさらに上昇する見通しから買い控えが続くと予測する声があり、住宅展示場では建設資材価格の高騰が販売活動へ影響しています。また、新築住宅では工事着手時期が見通せず、見積書作成にも時間を要するケースが増えています。不動産市場では駅近マンションなど人気物件は価格上昇が続く一方、戸建住宅では販売が苦戦するなど市場の二極化も進んでいます。
企業活動では製造業を中心に明るい材料も確認されました。化学工業ではAI関連半導体向け電子材料の需要が引き続き拡大し、価格転嫁も完了したことで受注が堅調に推移しています。一般機械器具製造業でも北米を中心とした半導体設備投資が継続しており、関連企業では繁忙な状況が続いています。また、新規開発案件の引き合いが増えている企業や、物流業界で前年を上回る輸送量を確保する企業もみられました。一方で、鉄鋼や金属製品関連では受注減少が続き、一部企業からはリーマンショック時に近い厳しい状況との声も聞かれています。
建設関連企業では原材料価格やエネルギーコストの上昇が利益を圧迫しています。建材価格や部品価格は依然として高水準で推移し、価格転嫁が十分に進まない企業では利益率が低下しています。物流業界でも燃料費や物価上昇への対応が課題となる一方、荷主企業が物流コストの見直しに応じるケースも徐々に増えています。しかし、中東情勢や円安による先行き不透明感は依然として強く、多くの企業が慎重な経営姿勢を維持しています。
雇用情勢では、採用市場にも変化がみられました。人材派遣会社では求人数は前年と比較して大きな変化はないものの、3か月前と比較すると減少しており、全体では横ばいとの見方が示されています。また、転職を急がず慎重に様子を見る求職者が増えていることから、採用決定まで時間を要するケースが目立っています。新聞社の求人広告担当者からは求人数に大きな変化はない一方、求職者数はやや増加傾向との見方が示され、企業間で優秀な人材の確保競争が続いています。
職業安定機関では、新規求人数が3か月前と比較して全体で4.8%減少したものの、製造業や不動産業、生活関連サービス業では求人が増加しています。一方で、卸売・小売業や金融・保険業、学術研究・専門技術サービス業では求人が減少しました。職業別の求人倍率には大きな変化がないものの、人手不足分野では求人と求職者のミスマッチが依然として続いています。今回の調査では有効求人倍率そのものの数値は示されていませんが、企業が必要とする人材と求職者の希望条件との間にギャップが残っていることがうかがえます。
民間職業紹介会社では新規求人案件そのものは数多く発生しているものの、企業側が厳選採用へ移行していることから採用決定数は大きく増えていません。また、自動車部品メーカーでは電気自動車開発計画の見直しに伴い、大規模な人員削減は避けられているものの、新たな増員計画も少なくなっています。さらに、職業安定機関では近年みられなかった規模の企業倒産が複数発生し、金利上昇による資金繰り悪化が企業経営へ影響し始めているとの指摘もありました。採用活動では人材確保と経営の安定を両立させる戦略が、これまで以上に重要になっています。
今回の東海地域の調査では、AI関連や半導体産業、観光需要などが景気を支える一方で、物価高や資材価格の高騰、世界情勢の不透明感が企業経営や消費行動へ幅広く影響していることが明らかになりました。採用市場では求人需要が一定水準を維持しているものの、求職者の慎重姿勢や人材不足分野でのミスマッチが続いています。企業にとっては、待遇改善や働きやすい環境づくり、人材育成を含めた採用戦略の強化が、今後の事業成長を左右する重要なテーマになりそうです。
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