2025年3月12日
労務・人事ニュース
医療・福祉業の平均月給は310,560円!前年比2.9%増で安定した給与水準を維持(毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 )
毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報 第1表 月間現金給与額(厚労省)医療 福祉
令和6年の毎月勤労統計調査によると、医療・福祉業界の平均月間現金給与額は310,560円であり、前年比2.9%の増加が確認されている。この増加率は全産業平均の2.8%をやや上回る水準であり、医療・福祉業界が安定した賃金上昇を続けていることを示している。特に、基本給の増加が給与全体の伸びを支えており、ボーナスの大幅な増加が特徴的な傾向として見られる。
給与の内訳を詳しく見ると、基本給に該当する「きまって支給される給与」は262,090円で、前年比1.9%の増加が見られる。この増加率は他業界と比較するとやや低めではあるものの、医療・福祉業界においては、慢性的な人手不足に対応するため、基本給の引き上げが続いていることを示唆している。特に、介護分野では政府による賃金補助政策の影響もあり、基本給の改善が進められている。
また、時間外手当を含む所定外給与は14,517円で、前年比2.5%の増加となった。このデータから、医療・福祉業界では時間外労働が依然として発生しやすい状況が続いていることが分かる。特に、医療機関では夜勤や急患対応により長時間勤務が求められるケースが多く、介護施設などでも夜間対応やシフト勤務が影響していると考えられる。一方で、政府の「働き方改革」や労働基準法の厳格化により、時間外労働の適正化が進められており、過度な長時間労働の抑制が期待される。
一方、特別に支払われた給与、いわゆるボーナスに該当する部分は48,470円で、前年比9.5%の増加が記録されている。この増加率は他業界と比較しても高く、医療・福祉業界がボーナス支給を通じて従業員の待遇改善を進めていることを示している。特に、医療機関では新型コロナウイルスの対応を含めた業務負担が増加したこともあり、成果報酬型の支給を増やす動きが見られる。また、介護分野では国の処遇改善加算の影響を受けて、賞与額を増額する施設も増えている。
他業界と比較すると、医療・福祉業界の給与水準は中程度の水準に位置している。例えば、鉱業・採石業(411,892円)、製造業(412,916円)、不動産・物品賃貸業(420,219円)と比較すると、医療・福祉業界の310,560円はやや低めの水準であるが、飲食サービス業等(140,437円)と比べると高く、業界全体の給与水準が安定していることが分かる。特に、ボーナスの増加率が高い点は、医療・福祉業界の待遇改善が進んでいることを示しており、今後の賃金改善が期待される。
採用担当者にとって重要なのは、この給与水準が人材確保にどのような影響を与えるかである。医療・福祉業界は、慢性的な人手不足が続いており、特に看護師・介護士・医療技術者の確保が大きな課題となっている。そのため、企業は給与面での競争力を高めることに加え、福利厚生の充実や労働環境の改善を進めることが求められる。特に、労働時間の短縮や休日の確保、キャリアアップ制度の導入などが、人材確保において重要なポイントとなる。
また、今後の課題として、労働時間の適正化とワークライフバランスの向上が挙げられる。医療・福祉業界は、患者・利用者の対応が必要不可欠な業種であるため、突発的な業務負担が発生しやすく、長時間労働が常態化している。しかし、近年では政府の「働き方改革」や労働基準の厳格化により、労働時間の短縮が求められる中、給与総額の維持が大きな課題となる。採用活動においては、給与の高さだけでなく、労働時間の適正化や職場環境の改善を打ち出すことが、求職者にとって魅力的な要素となる。
今後の展望として、医療・福祉業界は高齢化の進展により、今後も成長が期待される業界である。特に、介護・在宅医療の分野では、今後ますます人材需要が高まると見込まれており、人材確保が重要な課題となる。一方で、給与水準の向上は緩やかであり、今後も待遇改善が求められる業界であることに変わりはないため、企業は給与面だけでなく、働きやすい環境づくりを進めることが重要となる。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ