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2025年6月27日

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病院の1日平均在院患者数が115万人超に到達、企業が考えるべき長期入院者対応策とは

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病院報告(令和7年3月分概数)(厚労省)

令和7年3月に公表された病院報告の概数値によれば、全国の医療機関が抱える患者の動向や病床利用の実態が、より明確に示される結果となった。特に、病院全体での1日平均在院患者数は1,153,739人に達し、前月の1,170,408人から16,669人の減少が見られた一方で、診療所ではわずかに13人の減少と、比較的安定した外来利用が続いている。外来患者数に関しては、病院全体で254,117人と、こちらも前月比で1,236人の減少となっているが、季節的要因や感染症の流行状況、地域差を加味した解釈が求められる。

病床の稼働状況を示す月末病床利用率においては、病院全体で76.1%と、前月の78.6%から2.5ポイントの低下が確認されている。この数値は一見すると大きな変化に見えないものの、病床の管理や人員配置に直接的な影響を及ぼすため、医療機関にとっては重要な運営指標である。特に療養病床の利用率が72.3%に落ち込んでおり、前月から3.8ポイントの大幅な減少があった点は注視すべきであり、高齢者施設との連携や在宅医療の促進が背景にある可能性も否定できない。

また、病床種別に見ると、精神病床では85.3%と依然として高い利用率を維持しており、精神科医療の需要が安定している現状を示している。一方で感染症病床については11.4%と依然として低水準であり、新型コロナウイルスの流行が落ち着いたことで一時的な用途を終えた病床の再編が進行していることをうかがわせる。結核病床も24.7%の利用率と、医療資源としての効率的な活用が求められる状況が続いている。

さらに、平均在院日数の推移にも注目が必要である。病院全体の平均在院日数は25.8日であり、前月から0.1日増加している。この中でも療養病床における平均在院日数が247.6日と非常に長く、慢性的な入院需要の高さを裏付ける結果となっている。特に精神病床においては113.1日という平均在院日数が示されており、退院支援体制や地域生活への移行支援の在り方が問われる現状が続いている。

こうした医療データは、単なる統計にとどまらず、地域医療のあり方や福祉制度全体の再設計に影響を及ぼすものであり、特に企業の人事部門や健康経営を推進する立場から見ても重要な指標である。たとえば、企業で働く従業員が療養病床に長期間入院する可能性があることを想定すれば、職場復帰支援や病後の就労配慮が必要になる。また、精神科通院や長期療養が必要なケースについては、柔軟な勤務体制やテレワークの導入が、離職防止策として機能することも期待される。

さらに、感染症病床の稼働率の低下は、パンデミック対応のフェーズが変化していることを意味しており、従業員の健康管理体制も従来の感染予防重視から、慢性疾患管理やメンタルヘルス対策に重点を移すべきタイミングであることが読み取れる。実際に、結核病床や精神病床の平均在院日数は依然として高く、患者本人のみならずその家族や扶養者に対する支援制度の拡充も、企業にとって検討課題の一つとなる。

また、1日あたりの外来患者数が全国でおよそ25万人に及んでいるという事実は、医療機関の外来キャパシティが限界に近づいている可能性を示しており、定期的な通院や治療を必要とする従業員に対する通院休暇制度の整備も、企業の健康経営戦略として現実味を帯びている。とりわけ、慢性疾患を抱える中高年層の増加が予測される中で、勤務と医療の両立を可能とする制度設計は、労働生産性の維持に直結する重要な施策となる。

このような現状を受けて、企業が注目すべきは、病院の稼働状況や在院日数といったマクロデータから導き出される従業員の健康課題である。医療制度と雇用制度の相互作用を正確に理解し、将来的なリスクに備える姿勢こそが、持続可能な人材活用を支える土台となる。業種や規模を問わず、従業員一人ひとりの健康状態や医療アクセスに応じた対応が可能な職場づくりが求められている。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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