2026年6月1日
労務・人事ニュース
2026年4月先行き 中国地方で7月以降10%から15%値上げ要請が広がるなか有効求人倍率時代に採用担当者が見直す求人戦略とは
景気ウォッチャー調査(令和8年4月調査)― 中国(先行き)―(内閣府)
2026年4月に公表された中国地域の景気先行き調査では、広島県、岡山県、山口県、島根県、鳥取県を中心とした地域経済において、猛暑需要や省エネ家電需要、新型車投入、地域商品券による消費喚起策など、個人消費を下支えする材料が確認される一方で、中東情勢の長期化による原油価格の上昇、包装資材や建築資材の調達不安、物流コストの増加、生活必需品の継続的な値上げなど、企業経営と家計の双方に大きな影響を与える不安要素も広がっています。
中国地域は自動車関連産業、製造業、物流、観光、小売、建設業まで産業の裾野が広く、景気の変化が採用市場や有効求人倍率の動きにも反映されやすい地域です。人手不足が続くなかでも、原材料価格の上昇や世界経済の不透明感が企業の採用判断に影響を与え始めており、採用担当者にとっては売上だけでなく、今後の求人数や応募数の変化まで見据えた判断が求められる状況になっています。
個人消費の分野では、夏に向けた前向きな動きがみられています。コンビニでは今年も猛暑になるとの予報を受け、気温が上がるほど販売数と来客数の増加が期待されています。家電量販店でも、省エネ基準改正を背景にエアコン販売が大きく伸びる見通しとなっており、夏商戦をけん引する中心商材になるとの見方が示されています。エアコン需要は夏まで継続する見込みで、地域消費の押し上げ要因として注目されています。こうした気候変化に伴う需要は一時的なものではなく、店舗運営や人員配置にも影響を与えるため、流通業界では短期採用や繁忙期アルバイト募集を強化する動きにもつながる可能性があります。
自動車販売の現場でも一定の期待感があります。乗用車販売店では今後も新型車発売が続く予定となっており、販売量の増加が見込まれています。さらに4月以降には自動車取得時の環境性能割が廃止され、5月からは重量税の変更も予定されているため、制度変更による需要喚起も期待されています。ただし、その一方でガソリン価格の高騰やオイル不足への懸念も強く、消費者の購買意欲に影響を与える可能性があります。
高額商品の購入には慎重な姿勢が続いており、販売現場では来店数と成約率の維持が課題となっています。自動車関連産業の集積が進む中国地域においては、販売動向が部品メーカーや整備業界の採用にも波及しやすく、求人市場への影響も無視できません。
観光と地域消費では、地域振興策が一定の追い風になっています。和菓子店ではゴールデンウィークの来客数が前年を上回る見込みとなっており、土産物店では施設のリニューアル計画やバイパスの部分開通によって地域住民や観光客の関心が高まっています。
また、一部自治体では生活支援商品券やプレミアム付商品券の配布・販売が予定されており、地域商店や飲食店では売上増加への期待が広がっています。こうした行政支援策は単なる消費刺激策にとどまらず、地域雇用の維持や短期求人の増加にもつながる可能性があります。地方経済において行政施策が人材需要を支える役割はますます重要になっています。
一方で小売業全体では、節約志向の強まりも鮮明になっています。商店街では必要以上に商品を購入しない傾向が強く、販促キャンペーンへの反応も鈍くなっています。百貨店では高価格帯商品の購入は一定数維持されているものの、入店客数は減少傾向にあり、外商売上との二極化が進んでいます。スーパーでも割引企画を打ち出さなければ集客が難しい状況が続いており、商品の値上げが続くなかで生活者の購買行動はより慎重になっています。物価上昇と収入増加のバランス次第では景気が下支えされる可能性もありますが、現場では厳しい見方が根強く残っています。
食品関連では、より深刻なコスト上昇が経営を圧迫しています。スーパーでは従来5%程度だった値上げ要請が、7月以降は10%から15%へ拡大する見込みとなっており、一部の原材料では30%から35%の値上げ要請も発生しています。
さらに納期が確定しない商品も増えており、店舗運営の不安定さが増しています。商品の単価は上がっているものの、買上点数は減少しており、結果として売上減少につながるケースも出始めています。食品小売は地域雇用の受け皿でもあるため、利益率悪化が長期化すればパート採用やアルバイト募集に影響が及ぶ可能性があります。
観光業では、インバウンド需要の先行きに慎重な見方が広がっています。観光型ホテルでは販売数が伸びても客室単価が低いことが課題となっており、都市型ホテルではイベント不足により例年並みの動きを予測しています。さらに燃料費や原材料価格の上昇が経費を圧迫しており、航空会社の燃料費上昇による運賃値上げが海外旅行需要や訪日観光客数に影響する可能性も指摘されています。
ゴルフ場ではゴールデンウィーク以降の予約数が増えず、インバウンド予約は前年の7割程度まで落ち込んでいます。観光関連産業は地域雇用を支える重要な存在であり、宿泊稼働率の低下がアルバイトや季節雇用に影響することも想定されます。
建設と住宅関連では、資材不足とコスト高騰が経営判断を難しくしています。設計事務所では建築材料の供給停滞がどこまで続くのか見通せず、建築費上昇や出荷調整によって工期長期化が予想されています。住宅販売会社では納期遅延が新規事業そのものの成立を難しくしているとの声もあり、設備メーカーの商品製造にも不安定な動きが出ています。建設業では資機材価格と労務費の上昇によって建設計画の保留や見直しが始まっており、今後の着工件数にも影響する可能性があります。建設業界は有効求人倍率が高水準となりやすい分野ですが、景況感悪化が長引けば採用計画そのものが慎重になることも考えられます。
製造業では業種によって景況感が分かれています。輸送業では受注増加の声がある一方で、化学工業や鉄鋼業では中東情勢の長期化による物流コスト増加や原材料価格高騰が利益を圧迫しています。金属製品製造業では5月から受注増加が見込まれるものの、加工に必要な切削油の安定供給に懸念が出ており、材料が確保できなければ仕事があっても生産できない状況になる可能性があります。食料品製造業では秋口まで資金繰りへの影響を懸念する声も出ており、地域製造業全体に慎重な見方が広がっています。
雇用市場では、人材確保の難しさと採用方針の変化が同時に進んでいます。民間職業紹介機関では採用競争力を高めるため、年間休日を増やす企業が増えており、所定労働時間を維持しながら休日数を増やす工夫も広がっています。
年収相場を確認しながら採用条件を見直す企業も増加しています。一方で、人材派遣会社では売手市場が継続しているものの、登録者確保には苦戦が続いています。求人検索エンジンでは応募数が毎月減少傾向にあり、掲載ポリシー変更も企業採用に影響を与えています。短期大学では求人数そのものは増える見込みとされる一方で、希望職種とのミスマッチも課題になっています。
さらに新卒採用市場では、大きな転換点を迎えています。求人情報誌製作会社では、生成AIの普及によって若手が担ってきた定型業務の自動化が進み、ジュニア層の雇用機会が厳しくなるとの見方が示されています。2027年度からは大手企業を中心に新卒採用人数を減らす傾向も確認されており、その一方で中途採用や専門職採用は微増傾向にあります。
職業安定所では新規求職者数が微増する一方で、新規求人数は減少しているとの声もあり、今後数か月のうちに大手企業の人員整理が控えているとの見通しも示されています。中国地域の雇用環境は、売手市場が続きながらも構造変化が進む複雑な局面に入っています。
企業が今後の採用競争を勝ち抜くためには、単に求人を掲載するだけでは十分とはいえません。初任給、昇給率、年間休日、平均残業時間、住宅手当、資格取得支援、離職率、育児制度、管理職登用率、中途採用比率など、求職者が将来を具体的に想像できる数字を明示しながら、自社で働く価値を伝える採用設計が必要です。
有効求人倍率が高い地域ほど、求人数が増えても応募数が比例して増えるわけではありません。2026年春の中国地域では、猛暑需要と物価高、人材不足と採用慎重化、設備投資と資材不足が同時進行しています。採用戦略そのものが企業の成長力を左右する重要な経営テーマになっていることは間違いありません。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ


